平成17年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅱ 問Ⅱ設問4解答と解説

目次

解答

(1)X社に渡すべき情報 : 機器管理台帳
必要な改善策 : 機器の新設や移動などの際は台帳を更新してX社に通知すること
(2)起動時の特定のメッセージの有無
(3)誰もサーバにログインしておらずファイル転送がされていないこと
(4) 1 接続相手先電話番号の変更
2 受発注ファイルの転送テスト

解説

(1)
ヘルプデスク業務をアウトソーシングするにあたり、X社に渡すべき情報を本文中の字句を用いて答えよという問題です。本文中の字句を用いるということなので、まずはアウトソース前のヘルプデスク業務がS社によってどういった形で行われているかが記載されている箇所を本文から探してみましょう。
そういったユーザ対応業務はp13の〔情報管理部の業務の運用状況〕に以下のように記載されています。

業務システム及びPCの利用における問い合わせへの対応は、原則として電話及びメールで行っている。各PCの利用者、設置場所、ハードウェア緒元及び搭載ソフトウェアは、機器管理台帳で把握している。機器管理台帳は、年1回、内部監査のときに更新される。事実と違う場合、情報管理部員が現場に出向くか、多少PCに詳しい社員の応援を依頼する。

「ヘルプデスク」という言葉は使われていないため、見つけるのに苦労するかもしれません。ヘルプデスクとは、企業内のユーザからの苦情受付窓口のようなものです。そのため、「業務システム及びPCの利用における問い合わせへの対応」という上記の記載がヘルプデスク業務に相当します。

よってX社に最低限渡すべき情報は「機器管理台帳」であるとすぐ分かります。

ただし、アウトソース前のS社の運用では機器管理台帳は1年に1回しか更新されません。事実と台帳の内容が相違していれば、当然ヘルプデスクが正しい対応ができない場合があります。よってS社は機器管理台帳が事実と相違しないよう、更新のタイミングを改善すべきと考えられます。回答としては

機器の新設や移動などの際は台帳を更新してX社に通知すること

となります。

(2)
【a】は日々のオペレーション業務に関するアウトソースです。ここでもまずはアウトソース前のS社のオペレーション内容を確認してみましょう。本文p13に次のように記載されています。

業務システムは、営業日の8時から20時までのサービスを提供している。サービス終了後、バックアップデータの取得を行い、バックアップが終了した時点で各サーバの稼動を停止し、翌営業日の7時半に起動している。

ここでは業務システムは7時半に起動していることは分かりますが、起動時の確認項目までは記載されていません。一方p17で、障害事例を踏まえて追加した確認項目が記載されています。

これらについては、既存の監視ツールの機能拡張版を導入して可能となった。ただし、ログ監視は、エラーメッセージだけでなく、起動時の特定のメッセージの有無についても確認する必要があり、情報管理部員が手順書を作成して手動で確認している。

ここより、サーバ起動時に「起動時の特定メッセージの有無」については情報管理部員が手動で実施しているということが分かります。これをX社にアウトソースする内容として加えなければなりません。

よって【a】には

「起動時の特定のメッセージの有無」

が当てはまります。

(3)
業務システムのサービス終了を判断するための条件についての問題です。この問題も、回答するためには本文をよく読んでアウトソース前のS社の業務内容を正確に把握する必要があるでしょう。

業務システムについてのデータのやり取りはp13に次のように記載されています。

データベースサーバ、アプリケーションサーバ及び受発注サーバは、業務システムのサーバである。販売管理に必要なデータは、アプリケーションサーバで処理され、受発注サーバによって受発注ファイルとして取引先との間で転送される。取引先は20社あり、接続回線はISDNを用いている。接続には、接続先からの発信とS社からの発信がある。

これだけの情報から業務システムの終了の条件を正確に回答することは難しいですが、誰も業務システムを使用していないことが確認できれば、サービスの終了と判断できるのではないかと思います。また、外部から受発注ファイルが転送されてくることも考え、ファイル転送中でないことも確認する必要があるでしょう。簡単にまとめると次の2点です。

  • サーバにログインしているクライアントがいないこと
  • ISDN回線がアイドル状態であること(受発注ファイルが転送されていないこと)

よって回答としては

誰もサーバにログインしておらずファイル転送がされていないこと

となります。

(4)
アウトソースするに当たり、S社のネットワーク構成も変更になります。それに伴い、取引先に依頼しておくべき内容を答える問題です。これは本文をしっかり読めば答えるのは難しくないでしょう。S社と取引先は図1の通り、ISDNを使って接続しています。ISDNの利用の仕方についてはp13に次の通り記載されています。

取引先は20社あり、接続回線にはISDNを用いている。接続には、取引先からの発信とS社からの発信とがある。その際、ISDNの発信者番号通知機能を利用して、誤接続を防止している。

また、X社への業務アウトソース後の新ネットワーク構成では図4のようにISDNの引き込み箇所が本社からデータセンタに変更になっています。それに伴い、電話番号も変更になります。これはp19にある、K君からZ部長への報告にも含まれています。

  • 受発注サーバの移設によって、利用しているISDNの電話番号が変更になる。

以上を踏まえればネットワーク構成変更が取引先に与える影響がわかります。具体的には次の2点です。

取引先が発信し、S社に着信させる場合について
取引先が発信する電話番号を、新しい番号へ変更する必要があります。

S社が発信し、取引先に着信する場合についてISDN利用の仕方を見て分かるように、受信側では発信者番号を見て接続を制限しています。よって新しい電話番号からの接続を、取引先で新規に登録してもらう必要があるでしょう。

また、一般的に言えることとして、構成変更後に忘れてはならないのが確認テストです。機器の設定変更が間違いなく実施されているか、実際にテストする必要があります。今回は受発注ファイルの転送においては取引先の協力がないとテストができないため、依頼して実施することになるでしょう。以上を回答としてまとめると

  • 接続相手先電話番号の変更
  • 受発注ファイルの転送テスト

となります。

【参考URL】