日経コミュニケーション 2004.6.28 『インターネット”崩壊”の三つの兆候 P68~P78』 by Gene

いきなり、

「インターネット崩壊」

という、ショッキングなタイトルです。

今年の初めぐらいでしたね、IIJの鈴木社長を中心とする勉強会で、インターネットが早ければ5年後にも崩壊するかもしれないという意見が出てきたのは。新聞や雑誌にも一部出ていたので、おぼえていらっしゃる方もいるでしょう。

このインターネット崩壊説を受けて、総務省が「次世代IPインフラ研究会」を発足させています。

今回の日経コミュニケーションの記事では、インターネット崩壊を招きかねない3つの兆候を明らかにしています。

インターネット崩壊の3つの兆候は次のとおりです。

1.トラフィックを処理する機器の性能の限界
2.インターネットのバックボーンを構成する光ファイバの総量不足
3.サーバーなどが東京に一極集中するネットワーク構成

まず、1点目の機器の性能について、次世代IPインフラ研究会のアンケートで、

「ボトルネックになる可能性が最も高いのはルーターやスイッチなどのネットワーク機器」

という結果が出ています。
インターネットの爆発的な普及に伴って、バックボーンを流れるトラフィックは、10年前に比べると1000倍、ここ数年では年毎に倍、倍のペースで伸びています。2010年には、IX(JPNAP)で約40Tbps、一般のプロバイダでも数Tbpsのトラフィックが発生すると予測されているそうです。

では、それを処理するルータやスイッチでは、インタフェースカードは40Gbpsまでは高速化できる見通しが立っています。ですが、それ以上は標準化の動きが見えていないので、難しいでしょう。既存の電気的な処理ではだいたい40Gbpsあたりが限界といわれています。かといって、いきなり光ルータや光スイッチを導入するわけには行かないでしょう。信頼性が重要なインターネットのバックボーンで利用する機器として、光スイッチや光ルータの実用化はまだまだ先でしょう。
1枚のインタフェースカードでサポートできる帯域が頭打ちになるなら、あとはインタフェースカードをたくさん搭載する方法しかありません。その場合、機器内部のスイッチングファブリックの容量(記事では、交換容量と表記)も巨大なものになります。
現在のスイッチングファブリック容量は、数百Gbpクラスです。数十Tbpsのトラフィックをさばくには、100台以上ものルーターを並べなくてはいけなくなります。

というのは、主に通信事業者側の懸念で、機器ベンダーのほうでは、だいぶ楽観的なようです。つい先日、CiscoがGSR以来7年ぶりのハイエンドルータ「CRS-1」を発表しました。CRS-1は、最大92Tbpsで40Gbpsのインタフェースを1000個以上搭載できる仕様です。

Cisco CRS-1
Cisco Carrier Routing System CRS-1発表

他にもジュニパーやベンチャーのキアロネットワークスも数十~100Tbps級のルータを開発中です。
ハイエンドルータの導入は、テストを繰り返す必要があるので、かなりの時間がかかりますが、機器の性能については、個人的には特に問題はないと思っています。

2点目について、次世代IPインフラ研究会では「総量は十分」としています。ただ、利用したい場所に光ファイバがないとか、光ファイバの品質には問題が残っているみたいです。光ファイバを接続する方法を融着といいますが、融着の良し悪しで性能が大きく変わってしまうのは困りますね。しかも、借りて使ってみなければ光ファイバの性能がわからないというのは大きな問題です。品質管理の方策を考えていく必要がありますね。

3点目の東京一極集中は、昔から言われていることですね。データセンターやIXはほとんどが東京中心です。ユーザとしては、他との接続が多いデータセンターやIXを利用するほうがメリットが大きいので、どんどんどんどん東京への一極集中が進んでいってしまいました。

結果として、同じ地方同士の通信でもわざわざ東京を経由するという非効率なトラフィックの流れが発生しています。これを解決するために、東京一極集中ではなく、広域IXによるダイレクトな通信です。
記事の中で、ソフトバンクグループの「BBIX」が紹介されていました。

ちょっとWebサイトを見てみると、面白いサービス内容ですね。BBIXを利用すれば、Yahoo! BBと無条件にダイレクトにピアをはって通信できるようになるそうです。そうすると、無駄に東京を経由するトラフィックはずいぶんと少なくなりますね。
また、以前にもご紹介したことがありますが、地方自治体レベルで地域IXを構築し、東京への一極集中を回避しようとする動きはあります。

日経コミュニケーション 2003.3.17 『チャレンジ e-Japan 先進自治体を追う P186』

古くからのプロバイダは分散が難しい面があるようですが、東京の一極集中もなんとか徐々に解消されていきそうです。

と、以上、日経コミュニケーションが挙げるインターネット崩壊の3つの兆候です。じゃ、実際にインターネットが崩壊するか?というと、個人的な意見ですが、

「大丈夫でしょ」

という感じです。
(※インターネットバックボーンを構築されている方、応援しています!!)

ここで挙げているような機器の性能や光ファイバ、東京の一極集中よりも、ウィルスやスパム対策をきちんと考えていくほうが重要だと思います。

あと、トラフィックを増やしている諸悪の根源みたいな感じで言われているP2Pソフトですが、P75の江崎教授のコラムと同意見ですね。うまく仕組みを作れば、トラフィックの分散を簡単に行うことができるようになるでしょう。

日経コミュニケーションの詳細、購読申し込みはこちら↓

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA