日経コミュニケーション 2007.2.15『「IP同時再送信」の真のインパクト』 by Gene

新しいCCNP BSCI用にマルチキャストルーティングの解説を書いているところ
に、日経コミュニケーションにIP同時再送信の特集が載っていたので、興味深
く読みました。IP同時再送信はIPマルチキャストによって実現されるからです。
特集は、IP同時再送信をめぐるサービス提供事業者のせめぎあいの観点が強く
出ているような気がしましたね。

IP同時再送信は、NGN(Next Generation Network)のキラーアプリケーションと
して注目されています。ハイビジョン品質のテレビ番組をIP網を使って伝送す
るのがIP同時再送信です。
これまでは、通常のテレビ放送と通信では著作権処理が異なっていて、IP網で
のテレビ番組の配信は難しかったようです。しかし、改正著作権法によって、
IPマルチキャストのテレビ番組の配信に限り、通常のテレビ放送と同等になっ
たようです。NGN上でのIP同時再送信のサービス開始に向けてのお膳立てが整
ってきているわけですね。

家庭の中で、最も大きい画面はほとんどの場合、リビングのテレビ画面でしょ
う。IP同時再送信のサービス開始に伴って、リビングのテレビ画面をめぐる、
さまざまな立場のサービス提供者の競争が始まりそうです。まず、IP同時送信
のサービスを提供するNTTなどの通信事業者です。そして、松下やSONYなどの
家電メーカとテレビ局の三者です。この三者の思惑が記事にもまとまっていま
す。
通信事業者にとっては、単なるインフラの提供だけで終わってしまうと、ジリ
賓になるのでNGN上でのいろんなサービスを提供して、収益を上げたいと考え
ています。そのための切り札としてIP同時再送信を考えています。
家電メーカも単にテレビを作って販売するだけでは、コスト下落の圧力の中、
収益を確保するのが難しいわけですね。なんとか、製造・販売しているテレビ
でいろんなサービスを提供して収益のチャンスを増やしたいと考えているでし
ょう。IP同時再送信ではなく、独自のサービス提供を狙っています。先日、松
下、ソニー、シャープなど手家電メーカが協力して立ち上げた「アクトビラ」
です。
テレビ局としては、最強のマスメディアのテレビ放送がIPに置き換えられてし
まうという不安があります。IP同時再送信でのCMについて、よく知らないので
すが、テレビ放送がIPに置き換えられてしまうと、テレビ局の収益源の広告収
入の構造が変わってしまうような気がします。

テレビ画面をめぐる、いろんな立場の思惑を抱えながら、IP同時再送信は総務
省の後押しの元、推し進められていくようですね。

IP同時再送信によって、今のテレビ広告が大きく変わると思います。特集には、
広告のビジネスモデルについては触れていないんですが、テレビ放送と違って
IPを利用することで、視聴者の属性にしたがった広告配信や広告の効果をより
簡単に計測できるようになっていくと思います。
IP同時再送信では「匿名性の確保」が求められるようですが、この制約がなく
なれば、より効果的な広告のビジネスモデルが考えられるようになるでしょう。
広告ビジネスは、今年にはインターネット広告が雑誌広告を超えそうだという
ことです。IP同時再送信のサービスによっても、広告ビジネスは大きく変わっ
ていくんじゃないかなぁと思います。

最近、50インチぐらいのフルHDの液晶かプラズマ欲しいなぁと思っていて、夏
ぐらいに買おうかと思っていました。でも、IP同時再送信や家電メーカのポー
タルサービスの動きがまだあんまり見えないので、もうちょっと待ったほうが
いいのかなぁ・・・どうなんでしょ?

技術的な解説はほとんどなかったものの、この特集はNGNのキラーアプリケー
ションであるIP同時再送信について、興味深く読むことができました。みなさ
んもぜひ読んでみてくださいね。

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