無線LAN 無線LANのセキュリティ その1

セキュリティの基本

ネットワーク上のデータ転送におけるセキュリティの基本的な考え方は、次の
3つです。

  • データの機密性
  • データの整合性
  • データの可用性

データの機密性は、正規のユーザのみがネットワーク上で転送されるデータを
見られるようにして、権限のないユーザがデータを見られないようにすること
です。
そして、データの整合性とは、送信元ホストが送信したデータが途中で改ざん
されることなく送信先に転送されるようにすることです。
また、データの可用性とは、いつでも利用したいときにネットワーク上のデー
タ転送ができるようにすることです。

データの機密性に対する脅威はデータの盗聴です。不正なユーザがネットワー
ク上を転送されているデータを途中で盗聴すると、そのデータの中身が知られ
てしまうことになります。有線LANでは、データはLANケーブル上を流れていく
ので、盗聴するためには物理的にケーブルに特殊な機器を備え付けるなどが必
要です。しかし、無線LANでは、データは電波に載せて転送されていきます。
電波は空気中を拡散して伝わっていくので、データの盗聴が非常に容易です。
盗聴を防止するためには、

  • ユーザ認証
  • データの暗号化

が効果的です。
アクセスポイントでのユーザ認証を行い、正規のユーザのみがアクセスポイン
トにアソシエーションできるようにすることで、盗聴の危険性を減らすことが
できます。ただし、アソシエーションしていなくても、無線LANの電波を傍受
すれば、データの盗聴が可能です。そのため、アクセスポイントのユーザ認証
だけでなくデータの暗号化も行い、電波を傍受されてもデータの中身がわから
ないようにすることも重要です。
データの整合性に対する脅威はデータの改ざんです。送信元から送信したデー
タを途中で改ざんされてしまうと、そのデータを利用するシステムの整合性が
取れなくなるなどのさまざまな問題が発生します。
データを改ざんされないようにするためには、

  • データの暗号化
  • パケット認証

が有効です。
暗号化すれば、データの中身を勝手に書き換えられる危険性が少なくなります。
パケット認証とは、パケットが改ざんされていないかどうかをチェックする仕
組みです。
可用性に対する脅威は、DoS(Denial of Service)攻撃です。DoS攻撃とは、大
量のデータを送信することでネットワークを利用できないようにする攻撃です。
DoS攻撃に対する対策としてIDS/IPSの導入があります。

無線LANで考えるセキュリティ対策で重要なものはデータの機密性とデータの
整合性です。つまり、ユーザ認証とデータの暗号化が重要です。ユーザ認証と
データの暗号化について、無線LANで利用できるセキュリティ機能には、次の
ようなものがあります。

【ユーザ認証】

  • SSIDの隠蔽
  • MACアドレスによるフィルタリング
  • WPA
  • IEEE802.11i(WPA2)

【データの暗号化】

  • スタティックWEP
  • WPA
  • IEEE802.11i(WPA2)

これらのセキュリティ機能の変遷は次のようになります。

初期の無線LANセキュリティ機能
SSIDの隠蔽
MACアドレスによるフィルタリング
スタティックWEP

WPA-2002年10月

IEEE802.11i(WPA2)-2004年7月

初期の無線LANセキュリティからWPA、IEEE802.11i(WPA2)へとよりセキュリテ
ィ機能が強化されています。WPA2はIEEE802.11iの標準に準拠していて、ほぼ
同義です。