平成15年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅰ問1

問1 音声データ統合網におけるネットワークの再構築に関する次の記述を読んで、設問
1~3に答えよ。

T社は、建設機械を中心にレンタル業を営む企業であり、クライアントサーバ方式の業務システムを運用している。業務システムは、本店のセンタサーバ、支店のローカルサーバ及びパソコン(以下、PCという)で構成されている。本店と10か所ある支店問は、フレームリレー(以下、FRという)サービスで接続されている。業務システムのほかに、イントラネットシステムとして、メールサーバ及びWebサーバを用いた、電子メール、電子掲示板などのサービスがPCから利用できる。イントラネットシステムと業務システムは、FRサービスを共用している。
本店と支店に構内交換機(以下、PBXという)が設置されており、各ビル内において内線の通話ができる。また、PBXの外線を用いて本支店間、支店相互問の通話もできる。
T社は、これらの杜内情報システム全般の見直しを行うプロジェクトを開始した。プロジェクトの進行に伴い、数多くのアプリケーションが開発されることになり、ネットワークトラフィックの増加が見込まれた。また、音声データ統合網を構築し、よりコスト効果の高いネットワークにすることも課題とされた。S君は、このプロジェクトにネットワーク担当者として参加することになった。

〔現状調査〕
最初に、S君は、現状調査を行うことにした。業務システムは、ファイルの同期のために、9時から17時まで1時問間隔で定期的にセンタサーバとローカルサーバ問のファイル転送を行っている。ローカルサーバ間のファイル転送は、行われていない。
転送時間は、データ量にもよるが、通常5分程度である。この時間に電子掲示板を閲覧してみると、支店では、応答時間が遅くなることがある。しかし、本店では、特にこのような支障はない。したがって、現状では、本店LANの通信能力及び( a ) に問題はなく、FRサービスの通/言能力に問題があると推測される。

〔ネットワークの見直しを行うための事前調査〕
FRサービスに代わる高速な通信サービスは、IP-VPNサービスと広域イーサネットサービス(以下、広域イーサという)があることが分かった。S君は、試算の結果、経費の面で有利であった広域イーサを前提に検討を進めることにした。広域イーサ網へのアクセス回線は、本店を10Mビット/秒、支店を0.5Mビット/秒にすることにした。また、広域イーサが提供する回線終端装置のインタフェースの特徴から、既存のルータは、空きポートを利用してそのまま使用することにした。図1に、広域イーサとの接続形態を示す。

音声データ統合網の構築のために、既設のPBXをVoIPゲートウェイ経由でLANに接続し、社内通話をデータ網経由にする。PBXとVoIPゲートウェイ間は、アナログインタフェースで接続する。PBXの音声信号をLANに送り出すために、VoIPゲートウェイでは、音声信号の[ b ]及びパケット化を行う。また、データ網と電話の運用管理の統合を進めて、コストを削減する。図2に、これまでの調査結果に基づくT社の新ネットワークを示す。

〔音声伝送における品質問題〕
従来の電話網は、電話機から電話機までの通信路を電話交換機が制御して回線を確保し、帯域を占有する( c )交換方式であるので、通話品質が安定する。一方、FRサービスは、通信事業者の提供する( d )による情報速度の保証があるものの、多くのサービスが数Mビット/秒までの通信速度であり、パケットの損失や遅延、ジッタによる音声品質の劣化への対策が必要である。同様に、広域イーサでは、網内の帯域保証がないので、音声品質の劣化への対策が必要である。
S君は、広域イーサに収容する音声チャネル数を検討するために、VoIPにおいて、音声1チャネルに必要な伝送帯域を計算した。図3に、VoIPゲートウェイから出力される音声パケットを含んだイーサネットフレームの構成を示す。音声を8kビット/秒で圧縮し、図3のヘッダを考慮すると( ア )kビット/秒になった。ただし、音声のパケット化は、20ミリ秒ごとに行うものとした。

電話は、音楽のストリーミング放送と違って双方向のコミュニケーションなので、遅延が大きいと会話に支障を来す。そのため、150ミリ秒以下の遅延が目安になっており、遅延の発生箇所を調べて遅延時間を見積もっておく必要がある。パケットの到着時問がほかのトラフィックの影響で変動するジッタも会話に支障を来すので、VoIPゲートウェイのジッタ吸収バッファを調整する必要がある。
電話において、自分の声が山びこのように聞こえるという現象の対策には、遅延時間を短縮させることや、VoIPゲートウェイに搭載されている( イ )機能を利用することが効果的である。

〔ネットワークの設計〕
S君は、広域イーサの提供業者と具体的に打合せを行った。業者によると、”提供する広域イーサでは優先制御を行わない”ということだったので、音声品質の劣化への対策を行うことにした。ルータの広域イーサ側への出力において、音声パケットを優先して出力するための機能を設定する。さらに、本店と支店では、アクセス回線の速度が異なるので、ネットワークの設計においてボトルネックが生じないように注意する必要がある。
S君の調査を踏まえ、T社では、広域イーサを利用して音声データ統合網の構築を進めることにした。


設問1 FRサービスの見直しに関する次の問いに答えよ。

(1) 本文中の[ a ]~[ d ]に入れる適切な字句を答えよ。
(2) FRサービスから広域イーサに変更するときに、ルータをそのまま使用することにした。本文中の下線の特徴を、30字以内で具体的に述べよ。

設問2 音声品質対策に関する次の問いに答えよ。

(1) 本文中の[ ア ]に入れる適切な数値を答えよ。答えは、小数第1位まで求めよ。
(2) 遅延の発生箇所を広域イーサ以外に二つ挙げ、それぞれ15字以内で答えよ。
(3) 本文中の[ イ ]に入れる適切な字句を答えよ。

設問3 広域イーサに関する次の問いに答えよ。

(1) 支店のアクセス回線速度は本店のアクセス回線速度よりも遅いので、音声品質の劣化が起こる。このとき、広域イーサ網内で生じている現象を、40字以内で具体的に述べよ。
(2) 上記(1)の現象を回避するために、どのような対策をとったらよいか。30字以内で具体的に述べよ。

この問題の解答と詳細解説はGene製作のテクニカルエンジニア(ネットワーク)平成15,16,17年度分
午後問題完全解説集!

詳細はこちら→http://www.n-study.com/library/2006/05/post.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA