平成17年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅰ問3

問3 コールセンタシステムの設計に関する次の記述を読んで、設問1~ 3に答えよ。

情報機器の製造販売会社であるK社は、顧客サポートの強化を図るため、商品及びサービスの問合せ受付を行うコールセンタシステムを構築することになった。システムを構築するに当たり、企画部門からは、次のような要件が出されている。
(1)電子メールやWebな どのIPを使用したシステムとの相互接続性や、将来への拡張性について、いろいろなメリットが考えられるVoIPを採用したい。

(2)ピーク時においても、オペレータが電話に出るまでの平均応答待ち時間を20秒以内にしたい。
(3)オペレータ拠点としては、人材及びオフィスの確保が容易なことから、既に確保されている2か所の拠点を使用したい。また、サーバ類は、オペレータ拠点とは離れた場所になるが、設備や運用体制などが整っている既設データセンタに設置したい。

K社では、これらの要件にこたえられるコールセンタシステムの検討を開始した。次は、技術的観点から行われた検討の一部である。

〔呼制御プロトコルに関する検討〕
IETF(Internet Engineedng Task Force)は、、IPネットワーク上で電話の呼制御を実現するプロトコルとして、SIP(Sesslon lnitiation Protocol)の標準化を進めている。
図1は、電 話端末Xが 電話端末Yに 発呼してから電話端末Xが 呼を切断するまでの、SIPによる呼制御シーケンスを示したものである。

電話端末がVoIPによる通信を行うためには、通信相手の電話番号から電話端末のIPアドレスを知る必要がある。このアドレス解決手段を提供するのが、SIPサーバである。
アドレス解決が完了し、 通話が開始された状態では、音声ストリームの経路は【 ア 】
ので、電話端末とSIPサーバ間は広い帯域を必要としない。したがって、SIPサーバの設置場所に関しては自由度が高い。
また、SIPは単に通話機能を実現するセションだけでなく、テレビ電話やパソコン(以下、PCという)画面の共有などの機能を実現するセションと組み合わせて利用できるなど、拡張性をもったプロトコルとなっている。この拡張性は、SIPが通信相手とのセション確立開始時に、【 a 】 リクエストのセション記述で、【 イ 】 を通知することによって実現している。
以上のような特長から、今回のコールセンタシステムの呼制御プロトコルとしては、将来のサービス拡張を考え、SIPを採用した。

〔コールセンタシステムの構成に関する検討〕
図2は、構築しようとしているコールセンタシステムの構成である。

データセンタとオペレータ拠点、M及びNは互いに離れた場所になるので、コールセンタシステムの構成はVoIPの特長を生かした分散型とする。各オペレータ席には、電話端末とPCが用意される。着信待ち、通話中、通話結果入力中、離席などのオペレータの状態に関する情報は、オペレータ席のPCから呼分配制御サーバに常に通知される。また、オペレータは、顧客の応対に必要な情報を得るために、オペレータ席のPCから顧客情報サーバにアクセスする。公衆電話網と接続するための音声ゲートウェイは、オペレータ拠点側に設置する。
データセンタに設置するSIPサーバは、オペレータ拠点M及びNの 両方の呼を制御する。このSIPサーバは、音声ゲートウェイから電話の着信通知を受けると、オペレータの状態を管理している呼分配制御サーバに問合せを行って、着信待ち時間の最も長いオペレータの電話端末に電話を着信させる。

このように、オペレータの状態に基づく呼の分配には、SIPサーバと呼分配制御サーバの連携が必要である。さらに、かかってきた電話を、単純に空いている電話端末へ着信させるように設定した、連携のないSIPサーバをオペレータ拠点にも追加設置することで、障害時でも極力電話が受けられるようにすることを考えている。使用する電話端末や音声ゲートウェイ (以下、電話端末等という)には、データセンタに設置するSIPサーバをプライマリとし、オペレータ拠点のSIPサーバをセカンダリとして、二つのSIPサーバを登録する。プライマリのSIPサーバとの接続ができなくなった電話端末等は、セカンダリとして登録したSIPサーバに自動的に接続を切り替える。

〔応答待ち時間と最低限必要なオペレータ数に関する検討〕
オペレータは自分の電話端末に着呼があると通話をし、通話が終わるとその結果を入力する (以下、アフターワークという)。通話とアフターワークを行っている間は、次の電話を受けることができない。オペレータ全員がこのような応答不可の状態になると、顧客は通話できるまで待たされることになる。

コールセンタシステムでは、 この応答待ち時間をできるだけ短くする必要がある。応答待ち時間の評価には、待ち行列理論が使われる。構築しようとしているコールセンタシステムのピーク呼数は360呼/時間、平均通話時間は4分、平均アフターワ―ク時間は2分と想定している。この場合、平均サービス時間は【 d 】 分となる。オペレータ数を窓口数sとするM/M/s待ち行列モデルで考えたとき、前記のピーク呼数に対応するオペレータ数と平均待ち行列長の関係は、次の表で与えられる。

また、平均到着率をλとすると、平均待ち行列長 Lと平均待ち時間Wとの間には、次のリトルの公式が成立する。

W=L/λ

平均到着間隔は平均到着率の逆数であり、コールセンタシステムのピーク時は【 e 】
秒となる。表を用いて、ピーク時の平均応答待ち時間を20秒以内にするために最低限必要なオペレータ数を求めると、【 f 】 人となる。

K社は、このような技術的検討を進め、システム構築に移るとともに、オペレータの要員確保など、コールセンタ開設の準備を開始した。

設問1 〔呼制御プロトコルに関する検討〕について、(1)、(2)に答えよ。

(1) 図 1中 の 【 a 】 ~ 【 c 】に入れる適切な字句を解答群の中から選び、記号で答えよ。

解答群
ア ACK イ BYE ウ CALL 工 DISCONNECT
オ INVITE 力 OK キ REQUEST
(2) 本文中の【 ア 】 、【 イ 】 に入れる適切な字句を、それぞれ 20字以内で答えよ。
設問2 〔コールセンタシステムの構成に関する検討〕について、(1)~(3)に答えよ。
(1) 1台の呼分配制御サーバで、オペレータ拠点M及 びNの呼の振り分けを制御できる利点は何か。25字以内で述べよ。
(2) オペレータ拠点にSIPサーバを設置し、セカンダリとすることで、本文中の下線の対応が可能な障害を二つ挙げ、それぞれ25字以内で述べよ。

(3) 音声ゲートウェイをデータセンタではなく、オペレータ拠点側に設置した場合の、音質面の改善以外の利点を二つ挙げ、それぞれ30字以内で述べよ。
設問 3 本文中の 【 d 】 ~【 f 】 に入れる適切な数値を答えよ。

この問題の解答と詳細解説はGene製作のテクニカルエンジニア(ネットワーク)平成15,16,17年度分
午後問題完全解説集!

詳細はこちら→http://www.n-study.com/library/2006/05/post.html

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