量子暗号通信 ~絶対に解読されない暗号通信~

メルマガ読者のBekohさんが、将来のセキュアな通信技術の「量子暗号通信」
について、概要をまとめてくださいました。2回にわたって、その記事を掲載
させていただきます。

目次

(1)はじめに
(2)量子暗号通信の紹介
(3)量子力学とは?
(4)量子力学に貢献した人々
(5)量子力学を応用したIT社会
(6)量子コンピュータの紹介

(1)はじめに
今、物理学の「量子力学」を応用した情報処理の技術がさかんに研究されてい
ます。まだまだ一般的に普及はしていないので、情報処理の技術雑誌には皆無
ですが、どんな研究や開発が行われているかをWebサイトや参考図書を紹介し
ながら説明してみたいと思います。

(2)量子暗号通信の紹介
今や日常生活に欠かせないEメールやインターネットなど現代通信の安全性は
常に守られなくてはいけないものの一つでした。が、現状はハッカーや悪意あ
る第三者とのいたちごっこの状態が長い間続いています。しかし、20世紀最後
になって画期的な暗号通信が考案され、このいたちごっこにも終止符が打たれ
ようとしています。まだまだ実験室レベルでの開発成功事例ですが、近年の情
報通信技術全般の進歩から見て、この技術の実用化はそう遠い未来ではないか
もしれません。その技術とは「量子暗号通信」です。
「量子」とは20世紀初頭に物理学の分野で発見された「量子力学」からとって
きたものです。高校生でも物理の授業で概念は触れられているので、理科系の
人にはそんなに概要をつかむのに苦労はしないのではないでしょうか?

(3)量子力学とは?
量子力学とは、近代科学の2大理論の一つです。もう一つはあまりにも有名な
「相対性理論」です。相対性理論が巨視的な物理現象を説明するのに対して、
量子力学は電子などミクロの物理現象を説明する理論です。その両極端の間に
あるのがニュートンが発見した古典力学です。日常生活の物理現象は古典力学
で十分に説明できるのですが、太陽などの巨大なスケールでは相対性理論、電
子や原子核など微小な世界では量子論でないとうまく説明できないのです。余
談ですが、現在の物理学の目標は、量子力学と相対性理論の統一化です。

(4)量子力学に貢献した人々
ここで今回説明する「量子暗号通信」の基礎「量子力学」を築いた主な人々を
簡単にご紹介します。

マックス・プランク(1858~1947年)
量子論の父。1900年、ある種の物体から放射される光のスペクトル(波長ごと
の強度分布)の観測結果から「光を放出する粒子(原子や分子)は、とびとび(不
連続)のエネルギーしかとれない」という(量子)仮説を提唱した。「何かのエ
ネルギーはとびとびになる」、という量子論の考え方のはじめての登場です。

ニールス・ボーア(1885~1962年)
ラザフォードの原子模型に量子論的発想を取り入れた原子模型を考案。水素の
出す光のスペクトル(波長ごとの強度分布)の説明に成功しました。

エルヴィン・シュレーディンガー(1887~1961年)
波動を使って量子力学を解明。この波動方程式をシュレーディンガーの波動方
程式と言います。

ウェルナー・ハイゼンベルグ(1901~1976年)
行列を使って量子力学を解明。今回説明する「不確定性原理」も発見する。実
は量子行列力学とシュレーディンガーの波動方程式は同等で表現方式が違うだ
けということが後に判明します。

まだまだ、量子力学に貢献した人々は沢山いますが、詳細は参考図書を参照し
て下さい。

(5)量子力学を応用したIT社会
実は、なにも「量子暗号通信」に限らず、量子力学は色んな分野で応用されて
います。例えばコンピューターの部品である半導体は量子力学の技術が無くて
は作れないものです。その他、日常生活で使われているものには、テレビ、携
帯電話、DVD、デジタルカメラ、電子レンジ、MRI(核磁気共鳴画像診断法)など
です。もちろん現在のIT化も多大な影響を受けています。だから特に目新しい
訳ではなく、日常生活で極当たり前のように使われているものの道具なのです。

(6)量子コンピュータの紹介
現在のコンピュータは、電気信号のある・なしを数値の1と0に置き換えて計算
することを基礎としています。だから表現形式は2進数で処理されていていま
すね。今回の趣旨とは違いますが「量子コンピューター(量子計算機)」の研究
も各研究機関で盛んに進められています。基本は2進数のビットを「量子ビット」
として捉えます。ちょっと理解し辛いかもしれませんが簡単な説明をします。

2つの量子ビットを計算に使うと、「00」「01」「10」「11」の四つの状態を
同時に処理することが出来ます。3つの量子ビットを使うと「000」「001」「010」
「011」「100」「101」「110」「111」の八つの状態を同時処理することが出
来ます。同様に拡張して考えると例えば、10個の量子ビットを計算に使えば
1024(=2^10)個の処理を同時並行に行えるのです。量子ビットが増えれば増え
るほど従来のコンピューター(フォン・ノイマン型)に比べて、指数関数的に処
理能力が上がるのです。これが量子コンピュータで並列計算が可能で強力な理
由ですが、不思議ですね?私も最初は?でした。

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