平成15年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅰ 問1設問1解答と解説

(所属カテゴリー:テクニカルエンジニア(ネットワーク)---投稿日時:2008年9月10日)

解答

(1) 【a】 Webサーバの処理能力

   【b】 デジタル化  【別解】符号化

   【c】 回線

   【d】 CIR

 (2) 回線終端装置のインタフェースがイーサネットであること(26字)

 

解説

(1)
ネットワークの再構築にあたりS君が現状を調査したところ、業務システムの ファイル転送時に電子掲示板のレスポンスが悪化することが分かりました。 【a】はその原因に関する問題です。

  • 現状のFR構成図は問題文にありませんので、FR構成を簡単に図示してみましょう。

H15A1-1pic1.JPG

また、応答速度悪化の原因を考える上でのポイントは以下のとおりです。

  • センタサーバとローカルサーバ間のファイル転送を実施した際に、支店からの電子掲示板の閲覧応答速度が悪化する
  • 本店では応答速度の悪化が無い

応答速度悪化の原因は、回線帯域の不足またWebサーバの処理能力のどちらかで あると考えられます。しかしWebサーバの処理能力が原因であれば、本店からの アクセスに対しても応答速度が悪化するはずです。この問題の原因は、FR サービスの通信能力に原因があると推測されるのです。よって空欄の【a】は 「Webサーバの処理能力」になります。

【b】は音声信号のIPパケット化についての問題です。音声信号をIPパケット 化し,IPネットワーク上で音声を伝送することを、VoIP(Voice over IP)とい います。今やVoIPを使用した企業内線網は一般的になりましたが、現在でも多 くの企業は、PBX同士を専用線や公衆電話網で接続した内線網を構築しています。 VoIPを採用することで、音声ネットワークとデータネットワークがIPに統合で き、PBX同士を高価な専用線や公衆網を使用するのと比較してコスト削減になる がVoIPのメリットといわれています。しかしそれは電話料金が高かった時代の 話で、最近は電話料金の値下げ競争が激しく公衆網の料金が下がっているため、 必ずしもVoIPでコストメリットが出ると単純には言い切れないようです。 とは言え、将来的には電話網はIPに統合する構成が主流になるのは間違いない でしょう。

VoIPで音声信号がIPパケット化されるまでの手順は以下のとおりです。

①音声信号のデジタル化(符号化)
音声はもともとアナログの電気信号です。アナログ信号をそのままIPのデジ タルネットワークで伝送できないので、音声をデジタル化する必要があります。 このデジタル化の処理にはいろいろな方式があり、よく使われるのはG.711と いう方式とG.729という方式です。この2つについては覚えておきましょう。

G.711はPCM方式とも言われます。サンプリングという方法で音声信号を 64kビット/秒のデジタル信号に変換します。実際の音を忠実に伝送したい時に 使われる、品質のよい方法です。普通の固定電話においては、電話会社の中継 網はG.711で音声が符号化されています。
一方G.729はCELP方式という方法が使用され、音声信号を8kビット/秒まで圧縮 して伝送することができます。もちろんその分G.711と比較すると、音声品質が 劣化することになります。携帯電話の音声符号化方式は、CELP方式の一種が使 用されています。

②IPパケット化
デジタル化した音声データをIPパケット化します。このとき、IPの上位プロト コルには、UDPとRTPというプロトコルが使用されます。RTPは音声やデータをリ アルタイムに転送するためのプロトコルで、映像データのストリーミングなの でも使用されます。到達したパケットが遅れたり、順番が入れ替わったりしても 正しくデータが再生できるようにする役割があります。

VoIPゲートウェイは、基本的にはこのように音声信号をIPパケット化するため の機器です。また、電話番号から相手を呼び出して、通話、切断するまでの 手順(呼制御といいます)を、SIPやH.323といったIPネットワーク上で動作 する呼制御プロトコルに変換する役割も果たしています。

こういったVoIPゲートウェイの動作を理解していれば【b】にあてはまるのは、 「デジタル化」または「符号化」とわかります。

【c】には「回線」が当てはまります。
「回線交換」と「パケット交換」という言葉はセットで覚えておきましょう。 言葉自体はあまり使われなくなりつつありますが、概念として知っておいた ほうがよいです。

H15A1-1pic2.JPG
図:回線交換方式とパケット交換方式

【d】はFRサービスの最低帯域保証に関する問題です。
FRはもはや過去のサービスという印象ですが、テクニカルエンジニア(NW)の 問題としてはよく出てきますね。基本的なところは抑えておきましょう。

FRは、広域イーサやIP-VPNのようなフルメッシュのサービスではなく、論理的 には1対1で接続するサービスです。【c】のパケット交換方式の図を例に説明 すると、一番上の赤の端末同士は論理的に1対1に接続されています。この論 理的なパスのことをPVC(Permanent Virtual Circuit)といいます。またFR ではPVC毎に、CIR(Committed Information Rate)という最低保障帯域が設定 できます。
パケット交換方式では回線帯域が複数のユーザで共有されるため、他のユーザ のトラフィックの影響を受ける可能性のサービスです。CIRを設定しておけば、 仮にFR網が輻輳した場合でも最低限CIRの帯域は保障されます。

H15A1-1pic3.JPG

よって【d】には「CIR」が当てはまります。

(2)
広域イーサネットサービスは、IP-VPNと並んで現在の主流となっているWAN サービスです。広域イーサは全国規模の巨大な1つのL2SW、IP-VPNは巨大な ルータだというイメージをもつと、それぞれのサービスの特徴が理解し易い と思います。
広域イーサとIP-VPNと比較した場合の広域イーサの主な特徴は次のとおりです。

・プロトコルの制約が無い
イーサネットに対応していれば、プロトコルの制約が無い。IPXやAppleTalk など、IP以外のプロトコルも使えます。
・ルーティングプロトコルの制約が無い
ルーティングプロトコルの制約がありません。IP-VPNの場合は、通信事業者に よって使用できるルーティングプロトコルが限られます。
・ユーザインタフェースがイーサネット
アクセス回線によらず、ユーザインタフェースがイーサネットです。IP-VPNは ユーザインタフェースがアクセス回線に依存します。

問題で問われている「広域イーサが提供する回線終端装置のインタフェースの 特徴」とは、上の3番目の「ユーザインタフェースがイーサネット」というこ とです。ATMインタフェース等の高価なカードを準備する必要が無く、またL3SW 等の安価で高性能な機器が使用できるというメリットがあります。 T社の例では、イーサネットの空きポートがあったため、既存のルータをその まま使用することができました。
なおFRの場合は、BRIやPRIといった、高速デジタル専用線のインタフェースが 回線終端装置のインタフェースになります。

H15A1-1pic4.JPG


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