平成16年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅱ 問2設問2解答と解説

目次

解答

(1)映像データの転送経路上の適切なルータに対して資源予約を行うため(31字)

(2)処理するトラフィック量が最も多いルータだから(22字)

(3)DSドメイン毎に制御ポリシーが異なるため、制御の内容を統一する必要があるから(38字)

解説

(1)
ネットワークエンジニアとはいえ、RSVPの詳細を理解している人は少ないのではないでしょうか?それに加えて、いったい何を聞きたいのかが非常に分かりにくい問題ですね。

I係長がRSVPを詳しく説明してくれているので、ここでは、冷静に問題文の中から答えのヒントを探し出してみましょう。I係長がPathメッセージについて述べているのは次の通りです。

RSVPでは、まずサーバがPCあてにPathメッセージを定期的に送信します。

Pathメッセージを受信したPCは、資源予約のためのResvメッセージをサーバあてに送信します。Resvメッセージは、Pathメッセージの転送経路を逆にたどるように転送されます。

I係長も言っているようにResvメッセージは資源予約のために使用されているため、明らかに必要なメッセージです。ではPathメッセージはなぜ必要なのでしょうか?それは、「Pathメッセージの転送経路を逆にたどるように転送されます」というI係長のコメントがヒントになります。
通常TCP/IPネットワークでは、パケットの行きと帰りのルートが必ずしも同じとは限りません。行きと帰りでIPルーティングは全く独立して行われるからです。だからもしPathメッセージが無かったら、PCは映像データがどういう経路でどのノードを経由して到達するのかが分かりません。映像データの経路が分からなければ、どのノードに対して資源予約を依頼していいのかも分からず、Resvメッセージも送ることができませんよね。
そこでPathメッセージの出番となります。Pathメッセージを利用することで、映像データの転送経路を確認することができます。ResvメッセージはPathメッセージの転送経路を逆にたどりながら資源予約をするため、転送経路上のノードに確実に資源予約を依頼することができるのです。

これを35字以内でまとめると、

映像データの転送経路上の適切なルータに対して資源予約を行うため(31字)

となります。

(2)
これはかなり基本的な問題ですね。確実に正解しましょう。
図2のルータの能力が同じだとすると、トラフィックの集中するコアルータが負荷的に最も厳しいのは当然の話です。
エッジ機器同士を直接接続してしまうと、構成も複雑になり、回線コストもかさんでしまいます。そこでコアとなる機器でトラフィックを束ねて転送することで、構成もシンプルになり、回線コストも減らすことができます。こういったエッジ~コアのネットワーク構成の場合、コアとなる機器には最もトラフィックが集中するため、一般的に高スペックの機器が使用されます。また、トラフィックが集中するということは、障害発生時の影響範囲も広範囲に及ぶということなので、信頼性についても気を使う必要があるでしょう。ちなみにインターネットでコア機器となるISPのバックボーンルータは、処理能力も信頼性も非常に高スペックのものであり、人間の背丈以上もある巨大なルータが使用されていたりします。

(3)
同一のdiffserv制御ポリシーに基づいて運用されるネットワークをDS(diffserv)ドメインといいます。イントラネットの場合、1つの企業であれば、ネットワーク全体を1つのDSドメインとして設計することが可能です。しかしインターネットは複数のISPが相互に接続された巨大なネットワークなので、仮にISPがdiffservに対応できたとしても、複数のDSドメインが相互接続する構成になってしまいます。また、I係長は「Diffservを利用できるISPが少ない」とコメントしていますし、私自身はISPがDiffservを提供するという話は聞いたことがありません。

問題の図3は、ISPがDiffservを提供できると想定した時の構成です。同一ISP内の通信は問題ないのですが、トラフィックが複数ISPをまたがる場合、つまりDSドメインをまたがる場合でもQoSのポリシーに変化が無いようにしなくてはいけません。そのためには境界ルータでDSフィールドのビット情報の変換が必要です。

DSフィールドのビット情報とは、問1(b)で解説したDSCPのことです。IPパケットのTOSフィールドを再定義したもので、Diffserv制御の基準となるビットです。例えば、映像データとhttpが混在するネットワークで考えてみると、映像データのDSCPに「111000」を、httpパケットには「000000」をマーキングし、ルータで「111000」を「000000」より優先制御させるよう設定すれば、映像データが優先制御されるというわけです。ところが別のDSドメインにそのままのパケットを流した場合、必ずしも「111000」を「000000」より優先制御させるというポリシーとは限りません。そこでポリシーを合わせるためにDSCPのビットを変換することが必要になります。

H16A2-2-2pic1.JPG

これを40字以内でまとめると、

DSドメイン毎に制御ポリシーが異なるため、制御の内容を統一する必要があるから(38字)

となります。


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