平成16年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅱ 問2設問3解答と解説

目次

解答

(1)国会中継等のライブ配信(11字)
(2)ISPとIX間の接続回線(12字)
ISP同士の接続回線(10字)
経由するノードの数(9字)
(3)トラフィックがISPをまたがらないためサービス品質低下の要素を少なくできるから(39字)

解説

(1)
設問1の【a】で解説したとおり、ストリーミングは「ライブ配信」と「オンデマンド配信」に分類されます。VOD(Video On Demand)以外のストリーミング型の映像配信サービスが問われているので、ここではライブ配信について回答すればよいでしょう。

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(2)
図1のH課長が考えたコンテンツ配信システム構成は、コンテンツ配信サーバはISP-Aの配下にしかありません。この構成でISP-Aの利用者とISP-Dの利用者を比較してみると、見るからにISP-Dの利用者の方がサービス品質が低下しそうですよね。ではその理由をひとつずつ整理してみましょう。

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上の図の吹きだしで示したとおり、サービス品質劣化の要員としては、主に次の3つの理由が考えられます。

ISP-AとIXの接続回線、ISP-CとIXの接続回線
IXとは、ISP同士が相互接続を行うポイントのことです。日本では日本インターネットエクスチェンジ「JPIX」、インターネットマルチフィードが運営する「JPNAP」、WIDEプロジェクトが運営する「NSPIXP」などが有名です。IXは実際にデータセンタに設置された高性能なスイッチングハブなどで構成されており、各ISPが物理的な回線をIXに引き込むことで、そのIXに接続している他のISPと論理的に接続が可能になります。それぞれのISPと個別に相互接続するのに比べ、効率的、経済的にISP間接続が可能になります。
実際にはIXに物理的に接続しただけでトラフィックが交換されるわけではなく、ISP同士が交渉し、同意の上でトラフィックを相互に交換することになります。これをピアリングといいます。ピアリングは基本的にISP同士が対等に接続されるため、無償で行われます。中小のISPになると、せっかくIXに接続しても、ISPから相互接続を断られることもあるらしいですね。

そのIXへの接続回線は、ISPの方針によって決定されます。規模の大きなISPは当然小規模のISPよりも太い回線帯域でIXと接続するはずですし、また信頼性を重視するISPほど、複数のIXへ相互接続回線を構築するという設計方針にするはずです。
上図のISP-Dの利用者のようにIXを経由して通信を行う場合は、ISPとIXの接続回線がサービス品質低下の要因になりえます。回線帯域が十分確保されていない場合、輻輳や、遅延値の増加やパケットロスにつながります。

ISP-CとISP-Dの接続回線
IXでの無償の相互接続が断られてしまうような、中小のISPは仕方が無いので、お金を払って大手のISPに相互接続してもらうことになります。そういった場合、中小のISPは、トラフィックのすべてを大手ISPにゆだねることになります。こういった接続形態はトランジットといわれます。上の図で言うと、ISP-DはISP-Cにお金を払ってトランジット接続をしています。トランジットとは、もともとは飛行機などの乗り継ぎという意味で、ISP-Dは他のどのISPと通信するときも必ずISP-Cを経由して(乗り継いで)いるのが分かりますよね。
よってISP-Dの利用者がサービスを受ける場合は、ISP-CとISP-Dの間の接続回線もサービス品質に影響します。

経由するノードの数
ISP-Aの利用者のトラフィックの流れは

PC ~ ISP-A ~ PC

です。一方ISP-Dの利用者のトラフィックの流れは

PC ~ ISP-A ~ IX ~ ISP-C ~ ISP-D ~ PC

となります。明らかに経由するノード(機器)の数は多いです。経由する機器が多いということは、ネットワーク遅延や、パケットロスなどのトラフィック品質に大きく影響する可能性があります。また、全体として故障発生率も大きくなります。

(3)
CDN(Contents Delivery Network)による高品質なコンテンツ配信に関する問題です。前問の(2)では、ISP-AとISP-Dのユーザでサービス品質に差が出ることが問われていました。CDNはそういった品質の差をなくすための工夫が施されており、異なるISP間でも高品質なコンテンツ配信サービスが提供できます。

そのサービス品質確保のポイントとなるのが「キャッシュサーバ」です。図4のように、各ISPの配下にキャッシュサーバを設置することで、ISP-CはISP-Cのキャッシュサーバから、ISP-DはISP-Dのキャッシュサーバからデータ配信を受けることになり、トラフィックがISPをまたがる必要がなくなることがわかります。つまりISP間の接続回線帯域や、経由するノードの数など、前問(2)の問題点を極力排除できるような構成になっているんですね。それにサーバが分散されるため、ネットワークやサーバにかかる負荷が軽減される効果もあります。


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