平成17年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅰ 問Ⅲ設問2解答と解説

目次

解答

(1)オペレータ拠点MおよびNの負荷の平準化ができる(23字)

(2)

  1. データセンタ内のSIPサーバ障害(16字)
  2. 広域イーサネットの障害(11字)

(3)

  1. データセンタとオペレータ拠点間の必要帯域を縮小できる(26字)
  2. データセンタ側の障害時も電話接続が確保できる(22字)

解説

(1)
コールセンタに着信する電話は、呼分配制御サーバによって拠点Mと拠点Nの
オペレータに自動的に振り分けられます。電話をかける顧客は自分がどちらの
拠点のオペレータを会話しているかは全く意識する必要がありません。コール
センタの拠点が複数に分散していたとしても、顧客に対しては1つのコールセ
ンタしか存在してないように見えます。

また着信呼の振り分けポリシーは本文中p13に次のように記載されています。

このSIPサーバは、音声ゲートウェイから電話の着信通知を受け取ると、オペ
レータの状態を管理している呼分配制御サーバに問合せを行って、着信待ちの
時間の最も長いオペレータの電話端末に電話を着信させる。

単純に言ってしまえば、最も暇な人から順番に仕事を割り当てることが可能と
いうことです。こうすることで特定のオペレータに負荷が集中することを避け、
オペレータ間の負荷を平準化することができます。

この振り分けイメージを図示すると次のようになります。

a"TENW-H17-PM1-15.jpg"

また、コールセンタといえば「0120」番号に代表されるような着信者課金が通
常ですね。図2では公衆電話網が拠点MとNに引き込まれていますが、同じ
「0120-xx-xxxx」という電話番号を拠点MとNの両方に着信させることが可能
です。これは通信キャリアのサービスを使用する必要がありますが、例えば拠
点MとNを人数の比率に合わせて着信の比率も60%と40%、というように配分す
ることも可能です。

ここで問題に戻ります。問題では、1台の呼制御サーバでオペレータ拠点M及
びNの呼の振り分けを制御できる利点が問われています。これは「なぜ呼制御
サーバが必要か?」と置き換えて考えた方が分かりやすいかもしれません。呼
制御サーバの目的は、着信呼を拠点MとNに振り分けることです。物理的には
別の拠点であるにもかかわらず、着信待ち時間という同じ基準で業務負荷を平
準化できるところにあるでしょう。

よって答えは

オペレータ拠点MおよびNの負荷の平準化ができる

となります。

(2)
オペレータ拠点にもSIPサーバ設置するのは、信頼性向上のためです。障害時
の動作が詳しく本文に明記されているため、これを注意深く読めば回答するの
は難しく無いでしょう。本文p13に以下のとおり記載されています。

かかってきた電話を、単純に空いている電話端末へ着信させるように設定した、
連携の無いSIPサーバをオペレータ拠点にも追加設置することで、障害時でも
極力電話が受けられるようにすることを考えている。使用する電話端末や音声
ゲートウェイ(以下、電話端末等という)には、データセンタに設置するSIP
サーバをプライマリとし、オペレータ拠点のSIPサーバをセカンダリとして、
二つのSIPサーバを登録する。プライマリのSIPサーバとの接続ができなくなっ
た電話端末等は、セカンダリとして登録したSIPサーバに自動的に接続を切り
替える。

この仕組みを図にすると以下のようになります。

TENW-H17-PM1-16.jpg

この仕組みで回避できる障害としては

「データセンタ内のSIPサーバ障害」と「広域イーサネットの障害」

を答えればよいでしょう。

(3)
まずは音声ゲートウェイをデータセンタに設置した場合の図をイメージしてみ
ましょう。2つの構成を比較してみれば利点を見つけやすくなります。

TENW-H17-PM1-17.jpg

ゲートウェイをオペレータ拠点に引き込んだ構成と比較すると、上の構成にお
けるデメリットは主に以下のものが考えられます。

  • 音声トラフィックが必ず広域イーサネットを経由するため、遅延による音質の影響を受けやすくなる。
  • 音声トラフィックが必ず広域イーサネットを経由するため、データセンタ~オペレータ拠点間の回線帯域が多く必要となる
  • 公衆電話網との接続が1箇所しかないため、データセンタ障害時に電話接続が受けられなくなってしまう。

問題では音声ゲートウェイをオペレータ拠点に設置した場合の利点を聞かれて
います。また音質改善以外のものを挙げる必要があるため、回答としては

「データセンタとオペレータ拠点間の回線帯域を削減できる」
「データセンタ側の障害時も電話接続が確保できる」

となります。
ただしデータセンタにゲートウェイを設置した構成にもメリットはあります。
例えば

  • 拠点の追加、移転等に柔軟に対応しやすい
  • オペレータ拠点を地方に設置することで人件費や場所代を節約することができる

などがあります。
普通はコールセンタに電話する際、利用者にとっては通話料が無料ですが、こ
れは着信側の企業が負担しているからです。オペレータ拠点を地方に設置した
場合、電話回線も地方に引き込んだのでは遠距離通話の割合が多くなってしま
い、全体として通話料がかさんでしまいます。オペレータ拠点とゲートウェイ
設置拠点が別だからこそ、オペレータは地方に設置して人件費や場所代等を節
約し、ゲートウェイは東京などの人口が集中した都市において通話料を削減す
るということが可能になります。

【参考URL】
コールセンターとは?

written by Gene


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