NETWORK WORLD 2006.7 『60分でわかるWAN高速化機器』 by Gene

IP-VPNや広域イーサネットの普及に伴って、WANでもMbpsは当たり前。場合に
よっては、LANと変わらない100Mbps、1Gbpsの帯域幅を利用可能です。

でも、そんな高速なWAN回線を使い切れていないこともよくあります。せっか
く高速回線を利用していても、その回線のパフォーマンスを最大限に利用
できず、期待したほどスループットが向上しない。

高速なWAN回線のパフォーマンスを最大限に発揮するための装置がWAN高速化機
器です。ここ最近、注目されるようになってきていますね。NETWORK WORLDに
解説記事があったのでレビューのネタに取り上げてみました。

まずPart1「なぜWANのパフォーマンスは上がらない?」です。
通信速度は、LANもWANも変わらないのに、なぜLANに比べるとWANのスループッ
トが小さいのでしょう?これは、ネットワークのパフォーマンスを考える上で
も重要なポイントなんですね。
ネットワークのパフォーマンスというと、通信速度だけに目がいってしまいが
ちなんですが、「遅延」も非常に大きな影響を及ぼします。

※ネットワークのパフォーマンスをはかる指標として、「帯域幅」「遅延」
「ジッタ」「パケットロス」があります。

遅延とは、送信元から送信したデータがあて先に届くまでに必要な時間です。
単純に遅延といっても、いろんな原因で発生するのですが、WANのような広域
ネットワークでインパクトを与えるのが伝搬遅延です。ネットワーク上にデー
タを流すときには、ビットを電気信号や光信号などに変換するわけですが、こ
れらの物理的な信号が伝わっていく時間が伝搬遅延です。
LAN内のようなせいぜい数百メートルから数キロメートルだと伝搬遅延は無視
できます。しかし、WANのような数十キロ~数百キロメートルもの距離を信号
が伝わっていくときには伝搬遅延は無視できなくなります。

多くのアプリケーションがトランスポート層プロトコルにTCPを利用していま
す。TCPは信頼性のあるデータ転送を行うために、確認応答(ACK)を利用します。
パケット1つ1つに対してその都度、ACKを送信するのは効率がよくないので、
ウィンドウ制御によってまとめてパケットを送信し、ACKはあとでまとめて返
します。ACKを返すことで、遅延が往復で効いてきます。まとめてパケットを
送信すると言っても、ウィンドウサイズに制限されますので、遅延が大きくな
ることでTCPの通信のスループットは頭打ちになってしまいます。
また、マイクロソフトのCIFS/SMB(Common Internet File System/Server Message Block)
などのファイル共有プロトコルはそもそも遅延の大きいWANで利用することを
想定していなかったりします。クライアント-サーバ間で大量のメッセージ
のやりとりが発生し、そのたびに遅延の影響を受け、スループットが出ませ
ん。

以上のように、WANのパフォーマンスがなかなか上がらないのは、「遅延」が
大きな原因です。ということは、WAN高速化機器は、いかに遅延を小さくする
かということに工夫を凝らしているわけです。Part2では、WAN高速化機器がど
のように遅延を小さくしているかということを解説しています。

WAN高速化機器が遅延を小さくするためには、次のようないくつかの方法があ
ります。

1.複数の回線の集約
2.データの圧縮
3.TCPやアプリケーション通信の最適化
4.データのキャッシュ

1.は遅延を小さくするというよりも帯域幅を増やす目的ですね。LANのリンク
アグリゲーションと同じ考え方を持ち込んでいますが、費用対効果を考えると
それほど効果的ではないように思います。
2.のデータの圧縮もWAN高速化機器自体がボトルネックになってしまう心配は
あるなと思いました。
3.では、TCPのスロースタートアルゴリズムを変更したり、XTP(eXpress Transport Protocol)
という効率のよい転送プロトコルでWANでの遅延を最小化するものです。
4.は、WANを介して送受信されるデータによっては、手軽で大きな効果を発揮
できる方法です。

より詳しい仕組みの解説は、ぜひ記事を読んでみてください。

Part3は、WAN高層化機器を導入するポイントをまとめています。仕組み自体も
いくつかの方法があり、それらを組み合わせていますし、ネットワーク構成や
アプリケーションも企業ごとに千差万別です。だから、「これ!」と決まった
選択や導入方法があるわけではないのですが、目安としてのポイントがまとめ
られています。
ポイントを列挙すると、

1.対向する機器は同じ機種でそろえる
2.セキュアなWAN間通信にはSSL対応で
3.サーバとなるべく近い距離に置く
4.WANの構成は階層構造を避ける
5.サポートするアプリケーションや管理機能の有無もチェック

こうしたポイントを目安として、自分たちのネットワーク構成や要件に応じて
WAN高速化機器を選択・導入する必要があります。

3部構成で、WANのパフォーマンスがあがらない原因を解説して、それを解消す
るためのWAN高速化装置の仕組み、そして、導入する上でのポイントがよくま
とまっていてわかりやすい記事です。
WAN高速化装置の導入を検討している方や興味がある方には特にオススメです。

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