平成17年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅰ 問Ⅲ設問1解答と解説

目次

解答

(1)
【a】オ
【b】ア
【c】イ

(2)
【ア】電話端末間で直接送受信される(14字)
【イ】使用するメディアとプロトコルの情報(17字)

解説

(1)
SIPとは、IPネットワークにおいて音声、ビデオ、テキストなどのマルチメデ
ィア通信を実現するための呼制御を行うプロトコルです。呼制御とは、電話で
いうと、電話をかける、相手を呼び出す、電話を切るといった一連の手順を制
御することです。
SIPはもともとインターネット技術をベースに開発され、HTTPやSMTPと同様に
テキストメッセージでやりとりされるプロトコルです。そのため他のインター
ネット技術との親和性が高く拡張性があるというのが特徴とされています。

一方SIPよりも先に標準化されたIPネットワーク上の呼制御プロトコルに「H.323」
があります。H.323は既存の公衆電話網向けのプロトコルをIPネットワーク上
で実現するための技術であるため、複雑で拡張性に乏しいといわれています。
H.323はSIPに先駆けて普及し、企業の内線IP網などで標準的に採用されていま
したが、現在はSIPが主流となっています。

(1)はSIPプロトコルの呼制御シーケンスに関する問題です。図1のシーケンス
そのものを穴埋めする問題なので、記憶していれば単純に埋めるだけの問題で
す。記憶していなくてもメッセージの意味合いを予想して、ある程度選択肢を
しぼって答えを導けると思います。

以下に単純な発信、着信においてやり取りされるSIPプロトコルの基本的なシ
ーケンスを示します。実際に電話をかけるときの手順を思い返してみれば理解
するのは難しくないと思います。

TENW-H17-PM1-12.jpg

【a】は電話をかけるときに発するメッセージであり、「招待する」という意
味の「INVITE」が入ることが分かります。通話を開始するまでの一連の手順は
「INVITE」に始まり、「ACK」を送信することで完結します。よって【b】には
「ACK」が入ります。

【c】には「BYE」が当てはまります。通話を切断する時は、相手先に「BYE」
メッセージを送信することで通話の終了を通知します。上の図では電話機Bか
ら「BYE」を送信していますが、もちろん電話機Aから「BYE」を送信する場合
もあります。

また、上の図を見ると呼制御のやり取りは電話機とSIPサーバの間でやり取り
されているのに対し、実際の通話トラフィックについては電話機同士で直接送
受信しているのが分かると思います。(厳密には「Record-Route」という仕組
みを使わない場合は、「ACK」と最後の「BYE」「200 OK」はSIPサーバを経由
せずに端末間で直接やり取りされます。)

このときに使用されるのがRTP(Real-time Transport Protocol)と呼ばれる
プロトコルです。RTPは音声や映像のストリーミングなど、リアルタイムのデ
ータ転送に適した仕組みを持ったプロトコルです。RTPはUDP上で使用されるプ
ロトコルであり、ヘッダに「シーケンス番号」と「タイムスタンプ」というフ
ィールドを持っています。そのため転送途中のパケット到達順序の逆転や、パ
ケットロス発生をチェックすることが可能であり、パケット順序を正しく並び
替えて再生することや、ジッタの影響を低減することが可能となります。

SIPシーケンスを完全に覚えていなくても、電話をかけてから切断までの流れ
を想像してみれば、穴埋めに入りそうなメッセージをある程度直感的に絞り込
むことができると思います。選択肢の中には紛らわしいものもありますが、直
感でも記入するようにしましょう。

(2)
【ア】
(1)でも解説したとおり、通話が確立された後の実際の音声データは、電話端
末間で直接送受信されます。ですから問題文にもあるように

電話端末とSIPサーバ間は広い帯域を必要としない。したがって、SIPサーバの
設置場所に関しては自由度が高い。

ということがいえます。
これは実際のトラフィックをイメージしてみればすぐに分かります。

TENW-H17-PM1-13.jpg

この2つの図を比較すると、音声トラフィックがSIPサーバを経由した場合は
SIPサーバのアクセスにトラフィックが集中するため、広い帯域が必要となっ
てしまうことが分かります。上の図は電話機4台のケースなので、電話機が増
えれば増えるほどトラフィックの集中は顕著になります。
呼制御トラフィックについてはすべてSIPサーバを経由しますが、流れるトラ
フィックの量が限定的であるため、音声ストリームほどトラフィック集中の影
響はありません。

【イ】
本文にもあるように、SIPは単に電話サービスを実現するだけでなく、映像、
チャット、アプリケーション共有などのマルチメディア通信を可能とすること
が大きな特徴です。音声もIP化されてインターネット上に転送できるようにな
って、アプリケーションの1つとして相互にやり取りできるようになりました。

ではSIPはそういったマルチメディアをどういった方法で制御しているのでし
ょうか?
まずIP電話を実現するプロトコル構成の例を以下に示します。

TENW-H17-PM1-14.jpg

図を見るとシグナリングとメディアの2つの構成要素に分かれていることが分
かります。
シグナリングにはSIPとSDP(Session Description Protocol)が使用されます。
SIPは電話の発着信の呼制御を提供し、SDPはどういったメディアを使用するか
(音声か、映像か、テキストか?など)という情報を決定します。ここでいう
メディアとは、例えばIP電話の場合は、「RTPプロトコルを使ってコーデック方
式はG.711、ポート番号○○番で通信する」というような情報がSDPで記述され
ます。

SDPに記述されているとおり、音声メディアの伝送にはRTPが使用されます。RTP
は音声や映像データをリアルタイムに転送するためのプロトコルです。(1)で
解説したような特徴があります。

以上を踏まえて問題を考えてみましょう。本文を見ると

セション確立開始時に、【a(INVITE)】リクエストのセション記述で【イ】を通知する

とあります。INVITEリクエストのセション記述とは、SDPの記述のことを指し
ていると考えられます。SDPではセションで使用したいメディアとプロトコル
に関する情報が記述されます。

よって【イ】は「使用するメディアとプロトコルの情報」となります。
具体的には、参考URLの@IT「IP電話を使うなら知っておきたいパケット制御」
が参考になります。

【参考URL】

written by Gene


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