平成17年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅰ 問Ⅳ設問2解答と解説

目次

解答

(1)24
(2)ルータAとルータB間のフレームのMACアドレスは同じだから
(3)GEポートの送信側の故障
GEポートの受信側の故障

解説

(1)
光ファイバの減衰量について答える問題です。許容範囲内の減衰量の計算方法を知らなくても、問題文の次の部分にどのように考えればよいかが出ています。

光伝送路の減衰量(単位 dB)は、送信レベルの最小値と受信レベルの最小値の差以下である必要があり、

とあります。表より、

  • 送信レベルの最小値=1
  • 受信レベルの最小値=-23

です。これより、送信レベルの最小値と受信レベルの最小値の差は、

1-(-23)=24

となります。

(2)
複数のリンクを束ねて帯域幅を増加させ、耐障害性を高めるリンクアグリゲーションについての問題です。リンクアグリゲーションは、IEEE802.1adで標準化されています。また、Ciscoの機器ではEtherChannelという名称になります。
問題では、L2SW間を4つのGEポートで接続しています。ここでリンクアグリゲーションを利用することで4Gbpsの帯域幅を確保する構成です。4本のリンクのうち、3本まで障害が発生したとしても残りの1本で通信を継続することができるので耐障害性を高めることも可能です。
リンクアグリゲーションで複数のリンク上でどのようにイーサネットフレームを転送するかは、いろいろな方式があって機器ごとに実装が違ったりします。問題文のL2SWではデフォルトであて先/送信元MACアドレスをキーにして負荷分散を行う方式です。キーが異なるフレームを異なるGEポートから送信します。言い換えれば、あて先/送信元MACアドレスが同じであればキーも同じになり、同じGEポートから送信されることになります。ここがこの問題の解答を考えるポイントです。

TENW-H17-PM1-19.jpg

ここで、リンクアグリゲーションの部分を通るルータAとルータB間の接続を見てみます。問題文には明示的に書いていませんが、VLANは設定されていなくてルータAとルータBは1サブネットになっているでしょう。
ルータAからルータBのイーサネットフレームを考えると、ルータAがIPパケットをルーティングしてルータBにパケットを転送すると、レイヤ2のイーサネットフレームが書き換えられて、

あて先MACアドレス:ルータBのMACアドレス
送信元MACアドレス:ルータAのMACアドレス

になります。
IPパケットのあて先IPアドレスや送信元IPアドレスに関係なく、イーサネットフレームのアドレス情報は上記のようになってしまうため、リンクアグリゲーションの部分でのキーがすべて同じです。そのため、適切な負荷分散を行うことができなくなります。

TENW-H17-PM1-20.jpg

適切な負荷分散を行うためには、ルータAとルータB間で同じ組み合わせになってしまうMACアドレスでキーを計算してはいけません。組み合わせが異なるIPアドレスで負荷分散を行うキーを計算するように設定します。

(3)
光ファイバや光インタフェースのUDLD(Uni Directional Link Detection)についての問題です。この言葉自体を知っておかないと問題ができないわけではありません。ただ、ちょっと難しい問題でしょう。

まず、前提としてイーサネットでは全二重通信が当たり前だと言うことです。送信と受信を同時に行う全二重通信を行うためには、送信用と受信用の回路がそれぞれ必要です。光ファイバケーブルも実際には2本1組で光インタフェースの受信回路と送信回路に接続します。

TENW-H17-PM1-21.jpg

本来、送信・受信が同時に行える全二重通信のはずが、光インタフェースの片方の回路だけが障害が起こったり光ファイバの1本だけが切れてしまったりして単方向(Uni Direction)になってしまうとさまざまな問題が発生します。スイッチの環境では、スパニングツリーループが発生する可能性が出てきます。
スパニングツリーループが発生すると、ネットワーク全体に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。
そこで、UDLDの機能を利用すると、光インタフェースの送信回路あるいは受信回路の障害や光ファイバの1本の障害を検出して、インタフェースを無効化します。それにより意図しないスパニングツリーループなどを防止して、障害がより広い範囲に影響を及ぼすことを回避することができます。
問題は検出できる障害の種類を聞いているので、

  • GEポートの送信側の故障
  • GEポートの受信側の故障
  • 1本の光ファイバの障害

のうち、2つを解答すればいいでしょう。

TENW-H17-PM1-22.jpg

【参考URL】

written by Gene


解説はいかがでしたか?Geneが作った最新版H17-H19年度テクニカルエンジニア(NW)午後問題解説のご購入は、こちらをクリック!