日経コミュニケーション 2004.9.15 『企業を変えた最新ネット 石川島播磨重工業』 by BOSE

石川島播磨重工業(IHI)は、今年の12月から無線IP電話1000台を順次導入するそうです。

無線IP電話とはすごいですね。通常のIPセントレックスでも導入しているのはまだ一部のユーザというイメージがありますが、それを無線LANでやってしまおうというんだから思い切ったものです。

IHIの各工場ではこれまで内線電話を使用するために、一旦事務所にもどる必要があったそうです。当然現場同士の作業では、携帯電話やPHSを使わざるを得なくなりますね。

そういった経緯があり、構内PHSのニーズが高まってきたのですが、工場内にはすでに無線LANが構築済みであったため、構内PHSを構築した場合二重投資となってしまいます。よって既存の無線LANインフラを生かして、無線IPを導入しよう!、という考えに到ったわけです。

なるほど、確かに考え方は正しいのかもしれませんが、実績もほとんど無いであろう無線IPを導入しようとの決定は、勇気ある決断ですね。

データと音声ネットワークを統合する場合、音声品質確保のために、QoSの設計がひとつのポイントになると思います。通常は音声パケットが廃棄されたりジッタ(遅延の揺らぎ)が大きくならないように、優先制御等の処理をしているはずです。ところが無線LANの場合はいったいどういう考え方で設計するんでしょうか?干渉とか減衰とかハンドオーバーとか、無線ならではの事情も考慮する必要があります。有線に比べて音声品質確保が難しいのは間違いありません。

IHIでは音声品質確保のために次のような対策をとったそうです。

1.無線区間で音声トラフィックをデータ通信トラフィックより優先させる
2.無線APへの同時接続台数を約8台に制限する
3.端末から複数のAPに接続できるよう、APのカバーエリアを密にする

1.は無線LANで優先制御を実現する仕様がIEEE802.11eとして標準化予定だそうで、その技術を先取りして採用したようです。無線LANの優先制御とはいったいどういうものか気になりますね。無線LANは最大54Mb/sなんていわれていますが、アクセスポイント(AP)に接続したすべての端末でその帯域を共有するため、有線LANのように、すべての端末に同じ速度があたえられるわけではありません。またCSMA/CAを使用しているため、データを送信しようとした端末は他の端末がデータを送信している場合には、ランダム時間待った後データを送信することになります。つまり無線のAPがリピータハブと同じだというイメージを持つと分かりやすいと思います。当然帯域は他ユーザの利用の影響を受けやすいし、ランダム時間待つということは、ネットワーク遅延やジッタは確実に大きくなるでしょう。ホントに有効なQoSができるんだろうか?

これまでは無線LANといえば、

・セキュリティ
・品質

が導入の際の大きなネックになっていたと思いますが、セキュリティについてはWPAを採用し運用を間違わなければ解決されたといっていいでしょう。あとは品質、QoS技術が確立されてくれば無線LANがさらに普及するのかもしれません。

IEEE802.11eが本当に「使える」技術なのであれば、無線LANのネックがかなりクリアされることになり、一気に普及するきっかけになるかもしれません。

あと疑問に思ったのは、なんで機器はALL CISCOで固めているんだろう?ということです。CISCOの機器は高くて、IP電話機だったら通常の倍くらいしそうなイメージがあります。シスコを選定した理由も少し述べられてますが、どうも理由が後付けのような印象を受けます。無線IP電話の提案をできるベンダは今はシスコ以外に無いんでしょうか?それにやっぱネームバリューもあるのかな?

無線IP電話の導入を決定したIHIは思い切ったもんだと思いますが、きっと稼動後はいろいろと問題が出てくるんでしょう。今後は無線IPの問題や解決方法などの導入事例もみてみたいですね。

by BOSE
☆自己投資のための読書

※BOSEさん、ありがとうございます。無線IP電話の帯域についての話がこないだ日経IT Proに載っていました。

「無線LANを流れるIP電話のトラフィックを検証した」

IHIの無線IP電話の導入はとても興味深いですね。これからの展開を楽しみにしたいです。(Gene)

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