トランクリンクってなに?

複数のスイッチをまたがったVLANを作りたい!

これまでのお話は、1つのスイッチでVLANを作った時の仕組みと動作についてのものでした。では、複数のスイッチにまたがったVLANはどのように考えられるのでしょう?
レイアウトの都合上、オフィスの異なる階に同じ部署が入居しているときなど複数のレイヤ2スイッチをまたがってVLANを構成したいというケースも考えられます。たとえば、次の図のようにフロアが違うAとC、BとDを同じVLANにしたいというケースです。

このとき問題になってくるのは、

「スイッチ1とスイッチ2をどのように接続すればいいのか?」

ということです。
一番簡単に思いつくのは、スイッチ1とスイッチ2にそれぞれひとつずつ赤VLAN用のポートと青VLAN用のポートを設定してそれぞれケーブルで結ぶ方法です。

しかし、この方法は拡張性がなく管理上の効率がよくありません。たとえば、新しくVLANを作った場合そのVLANを通すためにまた新しくケーブルをひかなくてはいけません。このようなフロア間を結ぶ建物の縦系のケーブルを新たに引くには、配線工事が必要となり、簡単には行うことができずにコストもかかります。また、VLANが増えれば増えるほど、スイッチ間を接続するための各VLAN用のポートが必要になるわけですから、スイッチのポートの利用効率も悪くなります。

このような効率の悪い構成を、なんとかして、スイッチ間を1本のケーブルで接続したいというときに「トランクリンク」を利用します。

トランクリンクとは?

トランクリンクとは、

「複数のVLANのトラフィックを転送することができる」

ポートです。

トランクリンク上を流れるフレームは、どのVLANのトラフィックであるか識別するための情報が付加されています。さきほどのネットワーク構成をトランクリンクに変更したケースを考えてみましょう。
スイッチ間を接続するポートをトランクリンクとして設定します。特殊なケーブルが必要だと思われるかもしれません。しかし、トランクリンク間を接続するケーブルは、特別なケーブルが必要ではなく、たとえば、100BASE-TXならカテゴリ5UTPケーブルを利用します。この場合、スイッチ同士の接続ですから、クロスケーブルを利用することになります。

さて、トランクリンクによって、スイッチをまたがったVLANを実現することができる様子を見ていきましょう。
Aからなにかフレームが送信されるとスイッチ1からトランクリンクを通ってスイッチ2に送られるときに、赤VLANのフレームであることを識別するためのVLAN識別情報が付加されます。
スイッチ2はこのフレームを受け取ると、VLAN識別情報から赤VLANのフレームであることがわかるので、付加された識別情報を取り除いて、赤VLANのポートにだけ転送します。このポートへの転送は、MACアドレステーブルを参照して該当のポートにだけ転送します。もしも、ブロードキャストやマルチキャスト、Unknownユニキャストの場合には、同じVLANのポートにフラッディングされます。青VLANのコンピュータがフレームを送信するときも同様です。

トランクリンクを通過するときのVLAN識別情報を付加するために「IEEE802.1Q」という標準規格とシスコ独自規格の「ISL(Inter Switch Link)」などがあります。スイッチでこれらの規格をサポートしていれば、複数のスイッチをまたがったVLANを効率よく構成することが可能です。

なお、トランクリンクは複数のVLANのトラフィックを運ぶわけですから、当然トラフィックが集中します。そのため、トランクリンクの設定を行うためには、100Mbps以上の速度をサポートしている必要があります。
また、トランクリンクは標準でスイッチに存在するすべてのVLANトラフィックを転送します。つまり、トランクリンクは、スイッチ上のすべてのVLANに所属しているとも考えることができます。すべてのVLANトラフィックを転送するとムダが多くなることがあるので、設定によってトランクリンク上で転送するVLANを制限することも可能です。

次回以降、IEEE802.1QとISLについて解説します。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA