NETWORK WORLD 2005.10 『無線LAN トラブル克服のケーススタディ P42~55』 by Gene

ケーブルが不要で、すっきりとネットワークを構築できる無線LAN。セキュリティ上の脆弱性の問題も、クリアになって多くの企業で導入されるようになっています。
個人向けのノートパソコンにもたいてい無線LANカードが搭載されているようになっているので、企業のネットワークだけでなく、家庭内のネットワークでも無線LANは多く利用されています。

無線LANは非常に便利なんですが、「急につながらなくなった」とか「速度が遅い」などのトラブルも多いと思います。今回のNETWORK WORLDの記事は、無線LANの運用中に起こりやすい代表的なトラブルを3つ取り上げて、ケーススタディとして、原因とその対応をまとめているものです。

トラブルのケーススタディは、

Case1:一部のエリアのみ通信状態が著しく悪い!
Case2:無線LANアナライザで検出できない不正AP!
Case3:無線IP電話の実証試験でわかった新事実!

の3つです。

無線IP電話は、来年あたりかなり広まっていくんじゃないかなと予想しています。無線IP電話を一言でいうと、「VoIPパケットを無線LANで送信する」んですけど、音声品質を確保するためにはかなりのチャレンジです。NTTドコモのFOMAと無線LANのデュアル端末を利用したPASSAGE DUPLE(パッセージ・デュプレ)のシステムも無線LAN区間での音声品質の確保にはかなり苦労したようです。

NTTドコモ PASSAGE DUPLE

これからの無線IP電話の普及に向けて、トラブルのケーススタディには興味があるので、Case3を詳しくみてみます。

Case3は、医療機器メーカーC社が無線IP電話を導入しVoWLAN(Voice over Wireless LAN)を構築することになっています。VoWLANは、もっときちんと言うと、Voice over IP over Wireless LANですね。まず、評価試験について書かれています。IEEE802.11bの無線LANアクセスポイント(AP)1台に対してで同時に通話できる無線IP電話の台数を調べています。
ロングプリアンブル、G.711、パケット送出感覚20ミリ秒、ジッター吸収バッファを40ミリ秒の設定で、7台目の通話を開始したところで音飛びが発生します。そして、10台ではジッターがひどくなり通話に支障が出るようになります。

APをなるべく少なくして、1台のAPでたくさんの無線IP電話を音質を保ってサポートするためのチューニングとして、次の4つがあげられています。

  • ロングプリアンブルからショートプリアンブルへの変更
  • パケット送出間隔の拡大
  • ジッター吸収バッファの拡大
  • スイッチのQoS機能の利用

これらのチューニングの方法は、実際に無線IP電話導入のときに、使えそうなものばかりですね。誌面には、チューニングに伴って、管理ツール上の変化が画面ショットでわかるようになっているのがいいですね。チューニングのポイントとして、

VoIPのチューニング経験が豊富な谷川は、MOS値R値だけで品質を評価するのではなく、ジッターやパケット損失、固定遅延など測定によって得られた要素を分析して音声品質評価を行うようアドバイスした

とあります。順番としては、ジッターや、パケット損失、遅延をきちんと評価した上で、MOS値やR値の評価を行うことになると思うんですが、総合的な音質の評価がチューニングの際の大事なポイントですね。

また、電波の特性上のトラブルについても触れられています。人体が電波を吸収してしまうため、机の上などにAPを設置すると、人がその前を通るごとに、電波が不安定になってしまいます。APは、天井や柱など人間が電波をさえぎりにくいところに設置する必要があります。
ただ、これでも、一部、電波が不安定になってしまうこともあるそうです。金属は電波を反射するので、柱の内部の金属に電波が反射して、電波が不安定になることもあるので、要注意です。

さらに、無線IP電話の省電力モードに関するトラブルについても記述されていました。ドコモのPASSAGE DUPLEは、N900iLの省電力モードの機能で、音声品質の確保が難しかったという話を聞いたことがあります。

無線IP電話のバッテリーは、通常の携帯電話に比べると、持つ時間が短いのが現状です。バッテリーの時間を延ばすために、省電力モード機能を利用すると、音声品質が悪くなる可能性があります。バッテリーの持続時間と音声品質のトレードオフをきちんと考えないといけないということですね。

以上のように、無線IP電話を導入するうえで、トラブルのケーススタディを通じて、

  • 具体的なチューニングのパラメータ
  • AP設置時の注意
  • 省電力モードと音声品質のトレードオフ

を理解できるようになっています。これから、無線IP電話を導入する予定がある方にとって、非常に参考になる内容だと思います。

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