NETWORK WORLD 2005.11 『スイッチに10倍詳しくなる! P50~71』 by Gene

「スイッチに10倍詳しくなる!」というタイトル。内容をきちんと読むと、ちょっとこのタイトルは大げさかなぁって気もしますが、5章構成でスイッチについて解説しています。

第1章:L2中継とL3ルーティングによるパケット処理
第2章:目的や用途に応じて使い分けるVLAN
第3章:経路を冗長化するスパニングツリープロトコル
第4章:帯域拡張と冗長化を実現するリンクアグリゲーション
第5章:ベンダーが独自提供するL2冗長化機能

この5章の中で、ぼくが勉強になるなぁって思ったのは、第2章と第3章、第5章ですね。

第2章では、VLANの基本的なことが簡潔にまとまっています。VLANのそもそもの目的から、複数のスイッチにまたがったVLANを作るためのタグVLANという基礎から始まっています。
そして、FTTHサービスなんかでISPが利用するプライベートVLANや、ダイナミックVLAN、検疫ネットワークで利用する認証VLANや広域Ethernetの網で必要なVLANトンネリングなどの応用的な使い方まであってよくまとまっています。

第3章では、スパニングツリーの細かい動作まで解説されています。基本的なスパニングツリーの動きはこれで十分なぐらいです。そして、通常のスパニングツリーから、PVST+やMSTもチラッと。PVST+なんて言ってるから、書いている人はシスコの人なのかもしれませんね。

第5章は、ベンダー独自の冗長化技術で、スイッチをリング状の構成することのメリットについて触れられています。この考え方は、大規模なネットワークを構築するときに重要です。

この3章分以外は、う~ん・・・って感じでした。
第1章が、一番基本的なスイッチの解説にあたる部分です。レイヤ2スイッチのところは、まぁいいとして、これを読んでレイヤ3スイッチのことがどれだけわかるのか疑問。
ぼくがレイヤ3スイッチを説明するときは、必ずレイヤ3スイッチ内のレイヤの対応関係を説明します。そうしないと、そもそもレイヤ3スイッチってどこにIPアドレスを設定すればいいのかわからないからです。レイヤ3スイッチにIPアドレスを設定して、はじめてルーティングって話になるはずなのに、この記事の説明では、IPアドレスのことすっとばしてます。
レイヤ3スイッチのルーティングを説明する図はありますが、どうやら物理ポートに直接IPアドレスを設定している構成です。物理ポートに直接IPアドレスを設定することもできるけど、内部に論理的なインタフェースを作って、そこにIPアドレスを設定することも多いはずです。

レイヤ3スイッチのIPアドレスをどのように考えるかを書かずに、レイヤ3スイッチの説明をするのは無理がありますね。BCMSN問題集で、レイヤ3スイッチのIPアドレスをどのように考えるかは、解説しているので、今度Webサイトの方にも載せておきます。

図の中にあるルーティングテーブルにも???って思うところが・・・なぜ、直接接続のネットワークアドレスのエントリに「エージング時間」なんかがあるのか・・・???たぶん、原稿を書くときに隣のARPテーブルをコピーして、そのまま残ってしまっているんだと思われる・・・また、ここにいきなり説明なしで「FDB」なんてテーブルも出てきているけど、これじゃあわからないですね。

第4章は、わずか1ページ。1ページだけだったら、わざわざ章に分ける必要があるのかなぁって感じがしました。リンクアグリゲーションって、スパニングツリーの応用としてとらえることもできるから、第3章に含めてしまえばいいのにっていう構成上の違和感を感じました。

書いている人が各章でバラバラなので、全体的にまとまりがない印象です。スイッチについてある程度の知識をちゃんと持っている人なら、読めば「なるほど」と思う面がたくさんあると思います。
でも、まったくの初心者の方が、この記事を読んでスイッチに詳しくなるって言うのは厳しいなぁっていうのが正直な感想です。

NETWORK WORLDの詳細、ご購読はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA