平成18年 テクニカルエンジニア(ネットワーク) 午後Ⅱ 問2 ネットワークの再構築 設問4


平成18年 テクニカルエンジニア(ネットワーク) 午後Ⅱ問題


解答

(1) SANに設置するディスク装置によってNASの機能を提供する
(2) サーバLANのL3-SWとL2-SWの間

解説

(1)

前にも述べたように、NASは簡単にいえばNFSやCIFSなどのファイル共有プロトコルを利用するファイル共有です。一方、SANはストレージデバイスを接続する専用ネットワークでサーバなどからローカルディスクと同じように利用できます。

NASゲートウェイはSANに接続されているので、NASゲートウェイにとってSAN上のディスク装置はローカルディスクとして利用できます。そのディスク領域をLAN上のクライアントに対してファイル共有プロトコルで共有しているのがNASゲートウェイです。
このような内容を40字以内でまとめればよいでしょう。

「ゲートウェイ」という言葉は、異なるプロトコルを相互変換する機器の総称でもあります。NASゲートウェイは、ファイル共有プロトコルとSANで利用するファイバチャネルやiSCSIとの相互変換を行う機器とも考えられます。

(2)

問題文の図3のネットワーク構成を見ると、サーバLAN内もL2-SWとL3-SWがループ上に接続されているので、スパニングツリーでの冗長化を行っていることがわかります(おそらく各サーバやNASゲートウェイに対してVRRPでデフォルトゲートウェイの冗長化も行っているでしょう。ただ、この問題ではVRRPまでは考慮していないみたいです)。
すると、クライアントLANでのスパニングツリーでの経路と同じように、サーバLANでのスパニングツリーの経路を考える必要があります。
サーバLAN内のL2-SWとL3-SW間の経路に障害が発生した場合、L3-SW間の経路が代替経路となることがあります。1Gbpsに対して100Mbpsでは心許ないので、L3-SW間も1Gbpsにした方がよいでしょう。

以降は余談です。
L3-SW1とL3-SW2の間が100Mbspの場合、スパニングツリーの構成と障害時の経路の切り替わりはちょっと複雑です。そのことについて、考えておきます。
サーバLAN内のL2-SWとL3-SW間のスパニングツリーの構成を考えると、次の図のようになります。

H18TENW_38.png
図 38 正常時のサーバLANのスパニングツリー構成

※ 説明の都合上、L3-SW2にポート番号をつけています。
※ L3-SW1とルートブリッジ、L3-SW2をセカンダリルートブリッジと仮定しています。また、スパニングツリーコストはデフォルトの値であると仮定しています。

L3-SW1とL3-SW2の間が100Mbpsなので、L3-SW2のルートポートが見た目のL3-SW1までの最短経路と異なります。100Mbspのスパニングツリーコストは19、1Gbpsのスパニングツリーコストは4です。そのため、L3-SW2のポート1よりもポート2またはポート3の方がルートブリッジまでの累積コスト(ルートパスコスト)が小さくなります。

ポート1のルートパスコスト=19
ポート2、ポート3のルートパスコスト=8

ルートパスコストが同じなら、ポート番号が小さい方が優先されるのでL3-SW2のルートポートはポート2です。L2-SWBとL3-SW2の間のリンクでは、L2-SWBのルートパスコストの方が小さいのでL3-SW2のポート3が非指定ポートとなりブロックされます。また、L3-SW2ポート1も非指定ポートとなりブロックされます。

次に、L2-SWAとL3-SW1間のリンクがダウンした場合のスパニングツリーの構成を考えます。

H18TENW_39.png
図 39 L2-SW1とL3-SW1間の障害時のスパニングツリー構成

L3-SW2のポート2がルートポートから指定ポートに変わります。そして、ルートポートはポート3になります。その結果、部門サーバからのパケットは、

L2-SWA→L3-SW2→L2-SWB→L3-SW1

という経路になります。

※ 障害によってVRRPマスタルータの変更はないものとしています。

このように、L2-SWとL3-SW間の障害が一ヶ所だけなら、実はL3-SW間の経路は通りません。L2-SWAとL3-SW1間に加えて、L2-SWBとL3-SW2間も障害が発生すると、L3-SW間の経路を通るようになります。出題者はここまでは考えていないような気もしますが・・・また、VRRPマスタルータの変更はないものとして考えていますが、本当はスパニングツリーの構成変更に応じて、VRRPマスタルータが切り替わるようにした方が効率的なルーティングができます。L3-SW1とL2-SWAの間に障害が発生したら、L3-SW2がVRRPマスタルータになるようにすれば、効率的なルーティングが可能です。

H18TENW_40.png
図 40 スパニングツリーの構成変更によってVRRPマスタを切り替える

※ スパニングツリーに関する問題は、時々出題されていますが、きちんと考えるには情報が足りずに曖昧です。そして、何となく現実的ではない構成ばっかり・・・

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