平成16年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅰ 問1設問2解答と解説

目次

解答

(1) 【a】 0
(2) ブロードキャストパケットがルータを越えられないから(25字)
(3) サブネットを分割し拡張用のアドレスを確保できるから(25字)

解説

(1)
IPアドレス、サブネットマスクに関する正確な知識が問われる問題です。ネットワークエンジニアとしては基礎知識なので、ここも確実に理解しておきましょう。
問題文の以下の記述が解答のヒントです。

ネットワークアドレスについては、先頭から2バイト目を本社や拠点の各場所に対応させて割当てを行い、サブネットマスクについては、255.255.【a】.0を通信事業者に申請しなさい。

2バイト目で各拠点を区別するということは、3、4バイト目はその拠点内で自由に使用できるようにアドレッシングすると考えられます。この考え方で割り当てたネットワークアドレスは以下のようになります。

本社  10.1.0.0 /16
支社  10.2.0.0 /16
営業所 10.3.0.0 /16
工場  10.4.0.0 /16

このとき3、4バイト目を拠点内で自由に使用できるようにするためには、通信事業者に申請するサブネットマスクは16ビット長(255.255.0.0)になります。これをもし24ビット長(255.255.255.0)にしてしまうと、3バイト目が「0」で固定されてしまうため、自由に拡張することができません。

(2)
DHCPはブロードキャストパケットを使用しているため、同一ブロードキャストドメイン内の端末にしか、IPアドレスを割り当てることはできません。よってブロードキャストドメインを越えてDHCPを使用したいときは、それぞれのブロードキャストドメインに別々にDHCPサーバを構築するか、またはDHCPリレーエージェントを構築することになります。
基本的なDHCPの動作は以下のようになります。

H16A1-1-2pic1.JPG

ネットワークに接続した端末は、DHCPサーバのIPアドレスを知らないため、ブロードキャストパケットでDHCPサーバに問い合わせをおこないます。一方DHCPサーバはPCのMACアドレスが分かるため、そのMACアドレスに対しユニキャストでパケットを送信します。

PCとDHCPサーバの間にルータが存在する場合は、DHCP DiscoverがDHCPサーバまで到達しないことになります。これではアドレスを割り振ることができません。

こういった問題は、DHCPリレーエージェント機能を使用することで解決することができます。DHCPリレーエージェント機能はDHCP Discoverなどのブロードキャストパケットをユニキャストパケットで中継する機能で、ルータを越えてのIPアドレス割り当てを可能にするものです。DHCPリレーエージェントを使用した場合の動作は以下のようになります。

H16A1-1-2pic2.JPG

このDHCPの動作を理解していれば、解答の鍵は「ブロードキャストパケット」であるとわかりますよね。「ブロードキャストパケット」という言葉を使って、解答を25字以内でまとめると

ブロードキャストパケットがルータを越えられないから(25字)

となります。

(3)
IP-VPNを使用する場合、各拠点のネットワークアドレスを事前に通信事業者に申請する必要があります。通信事業者は申請されたネットワーク情報を元に、網内のルーティングを設定するからです。

まずはU君の案を考えてみましょう。本社に割り当てられたセグメントは10.1.1.0/24なので、これを通信事業者に申請することになります。申請された情報はIP-VPN網内にルーティング情報として登録されるため、宛先が10.1.1.0/24であるIPパケットはIP-VPN内で本社にルーティングされることになります。もし本社に別の24ビット長のセグメントを追加したい場合は、再度通信事業者に追加するネットワークアドレスを申請する必要があります。

一方T氏の案の通り10.1.0.0/16で申請した場合、本社で使用できるIPアドレス空間は10.1.0.0~10.1.255.255と広大なものになります。24ビット長のセグメントに分割しても、255個までは拡張可能です。通信事業者は宛先が10.1.0.0/16であるパケットはすべて本社にルーティングされるため、この範囲内であれば、通信事業者に新規に申請することなく自由にセグメントを拡張できるというわけです。T氏が「ネットワークの拡張を考慮すれば、この方が君の案よりも良い」と言っているのは、こういった理由からです。

U君の案

  • 通信事業者に申請した本社のネットワークアドレス=10.1.1.0/24 
  • 本社に/24のネットワークを追加したい → 新規に申請が必要

T氏の案

  • 通信事業者に申請した本社のネットワークアドレス=10.1.0.0/16 
  • 本社に/24のネットワークを追加したい → 申請した範囲内で自由に拡張が可能

よってT氏の案が優れている理由を25字以内でまとめると

サブネットを分割し拡張用のアドレスを確保できるから(25字)

となります。


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