平成16年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅱ 問1設問3解答と解説

目次

解答

(1)コ. RTO
サ. RPO
シ. 24

(2)サーバ4、ルータ1、ルータ51、ルータ52、サーバ50

解説

(1)
企業におけるITの位置付けがますます重要になっている現在では、コンピュータシステムやストレージに保管されたデータの消滅は、重要な経営資源の損失を意味します。そのダメージは計り知れず、売り上げやブランドイメージの低下だけでなく、企業存続の危機にもなりかねない問題です。そういったことを考慮し、単純なハードウェア、ソフトウェアの故障対策だけでなく、自然災害、テロなど、最悪の事態まで想定してデータの保管やバックアップシステムの構築等を行うことを、ディザスタリカバリと言います。

災害発生時ダウンタイムが無く現状のシステムが引きつがれれば1番よいのですが、現実的には難しく、リカバリプランを策定する際には「いつまでに」「いつのデータを」復旧をするかを事前に考えておく必要があります。

この「いつまでに」「いつのデータを」のことを、それぞれ「RTO」「RPO」と読んでいます。

RTO(Recovery Time Objective)
災害が発生してからシステムが再開するまでに所要する時間です。
(いつまでにシステムを復旧するか?)

RPO(Recovery Point Objective)
災害が発生してから、どこまで直近のデータを保護する必要があるかという時間です。
(いつの時点のデータを復旧させるか)

例えば1週間に1度のテープ搬送によるデータバックアップをしていた場合、災害発生時は最大1週間分のデータが消滅してしまいます(RPO=1週間)。一方テープ搬送期間を1日1回にすれば、災害発生時のデータ消滅は最大24時間まで短縮できます(RPO=24時間)。もちろんネットワーク経由でレプリケーション等の技術を使用すれば、さらにRPOを短縮することは可能ですが、大量のトラフィックが流れるため広帯域な回線が必要になるでしょう。

では問題の【コ】【サ】を埋めるためのキーワードを問題文から抜け出してみました。

【コ】
業務システムは【コ】が比較的緩やかなので、災害発生時に利用するサーバを、通常時には別の用途に利用しても問題ない。
グループウェアシステムは【コ】が比較的厳しいので、そのような運用が可能かどうかを、システム切り替え手順の検討の中で確認する必要がある。
 →システム復旧にかかる時間に関する記述

【サ】
業務システムの【サ】を満たすためには、システムセンタから研修センタに、データベース更新用のデータを数分~数十分間隔で転送する必要がある。
一方グループウェアの【サ】を満たすためには、日次のデータ同期運用を行えばよい。
 →いつの時点のデータを復旧させるかに関する記述

よって【コ】は「RTO」、【サ】が「RPO」になります。また、「RTO」「RPO」という言葉自体を知らなくても、同様の意味が記載されていれば、回答としてはよいと思います。

【シ】はグループウェアシステムのRPOを満たすために、トラックが到着するまでの時間を逆算して求めます。グループウェアのRPOは48時間です。(問題文の〔災害対策の検討〕で記載されています)
システムセンタとトラック便が同時に影響を受けることまで想定したディザスタリカバリプランなので頭の中がこんがらがりそうですが、図に描いて考えてみればはっきり答えが見えてきます。

バックアップ直前に災害が起こった場合、バックアップ直後に災害が起こった場合の2パタンを図にすると以下のとおりです。

H16A2-1-3pic1.JPG

24時間目と48時間目に取ったバックアップがRPOの範囲内になります。この時はトラックが約48時間以内に搬送できれば、最悪でも24時間目のデータがバックアップとして使用できます。(48時間目に取ったデータを搬送するトラックは被災してしまいますが。)

一方バックアップ直後に災害が発生した場合は次のようになります。

H16A2-1-3pic2.JPG

同様に24時間目と48時間目に取ったバックアップがRPOの範囲内になります。最悪でも24時間目のバックアップデータを使用するためには、トラックは約24時間以内に搬送しなければならないことがわかります。
よって、災害の発生するタイミングにかかわらず、常にRPOの48時間を守るためには、トラックは最長でも24時間以内に届けることが必要です。

(2)
これは問題文を読めば深く考えなくても答えられます。

ストレージ1に格納された更新データは、サーバ4によってサーバ50に転送される。転送された更新データは、サーバ50によってその都度、ストレージ51に反映される。

この流れに経由するルータ名、サーバ名を答えると以下のとおりになります。

(ストレージ1) ~ サーバ4 ~ ルータ1 ~ ルータ51 ~ ルータ52 ~ 
サーバ50 ~ (ストレージ51)


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