平成18年 テクニカルエンジニア(ネットワーク) 午後Ⅱ 問1 営業店支援システム 設問34


平成18年 テクニカルエンジニア(ネットワーク) 午後Ⅱ問題


解答

(1) d:無  e:1  f:有  g:0.2
(2) 非圧縮処理と圧縮処理を切り替えられる機能
(3) 電話の着信先を切り替えられる機能
(4) 公衆電話網経由で営業店に転送する
(5) 営業店ごとのキャプチャ装置の設置が不要である

解説

(1)

まずは、簡単に集中受付方式と営業店受付方式の簡単な仕組みについて、問題文の記述をベースに考えてみます。
集中受付方式は、本社で一括して電話を受けます。おそらく問い合わせ先の電話番号を本社センタのVoIP-GWの電話番号のみ公開しているのでしょう。本社のVoIP-GWが外線を着信して、はじめにIVRによる自動音声応答を行います。そして、必要ならば営業店に電話を転送する仕組みです。IVR応答と営業員応答の通信フローを考えると次の図のようになるでしょう。

 

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図 25 集中受付方式の通信フロー

営業店受付方式では、各営業店のVoIP-GWが外線を着信します。おそらく、顧客の地域ごとに問い合わせ先電話番号を公開しているのでしょう。着信した外線は、IVR応答のため広域イーサ網を経由して本社のIVRへ転送されます。営業員の対応が必要な場合は、その営業店のIP電話へ電話を転送します。営業店受付方式のIVR応答と営業員応答の通信フローは次の図のようになるでしょう。

 

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図 26 営業店受付方式の通信フロー

※ 本社受付方式、営業店受付方式ともにシグナリング(呼制御)の通信フローは割愛しています。

[d]

問題文に「音声応答システムは、株価情報や口座残高を合成音声で流したり、指定銘柄の音声認識を行ったりすることから、音質を良くするために、通常の8kビット/秒圧縮ではなく非圧縮で使用する必要がある」という記述があります。音声応答システム、つまりIVRの応答音声は圧縮処理を行わないことから空欄[d]は無です。

[e]

IVRのシステムは本社センタに設置されています。営業店で電話を受け付けた場合、すべて広域イーサ網を経由して本社に転送されます。したがって、広域イーサ網を経由する呼数の割合は1です。

[f]

通常の音声は8kビット/秒で圧縮するため、空欄[f]は有です。

[g]

問題文の「A社の調査結果では、顧客からの電話の8割は音声応答システムで対応可能であり、残りの2割は営業店での人による対応が必要な問い合わせであった」という記述があります。営業店での対応ということは、集中受付方式で広域イーサ網を通じて転送される呼です。その割合が2割なので、空欄[g]は0.2です。

(2)

IVR応答と営業員応答で音声圧縮の有無が異なります。IVR応答のときは無圧縮で、営業員応答のときは8kビット/秒に圧縮します。VoIP-GWは、このように電話の転送先に応じた音声圧縮(CODEC)の切り替えができなければいけません。

 

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図 27 VoIP-GWに必要な機能

(3)

集中受付方式は、外線電話を本社のVoIP-GWで一括して着信する構成です。本社のVoIP-GWで外線電話を着信できない場合、顧客からの電話を一切受けられなくなってしまいます。これを防止するために通信事業者のサービスを利用することを検討しているのがこの問題の趣旨です。

各営業店にも公衆電話網に接続されているVoIP-GWが設置されているので、本社のVoIP-GWで外線を着信できないときは、別のVoIP-GWで着信できるようにする機能があればよいです。

(4)

今度は、広域イーサ網の障害の時を考えている問題です。広域イーサ網に障害が発生すると、営業員への電話の転送ができなくなってしまいます。広域イーサ網がダウンしていても、公衆電話網で本社センタと営業店は相互接続されているので、公衆電話網経由で営業員へ電話を転送すれば、顧客の対応を継続することができます。

 

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図 28 広域イーサ網障害時の営業員への電話の転送

なお、このようなネットワークの状況に応じて、電話の転送先を制御する機能をCAC(Call Admission Control)と呼びます。CACの機能によってこの問題のように広域イーサ網の障害時だけでなく、広域イーサ網でRTPパケット用に十分な帯域を確保できないときなど、呼を迂回させることができます。

(5)

A社では顧客と営業員の会話をすべて録音することにしています。集中受付方式であれば、顧客と営業員の会話のRTPパケットはすべて本社VoIP-GWを経由します。そのため、キャプチャ装置は本社にのみ設置すればよいです。一方、営業店受付方式の場合、顧客と営業員の会話のRTPパケットは各営業店のVoIP-GWを経由します。そのため、各営業店にもキャプチャ装置を設置しなければいけません。

通話録音システムの導入の容易さから考えると、営業店ごとにキャプチャ装置が必要となる営業店受付方式はあまり好ましくありません。集中受付方式であればキャプチャ装置を本社のみに設置すればよいので、通話録音システムを導入しやすくなります。

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