平成18年 テクニカルエンジニア(ネットワーク) 午後Ⅰ 問2 ネットワークシステムの改善 設問1


平成18年 テクニカルエンジニア(ネットワーク) 午後Ⅰ問題


解答

(1) a:CSMA/CA  b:11
(2) データの衝突を回避するため
(3) 192

解説

無線LANの仕組みについての問題です。

(1)

[a]

無線LANのアクセス制御方式はCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access / Collision Avoidance)です。CSMA/CAの仕組みは時々出題されているので、動作の仕組みについて解説します。

CSMA/CAの仕組みは、CSMA/CDとよく似ています。そのプロセスは次の通りです。

  1. キャリアセンス
    データを送信しようとするとき、電波の周波数帯(チャネル)が利用されているかどうかを確認します
    電波が未使用:アイドル状態
    電波が使用中:ビジー状態
    他の機器が電波を利用している(ビジー状態)場合は待機します
    ビジー状態からアイドル状態に移行したあと、さらにIFS(Inter Frame Space)時間待機します。
  2. ランダム時間待機(衝突の回避)
    キャリアセンスによって電波が未使用だと判断しても、すぐにはデータを送信しません。
    衝突を回避するために、さらにランダム時間(バックオフ時間)待機してキャリアセンスを続けます。
  3.  データの送信開始
    バックオフ時間待機して、アイドル状態であることを確認してからデータを送信します。
    IPなどのレイヤ3のデータにIEEE802.11のヘッダを付加し、さらにその前に物理層ヘッダを付加して転送します。
    物理層ヘッダ:PLCP(Physical Layer Convergence Protocol)プリアンプル+PLCPヘッダ

有線LANのCSMA/CDであれば、メディアがアイドル状態であればデータの送信を開始します。そのため、複数のホストがほぼ同じタイミングでデータを送信しようとすると、複数のホストがデータの送信を開始し衝突が発生します。もし、衝突が発生した場合、共有メディア上のすべてのホストがその衝突を検出できます。しかし、無線LANでは衝突の検出ができません。そこで、キャリアセンスを行ってアイドル状態と認識しても、さらにランダムなバックオフ時間待機することで、複数のホストの送信タイミングをずらして衝突が発生しないように制御しています。

ただし、無線LANクライアントの位置関係や電波の遮蔽物などがあれば、キャリアセンスによりビジー状態を検出できないことがあります。すると、このような衝突回避が機能せず、衝突が発生してデータが壊れてしまうことがあります。

※ 上記のようなCSMA/CAの衝突回避の制御を行いながらも衝突が発生してしまう問題を「隠れ端末問題」といいます。

さらに、無線LANの通信ではデータを受信したことを示す確認応答(ACK)を返します。ACKによって、無線LAN区間のデータ通信の信頼性を高めています。データを受信したら、次にそのデータに対するACKを返すために、ACKを送信するときのIFSは短いSIFS(Short IFS)になり、バックオフ時間はありません。

次の図は、CSMA/CAによるアクセス制御を示したものです。

H18TENW_08.png
図 8 CSMA/CAによるアクセス制御

上の図のようなCSMA/CAによるアクセス制御を見ると、実際にデータを送信している時間が少ないことに気がつくでしょう。CSMA/CAのアクセス制御は、衝突回避のためのバックオフ時間やACKによる確認応答などのオーバーヘッドが非常に大きくなっています。また、無線LANの制御を行うための物理層ヘッダもオーバーヘッドです。

[b]

IEEE802.11b規格の無線LANなので、最大の伝送速度は11Mbpsです。

(2)

(1)の解説でCSMA/CAの動作の仕組みについて触れていますが、キャリアセンス後のランダム時間の待機(バックオフ時間)は、衝突を回避するためです。
複数のノードがデータを送信するときに、ランダム時間の待機で送信するタイミングをずらすことでデータの衝突が発生しにくいように回避しています。

(3)

物理ヘッダの伝送速度は1Mbpsで固定されています。192ビットを1Mbpsで送信するためには、192μ秒かかります。

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