平成18年 テクニカルエンジニア(ネットワーク) 午後Ⅰ 問2 ネットワークシステムの改善 設問2
平成18年 テクニカルエンジニア(ネットワーク) 午後Ⅰ問題
目次
解答
(1) c:ルータ d:PC e:無線AP
(2) 1460
(3) ファイル転送のプロトコル自体のオーバーヘッドのため
(4) 2台の無線APの利用周波数が重複している
解説
(1)
IEEE802.11(無線LAN)のMACヘッダは、イーサネットと比べると複雑なフォーマットです。MACアドレスのフィールドが最大で4つあり、送信元MACアドレス、送信先MACアドレス以外にも経由するアクセスポイントのMACアドレスを指定することができます。
アドレスフィールドの使い方は、通信が行われる経路によって決まります。たとえば、この問題のように無線→有線の場合は、アドレス1にBSSID(無線LAN APのMACアドレス)、アドレス2に送信元MACアドレス、アドレス3に送信先MACアドレスを指定します。
この問題は、PCから別サブネット上のファイルサーバへの転送データを考えるので、送信先MACアドレス(アドレス3)にルータのMACアドレス、送信元MACアドレス(アドレス2)にPCのMACアドレスを指定します。そして、BSSID(アドレス1)には、無線APのMACアドレスを指定します。
※ アドレス4は有線→無線→有線のように無線でブリッジするときに指定します。
(2)
無線LANのMTUは2312バイトで有線LANのイーサネットよりも大きい値です。ただ、無線区間を最大MTUでデータを送信すると、有線区間で分割しなければいけなくなります。フレームの分割が発生しないようにするために、無線区間でもデータサイズを有線LANのMTUである1500バイトに合わせる必要があります。
データ部分には、IP/TCPヘッダ(合計40バイト)が含まれます。IP/TCPヘッダを除外した1460バイトをTCPのデータ長として設定すれば、最もスループットが大きくなります。
(3)
ファイル転送を行うプロトコル自体が何かは問題文に明示されていませんが、ファイル転送を行うには、転送するデータ以外にさまざまな制御をするためのオーバーヘッドが必要です。オーバーヘッドとして、付加するヘッダやデータの受信確認(ACK)などがあります。
こうしたオーバーヘッドが影響するので、実際のファイル転送のスループットは理論上の最大スループットよりは小さくなります。
(4)
問題文からスループットが低下するときの記述をみつけます。
しかし、C君の設定では二つの無線APが同時に通信を行うことができないので、無線LANのスループットは低下する可能性がある。
これは、明らかにチャネル(利用周波数)が重複しています。2台の無線APの設置間隔はわかりませんが、チャネルが重複している複数の無線APを設置すると、電波が干渉して無線の通信ができなくなってしまうことがあります。増設した無線APの利用周波数(チャネル)を規定値のままそのまま使ったともあるので、重複してしまったのでしょう。
簡単に、チャネルの設定の考え方についても解説します。
複数のアクセスポイントで無線LANネットワークを構築する場合は、チャネルの設定も考慮する必要があります。各無線LAN規格で利用する周波数帯はいくつかのチャネルから構成されています。無線LAN規格ごとのチャネルは次の表のようになります。
無線LAN規格 | チャネル | 干渉せずに利用できるチャネル数 |
---|---|---|
IEEE802.11b/g | 1~13 | 3つ |
IEEE802/11a | 36/40/44/48 (W52) 52/56/60/64 (W53) |
8つ |
隣接するアクセスポイントで同じチャネルを利用すると、電波干渉の恐れがあります。そのため、隣接するアクセスポイントでは、干渉しないチャネルを利用して無線LANネットワークを構築します。
アクセスポイントからの電波が到達せず、無線LANでの通信ができない部分を「カバレッジホール」と言います。アクセスポイントの設置は、サイトサーベイという調査を行い、カバレッジホールや電波の干渉がないようにセルの範囲・チャネル設定を考慮して設置する台数および場所を決定します。