日経コミュニケーション 2005.4.1 『無線ブロードバンドが「速い、安い、どこでも使える」』 by BOSE

YOZANというPHS事業を展開する会社が、「年内にも通信速度が数十Mb/sの無線
サービスを月3000円で開始する」と発表したようです。↓

http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NCC/NEWS/20050210/156018/

その高速無線通信を実現するのは、WiMAXという技術。半径数kmを1台の基地局
でカバーし、最大75Mb/sの通信を可能にするらしい。WiMAXとは、簡単に言う
と無線LANの出力電力をあげて、電波の届く距離を伸ばした技術らしい。
半径数kmを75Mb/sでカバーする??ホントにそんなことできるならすごいイン
パクトがありそうです。

3G携帯のデータ通信もかなりの高速化が予定されているようですが、現在のサ
ービスはすべて従量課金です。(携帯単体のインターネット接続は定額もある
ようですが)3G携帯での定額料金が実現しない限り、現状では、魅力的な高速
の無線データ通信サービスは無い、というのがユーザの印象だと思います。そ
ういった意味で、YOZANのサービスは期待できそうです。WiMAXはまさに「速い
」「安い」を実現するものに思われます。

他にもWiMAXにとって追い風になりそうな情報があります。
無線LANの場合はWi-Fiアライアンスという団体が異ベンダー間の機器の相互接
続を検証しており、接続が確認できた機器は「Wi-Fi」マークがつけられて出
荷されます。WiMAXもそれに習い、「WiMAXフォーラム」という業界団体が接続
試験を行うようです。これで相互接続性が保障されます。

またインテルが開発したCentrinoで無線LANがノートPCに標準的に搭載される
ようになったのと同じように、「WiMAXも同様にノートPCに標準搭載する可能
性がある」とインテルもコメントしてます。

こういった記事を見ているといいこと尽くめのように思われるWiMAXですが、
もちろんデメリットもあります。

まず第一に、1台の無線局で大量の接続があると、スループットが低下します。
これはおそらく最大75Mb/sという帯域をユーザで共有するからでしょう。帯域
を共有するからスループットが落ちるというのは無線LANでも同じです。最大
54Mb/sの帯域はユーザで共有されます。しかも無線LANは半二重通信なので、
ユーザ単位の実効スループットは何分の1という数字になるのが普通です。
ベストエフォートサービスでは、サービススペック上の最大値と実効スループ
ットが大きくかけ離れる場合があるので注意が必要ですね。特にWiMAXは半径
数kmという広い範囲をカバーするため、ユーザで帯域がどのように割り当てら
れるのか気になるところです。ユーザを1000人接続した時にスループットが
1000分の1になってしまったら、1人あたりの帯域は75kb/sです。もはやブロー
ドバンドとはいえないでしょう。

第二に、ビル屋内では電波が受信しにくいということです。WiMAXは5Ghz帯な
どの高い周波数を利用しているからです。一般的に電磁波は周波数帯が高くな
るほど、透過性やまわり込みが無くなります。

このようなデメリットを考えると、大量のアクセスが見込まれる場所や、ビル
が密集する地域でWiMAXの品質を確保するのは難しいかもしれません。こうい
った場所では、基地局のカバーする範囲の狭い無線LANの方が向いているため、
記事ではWiMAXと無線LANは補完しあう存在だと考えているようです。

これまで屋外でのモバイル通信というと、携帯電話かPHSしかありませんでし
たが、面白いサービスが加わってきたなという感じです。WiMAXと無線LANが補
完しあって本当にどこでもブロードバンドが実現可能になってしまうと、いよ
いよユビキタスネットワークを実現するための強力なインフラの登場!という
存在になるかもしれません。

携帯電話やPHS、特に3G携帯は将来のデータ通信高速化の可能性をうたってい
るものの、一向に高速データ通信が実現していないという印象があります。そ
れに、技術的に高速な通信が実現できたところで、従量課金でやっているうち
は絶対に普及しないでしょう。携帯各社も速く高速データ通信を定額にしない
と、モバイル通信の主役を奪われてしまうかもしれませんね。

YOZANはフィールド試験で、VoIPの検証も実施するようです。固定電話のみな
らず、モバイルでもIP電話の波が押し寄せれば、これは携帯電話にとって脅威
になりそうです。

まあ現実的にWiMAXや無線LANのホットスポットがどこまで整備されて「使える
」ものになるかはまだまだ分かりませんが、面白いサービスがでてきたなとい
う印象です。これまでなかなか発展しなかった携帯電話と競い合って、どんど
んモバイル環境が整備されて行くのを期待してます。インフラが整えば、きっ
とユビキタスをキーワードにいろいろなアプリケーションのリリースラッシュ
が始まるんじゃないかな。

「自分にはモバイルなんて関係ないよ」と思っている人でも便利なものは普及
するはずです。無くても困らないはずの携帯電話も、いつの間にか生活必需品
になりました。
WiMAXを含めたモバイルの状況は、今後も興味を持って注目したいと思います。


by BOSE  ☆自己投資のための読書 ~知識を力にしよう~

 

※ぼくはいまモバイルでのインターネットアクセスは、ドコモのPHSを使っています。でも、ドコモがPHSサービスから撤退するそうで、どうしようかと思っていたところYOZANのサービスを聞いて、すごく興味がわきましたね。早く正式サービスを開始して欲しいです。(Gene)

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