日経コミュニケーション 2004.7.15 『早わかり講座 IPセントレックス・サービス 冗長化構成で障害発生に備える P142~143』 by BOSE
IPセントレックスサービスとは、ひとことで言うと「通信キャリアやインテグレータがネットワークを介してPBX機能を提供する電話サービス」です。ネットワークを介してPBX機能を提供するということは、ネットワークに対してはこれまで以上に高い信頼性が求められます。
たとえば
■ WANに障害があった場合
これまでは・・
WAN経由のデータ通信のみが影響を受けるだけ。電話での通信には支障がない。
↓↓↓ IPセントレックスの場合・・ ↓↓↓
ネットワークにデータと音声の両方が流れるため、WAN障害がデータ通信と電話の両方に影響が出る。「メールが使えないから電話で連絡取ろう」なんてことができないわけです。
■ PBX故障の場合
これまでは・・
PBXが拠点に分散されているため電話が使えないのは特定の拠点だけである。
↓↓↓ IPセントレックスの場合・・ ↓↓↓
IPセントレックス装置が故障すると、全拠点の電話通信に影響が出る。
以上のようにネットワークの信頼性がさらに重要であることがわかります。
今回の記事ではIPセントレックスを使用するうえでの冗長化を各要素ごとに分けて解説されています。ネットワークを要素に分割して、1つずつつぶしていくというこの考え方は、分かりやすくて効果的だなと思いました。
IPセントレックス・サービスは以下の3要素で構成され、その要素ごとに冗長化を考える必要があります。
IPセントレックス・サービスの構成要素
(1)データ・センターに設置されたIPセントレックス装置
(2)データ・センターや各拠点をつなぐIPネットワーク
(3)各拠点のLANやIP電話機
(1)はユーザにはどうしようもない部分ですが、これが落ちてしまうと電話全体に影響が出てしまうためサービス選定の際の1つのポイントになりそうですね。サーバ系の技術は私は素人ですが、やはり物理的に離れた拠点でバックアップができるんならそれにこしたことはないと思います。物理的に分散して冗長化が取られていれば、後で紹介されている「サバイバルサーバ」というものも必要ないんじゃないかな??
(2)のIPネットワークの冗長化についてはIPセントレックスに限った話ではありませんが、IPセントレックスを使用するとさらに高い信頼性が求められると思います。キャリア2重化を考える際は、キャリアネットワークが網とアクセス回線の2つの要素から構成されていることも考えたほうがいいでしょうね。例えばキャリアAを使用する場合でも、アクセス回線はNTT系と電力系とどちらでも使用できたりします。物理的なインフラが完全に分かれている組み合わせの例は、以下のようになるでしょう。
ネットワーク1 網=キャリアA アクセス回線=NTT系
ネットワーク2 網=キャリアB アクセス回線=電力系
そうは言ってもここまでやる必要があるかどうかは別問題で、コストの制限でここまでやってないユーザの方が多数なんじゃないでしょうか。でもWANのキャリア2重化の考え方として知っておいて損はないと思います。
(3)のLANについても主要機器は冗長化構成をとるべきと記載されています。LAN障害時の影響範囲は特定の拠点内にとどまるため、その拠点の重要度に応じて冗長化構成を拠点ごとに変えてもよいと思います。
そのほかIPセントレックスは110や119の緊急電話に発信できないため通常の加入電話も必要だと記載されています。これは必ず言われることなので、もうお約束みたいなもんですね。どっちみち加入電話を無くせないんであれば「IPセントレックスが使えない時は加入電話を使用する」と割り切ってしまってWANコストを削減するという考え方も「あり」なんじゃないかな。
記事を読んで思ったのですが、ネットワークにいろいろなアプリケーションが乗ってくるほどネットワークの信頼性がますます重要になってきますね。信頼性は求め続ければきりがないので、コストを考えどこかで折り合いをつける必要があるでしょう。その際「なんとなくこの程度にしておくか」ではなく、ネットワークを構成する要素、考えられる障害の想定をはっきりさせたうえで検討するのは分かりやすいし、効果的だと思いました。IPセントレックスに限らずネットワークの信頼性を考えるうえで今後の参考にしたいと思います。
※BOSEさん、ありがとうございます。最後のネットワークの信頼性に関しての考え方は、まったくの同意見です。ネットワークを設計するときに、どんなアプリケーションが存在し、どれぐらいのトラフィックが発生し、どのようなトラフィック特性なのかということをしっかりと考えて、どこまでの信頼性が必要とされるのかを見極めておく必要がありますね。(Gene)
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