平成17年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅰ問4

問4 ネットワーク間の接続に関する次の記述を読んで、設問 1~ 4に 答えよ。

A社とB社は、C県内で通信サービスを提供する通信事業者であり、A社はインターネット接続サービス用ネットワーくISP-Aを、B社はISP-Bを運用している。ISP-1~ ISP – 3 は全国規模のインターネット接続サービス用ネットワークであり、ISP – AはISP-1と接続し、ISP – BはISP‐2と接続 している。また、ISP- 1とISP‐2は、ともにISP-3と接続している。
このたび、A社とB社のISP事業の統合が決まり、ISP-AとISP-Bを接続して運用することになった。ISP-Aと ISP-Bを接続した後は、経費削減のために、ISP-BとISP‐2間の接続を廃止する。ただし、接続作業のための移行期間を設け、移行期間中は、ISP-Bと ISP-2を今までどおり接続しておく予定である。図に、移行期間中のネットワークの構成を示す。

〔ISP間の接続〕
ISP-Aと ISP- Bの接続のために、通信事業者から光ファイバを8本借用し、A社ビルとB社ビル間に光伝送路を開通させる。借用する光ファイバは、高速かつ長距離の伝送に適した【 ア 】 モードファィバである。この光ファイバは、【 イ 】 と呼ばれる中心部の直径が10μm以下と細く、光が伝わる経路 (モード)が一つなので、高速かつ長距離の伝送が可能である。この光ファイバに適応するギガビットイーサネットポート ( 以下、GEポートという )には、光レベル仕様の異なる幾つかの種類があるので、L2-SWのGEポートが光伝送路で使用できるかどうかを確認しておく。表に、L2‐SWのGEポートの光レベル仕様を示す。

L2-SWのGEポートで通信が保証されるために、光伝送路の減衰量 (単位 dB)は、送信レベルの最小値と受信レベルの最小値の差以下である必要があり、表から【 a 】
dBと求めることができる。通信事業者からは、光伝送路の減衰量は17dBであるという連絡があり、L2‐SWの メーカからは、3dBの余裕を見込む必要があると助言されている。したがって、減衰量と余裕の合計は20dBなので、L2‐SWの GEポートを光伝送路で使用しても、問題ないことが分かる。
L2-SW間は、四つのGEポートで接続し、合計4Gビット/秒 の通信容量を確保したい。そのため、当該 GEポートをグループ化して、負荷分散の機能を有効にする設定を行う。負荷分散は、送信フレーム内の二つのフィールドをキーにして、キーの異なるフレームを異なるGEポートから送信させる機能である。L2-SW間の通信容量を、できるだけ4Gビット/秒に近付けるためには、グループ化された各 GEポートから均等にフレームが送信されるように、キーにするフィールドを選択する必要がある。L2-SWのデフォルトのキー設定では、①送信元 MACアドレスとあて先MACアドレスのフィールドがキーに選択されるが、ここでは、送信元 IPアドレスとあて先IPアドレスがキーに選択されるように設定して、負荷分散がより適切に行われるようにする。
L2‐SW間 は、四つのGEポートで接続されるので、通信が切断される危険性は低いと考えられるが、L2‐SWのリンク障害通知機能を使用して信頼性をより高めることにする。② リンク障害通知機能は、L2‐SWのGEポートの受信側で故障を検知すると、同一GEポートの送信側から対向のL2-SWへ故障を通知し、対向のGEポートの送信側を停止状態にするように実装されている。

〔ISP間の経路制御〕
ISP‐Aと ISP- Bの割当てを受けているアドレス空間は、プレフィックス長で表すと、それぞれ17ビットと18ビットである。これらのアドレス空間には、アドレスクラスがクラス【 ウ 】 で、連続する複数個のネットワークアドレスが使用されている。
ISP- Aと ISP -Bは、経路制御プロトコルにRIPv2を使用しており、ISP-AとISP-Bの接続においてもRIPv2を使用することにした。RIPv2はRIPvlの拡張版で、経路選択のメトリックに、あて先ネットワークに到達するまでに通過するルータの数である 【 エ 】
を使用することや、ルータ間で、各ルータの保持する経路情報を、デフォルトで【 b 】
秒ごとに送信することは共通である。
RIPv2には経路集約の機能があり、経路集約するプレフィックス長はルータで設定できる。仮に、ルータAとルータBの経路制御において、24ビットのプレフィックス長で経路集約を行うように設定すると、ルータAと ルータBか ら対向のルータに送信される経路情報のエントリ数の合計は【 c 】 になる。また、経路集約するプレフイックス長を、ルータAでは17ビットに、ルータBでは18ビットに設定すると、それぞれのルータから対向のルータに送信される経路情報のエントリ数は1になる。

〔ISP -B~ISP-3間の通信経路の調整〕
A社ビルとB社ビルにおける、ISP -AとISP‐Bの接続作業が終了して、図のネットワーク構成で運用が開始された。接続作業の前後に、ISP-Bの運用管理者が、ISP‐3内の公開サーバからISP – B内のパソコンにファイル転送を行い、通信の確認をしたところ、接続作業前より転送速度が遅くなっていることに気付いた。ISP-3の加入者である社員の協力を得て、【 オ 】 コマンドを使って通信経路を調査したところ、接続作業前のISP‐BからISP‐3への通信経路は、往路がISP‐B→ISP‐2→ ISP-3であり、復路はその逆順であった。接続作業後は、往路は同一であるが、復路がISP‐3→ ISP‐1→ ISP‐A→ISP‐Bに変わったので、ISP-3とISP‐1間の回線の混雑が影響したと考えられる。復路が変わったのは、ISP-1がISP‐Bのネットワークの経路情報を、ISP-3に送信し始めたことが関係する。ISP‐Bの制御では、復路を接続作業前の状態に戻すことはできないので、B社 はISP-1の通信事業者に対応を申し入れた。
ISP-1~ISP-3のISP間の経路制御プロトコルには、BGPが使用されている。運用上、最も優先される経路選択のメトリックは、あて先ネットワークに到達するまでに通過したAS(Autonomous System)の 個数である。ASの個数が最も少ない通信経路が、最適な通信経路として選択される。ISP‐1~ISP‐3は、各ISPがそれぞれ一つのASである。ISP-1は、ISP‐AとISP‐Bの経路情報をルータ1で静的に設定し、ISP-1のASに 属する経路情報としてISP-3へ送信している。ISP‐2は、ISP-Bの経路情報をルータ2で静的に設定し、同様にISP-3へ送信している。
ISP-1の通信事業者は、③ ISP‐3へ送信する経路情報のメトリック値の変更を行い、B社の希望する通信経路になった。また、ISP-1とISP-3間の通信回線はISP-1が保有するが、ISP-1はこの通信回線を高速化する計画になっていたので、前倒しで実施した。
その後、ISP-1が変更した経路情報のメトリック値を元に戻し、通信に問題がないことを確認した後、ISP-Bと ISP-2間の接続を廃止した。

設問1 本文中の 【 ア 】 ~ 【 オ 】 に入れる適切な字句を答えよ。
設問2 〔ISP間の接続〕について、(1)~(3)に答えよ。
(1) 本文中の a に入れる適切な数値を答えよ。
(2) 本文中の下線①でのデフォルトのキー設定では、負荷分散が適切に行われない理由を、30字以内で述べよ。
(3) 本文中の下線②のリンク障害通知機能によって検出できる障害の内容を二つ挙げ、それぞれ15宇以内で述べよ。
設問3 〔ISP間の経路制御〕について、(1)、(2)に答えよ。

(1) 本文中の b 、 c 、に入れる適切な数値を答えよ。

(2) 通信経路数が増加したときに、経路集約を行わないことによる問題点を二つ挙げ、それぞれ20字以内で述べよ。
設問4 〔ISP – B ~ ISP‐3間 の通信経路の調整〕の本文中の下線③について、経路情報の変更対象となるあて先ネットワークを答えよ。また、メトリック値の変更の内容について、ASという宇句を用いて25字以内で述べよ。

この問題の解答と詳細解説はGene製作のテクニカルエンジニア(ネットワーク)平成15,16,17年度分
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詳細はこちら→http://www.n-study.com/library/2006/05/post.html

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