日経NETWORK 2006.8 『VRRPのしくみと運用方法について学ぶ』 by Gene

いつもこの連載は読むようにしていますが、毎回、「けっこう難しいことまで
やっているなぁ」って思っていました。今回もVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)
を扱っていて、なかなか難しい内容です。

VRRPの目的は、クライアントコンピュータに対するデフォルトゲートウェイの
二重化です。通常、クライアントコンピュータには、デフォルトゲートウェイ
はひとつしか設定しません。すると、デフォルトゲートウェイになりうるルー
タやレイヤ3スイッチを単純に複数台用意して二重化したとしても、クライア
ントコンピュータのデフォルトゲートウェイの設定が勝手に変わるわけじゃな
いので、障害が発生したときにうまく通信ができなくなってしまいます。
ゲートウェイとなるルータ/レイヤ3スイッチを二重化した上で、その切り替え
をクライアントコンピュータに対して透過的に行う仕組みが必要です。これを
実現するのが、今回、レビューで取り上げている記事で解説するVRRPです。

記事の冒頭部分で、まず、VRRPの簡単な解説があります。VRRPは「仮想IPアド
レス」を複数のルータ/レイヤ3スイッチで共有します。実際に仮想IPアドレス
に対するパケットをルーティングするルータを「マスター」、そして、マスタ
ーに障害が起こったときにマスターの役割を引き継ぐルータが「バックアップ」
です。クライアントコンピュータでは、仮想IPアドレスをデフォルトゲートウ
ェイに設定することで、マスターとバックアップの切り替えを透過的に行うこ
とができます。
また、仮想IPアドレスだけじゃなくて、実際にイーサネット上でマスタールー
タにきちんとフレームを転送するための仮想MACアドレスもあり、マスターが
ダウンすると仮想IPアドレスだけじゃなく、仮想MACアドレスも引き継ぎます。
仮想MACアドレスは「00-00-5e-00-01-[VRID]」という値に決まっています。VRID
は、設定で決める番号です。

実際にVRRPでバックアップルータがマスタールータの役割を引き継ぐ様子につ
いても触れています。マスタールータからのVRRP Advertisementが一定時間や
ってこなければバックアップルータはマスタールータの役割を引き継ぎます。

ただ、今回の解説では、よくわからないなぁっていうのが正直な感想です。物
理構成と論理構成がごちゃごちゃになってしまっているので、どのサブネット
に対してVRRPで冗長化するのかがとてもわかりにくいです。文章で説明しよう
としていますが、図をもっと使った方がいいでしょう。ぼくが解説を書くなら、
物理構成と論理構成の対応をもっと明確にしますね。
スパニングツリーとも絡めた話が出てきていますが、これもやっぱりわかりに
くいです。何度も構成図を見直してやっとスパニングツリーが必要になる箇所
がわかったくらいでした。
雑誌の連載なのでページ数のしばりが厳しいです。だから、なかなか図をたく
さん使って思うような解説ができないっていうのはなんとなく想像がつきます。
でも、たぶん日経NETWORKの読者さんは初心者の方がけっこう多いと思います。
まだあまりVLANについて、よく知らない初心者の方は何を言っているのかよく
わからない面が多々あるような気がしました。

VRRPはそれ単独で理解するだけでは不十分で、レイヤ2スイッチング、スパニ
ングツリー、VLAN、IPルーティングなどなどいろんな技術を総合的に理解して
おかないと難しいものです。それを前提知識なしで誰にでもわかるように解説
するのは、限られた誌面では限界があるなぁとつくづく思いました。

で、新しいコンテンツのネタを思いつきました。レイヤ2スイッチング、VLAN、
IPルーティングをベースとして、LANにおける冗長ネットワークについて徹底
的に解説するという内容です。ま、名づけて

「徹底解説 スイッチドLANの冗長化」

ってところでしょうか。

いま、考えている新しいコンテンツのネタとして、

・CCNA問題集
・IPマルチキャスト

があるんですけど、その次ぐらいに書いてみようかなぁと思いました。いつに
なるやら・・・がんばります。

新しいコンテンツのネタを思いついたので、ぼくにとっては、その意味で読ん
でよかった記事でした。VRRPの概要を知りたいって方は、全部読むのはとても
難しいと思いますので、前半部分だけをさらっと読めばある程度の概要はつか
めます。テクニカルエンジニア(ネットワーク)に出てくる問題ぐらいだったら、
それで十分かな。

あと、CiscoデバイスでのVRRPの具体的な設定は、Koichiさんが書いてくださ
った下記のリンクの記事が役に立つでしょう。Ciscoを使っている環境を扱っ
ている方は、ぜひ参考にしてください。

Configuring VRRP(1回目)
Configuring VRRP(2回目)
Configuring VRRP(3回目)

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