マルチキャストルーティングその5
目次
マルチキャストルーティングプロトコルのモード
マルチキャストルーティングプロトコルには、以下の2つのモードがあります。
- Denseモード
- Sparseモード
この2つのモードの違いは、主に、
「マルチキャストの受信者がどこに存在しているのか」
「発信元、共有型ディストリビューションツリーのどちらを使うのか」
ということによって区別されます。そして、このマルチキャストルーティングプロトコルによって、どちらのモードかが異なっています。今回は、このDenseモードとSparseモードの違いについて解説します。
Denseモード
「Dense」という英単語の意味は、「密な」とか「濃い」という意味です。何が「密」なのかというと、受信者の分布が密ということです。マルチキャストの受信者が、比較的狭い範囲で集中しているネットワークにおいて、Denseモードのマルチキャストルーティングプロトコルを利用することを想定しています。受信者が比較的狭い範囲で集中しているネットワークは、LANと考えてもらってもいいと思います。
Denseモードでは、発信元ディストリビューションツリーを作ることになります。その発信元ディストリビューションツリーは、「Flood & Prune」モデルで作られていきます。
「Flood & Prune」モデルは、
「とにかくマルチキャストのパケットを全部転送しちゃってから、あとでいらないところを取り除いていこうね!」
という考え方です。
なんとなくいい加減(笑)に、マルチキャストのルーティングを行うのがDenseモードの特徴です。ただ、「とにかく送る」ということから、本当は必要ないのにマルチキャストパケットをルーティングしてしまうことになりかねません。Denseモードで、マルチキャストパケットがフラッディングされると、ネットワークがが混雑してしまうことがあるので、要注意です。
Denseモードのマルチキャストルーティングプロトコルの例として、DVMRP(Distance Vector Multicast Routing Protocol)やPIM-DM(Protocol Independent Multicast – Dense Mode)などがあります。
Sparseモード
「Sparse」とは、「まばらな」とか「希薄な」という意味です。つまり、マルチキャストの受信者がいろんなところに存在しているようなネットワークにおいてSparseモードのマルチキャストルーティングプロトコルを利用することを想定しています。受信者がまばらなネットワークとは、WANを介しているという具合に理解することもできますね。
Sparseモードでは、基本的には共有型ディストリビューションツリーを作成します。ツリーを「Explicit Join」モデルで作成します。
「Explicit Join」モデルは、
「マルチキャストが必要なところだけ、明示的にディストリビューションツリーに含めてルーティングしましょう!」
という考え方です。
Denseモードのように、とにかく最初に送ってしまってからあとから必要ないところを除いていくのではなくて、必要なところにだけマルチキャストパケットを転送するためにディストリビューションツリーを作成していくのです。そのため、Denseモードと比較すると、マルチキャストがネットワークに余計な負荷をかけずに済むことになります。しかし、Sparseモードのマルチキャストルーティングプロトコルの設定は、Denseモードよりも複雑で難しくなります。
Sparseモードのマルチキャストルーティングプロトコルとしては、CBT(Center Base Tree)やPIM-SM(Protocol Independent Multicast – Sparse Mode)などがあります。
DenseモードとSparseモード、どっち?
じゃ、DenseモードとSparseモード、どちらのマルチキャストルーティングプロトコルがいいんでしょう?
現在は、一般的にSparseモードのプロトコルが使われることが多いです。その中でも特にPIM-SMですね。Denseモードは非常に単純で、設定も楽なんですが、なんといってもネットワークが混雑してしまう原因になってしまうことが大きなデメリットです。いくら、LAN環境で帯域が10Mbpsとか100Mbpsぐらい使えるといっても、マルチキャストではたくさんのグループを利用することがあり、帯域を全部消費してしまって、他のトラフィックへの影響が非常に大きくなってしまう危険性があります。
その点、Sparseモードでは必要なマルチキャストしか転送しないので、帯域を有効に利用することができます。そのため、現在では一般的にSparseモードのプロトコルが利用される場合が多いです。そして、シスコが開発したPIMが、ほぼ標準として利用されています。