日経コミュニケーション 2005.12.1 『初解剖!KDDIの無線LAN携帯 P50~55』 by Gene

NTTドコモ、KDDI、ボーダフォンの携帯3キャリアが提供するモバイルセントレックスサービスに新たな変化が生まれそうです。

モバイルセントレックスとは

「携帯電話を企業内の内線電話として利用するサービス」

のこと。2004年後半から、この言葉をよく見かけるようになったと思います。携帯電話を内線電話として利用するというサービスの目的は同じですが、携帯キャリアごとにその実現方法はまったく異なっています。

※キーマンズネットにも「モバイルセントレックス」の詳しい解説があります。

NTTドコモは「PASSAGE DUPLE」というサービス名称で、無線LAN/FOMAのデュアル端末(N900iL)を利用します。内線電話は、無線LANで実現するわけですね。

KDDIは「OFFICE WISE」というサービス名称です。こちらは、企業のビル内に小型の携帯電話交換機を設置して、その交換機によって内線電話を実現します。

ボーダフォンは「Vodafone Mobile Office」というサービス名称で、通常のボーダフォンの携帯電話網において、内線電話機能を提供します。昔、固定電話網でもあった音声VPNの携帯バージョンですね。

と、携帯3社で、サービスの目的自体は同じでも実現方法がまったく違っていたんです。ところが、KDDIが新しく無線LAN携帯、つまりNTTドコモと同じ方式のモバイルセントレックスサービスを展開するというのが、今回の記事です。

いままでのKDDI「OFFICE WISE」は、ビル内に小型の携帯電話交換機を設置しなければいけないということから、かなりの初期コストがかかっているようです。そのため、かなり大規模な事業所しか採用が難しい面がありますね。
その点、NTTドコモの「PASSAGE DUPLE」は、基本的にはそれまでのIP電話向けに構築したインフラに無線LAN携帯を接続すればいいだけです。ま、実際には音声品質の確保などにかなり苦労したみたいですが、比較的規模が小さい事業所でも導入しやすく、好調です。

「そのうち、KDDIもドコモ方式のデュアル端末のサービスを始めるだろうなぁ」って思っていたところ、ようやくその話が現実味を帯びてきました。

この記事を見てびっくりしたのは、KDDIは決してPASSAGE DUPLEが好調なのを見てから、デュアル端末の開発をしたわけじゃないっていうことです。てっきり、そうだと思ってました・・・
モバイルセントレックスの参入を検討し始めた当初、デュアル端末にはさまざまな技術的制約があったため、技術的にしっかり確立されている既存の携帯電話のノウハウを活かしたOFFICE WISEを先に展開して、その後、技術的制約をクリアしてからデュアル端末を投入するという明確な戦略に基づいた選択だったそうです。きちんとした戦略だったとは、思わず「う~ん」とうなってしまいました。

参入時の技術的制約については、特に記事には記述がなかったんですが、おそらく

  • 通信速度
  • QoS機能
  • セキュリティ

だったんじゃないかなと思います。導入予定のデュアル端末では、最大54MbpsのIEEE802.11gに対応しています。また、IEEE802.11eという無線LANのQoS機能、IEEE802.11xによるセキュリティ機能を実装し、技術的な制約をクリアしていると思われます。おそらくNTTドコモのN900iLよりも、高い端末性能になっ
ているでしょう。
ただ、単純な端末性能よりも注目すべきは、

「端末のコアとなる部分の仕様をオープン化している」

ことだと思います。
NTTドコモのN900iLは、LANやIP-PBXとの接続の仕様についてさまざまなメーカに公開していますが、呼制御機能などはファームウェアに書き込まれていて、他社が手を加える余地はまったくないです。
一方、KDDIの端末では接続仕様はもちろんのこと、核となるVoIPソフトやインスタントメッセージなどのコアとなるプログラムの開発環境の仕様をメーカに公開しています。この辺の詳しい話はぜひ、記事を読んでみてください。

IP電話の導入の目的としてSIがさかんに宣伝しているのは、電話のコスト削減だけではなく、さまざまなIPアプリケーションとの連携によって、生産性を向上させることです。(それがうまくいっているかどうかは別問題だけど・・・)
端末のアプリケーションのコアの開発環境に関する仕様を公開することで、より柔軟な機能追加や他のアプリケーションとの連携を実装することができるようになるでしょう。単純な端末性能の強化以上に、このことのインパクトは非常に大きいでしょう。

ただし、いろんな機能を実装したり、他のアプリケーションとの連携を行うことができるようになると、セキュリティ上の心配が出てきますね。セキュリティをまず第一に考えつつ、機能追加していくとすごくモバイルセントレックスサービスで一人勝ちできるようになるかも。

あと、ボーダフォンがなんか蚊帳の外って感じなのが、かれこれ8年ほどボーダフォン(昔はJ-Phoneね)つかっているボーダフォンユーザとして寂しいです・・・ボーダフォンもがんばれ!!

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