日経コミュニケーション 2008.11.15 『商用コンテンツ配信で深化するP2P』

P2P(Peer to Peer)アプリケーションというと、Winnyなどの著作権侵害してい
るコンテンツを配信しているアプリケーションを思い浮かべることが多いので
はないでしょうか。
一時期よりは減りましたが、WinnyなどのP2Pアプリケーションでダウンロード
したファイルに暴露ウィルスがしかけられていてPCの情報が漏洩したという事
件をよく報道で見かけたものです。
そのため、「P2P」というとあんまりいいイメージを持っていない人も多いか
もしれませんが、P2Pの技術自体はネットワークを効率的に利用することがで
き、可用性も高く、将来の拡張性に優れています。一部のアプリケーションの
使われ方が問題になっているだけだと思っています。
実際、さまざまなアプリケーションでP2P技術が利用されています。たとえば、

  • Skype(IP電話)
  • インスタントメッセンジャー
  • オンラインゲーム
  • グループウェア

などです。

今回レビューで取り上げる日経コミュニケーションの記事には、商用コンテン
ツの配信でP2Pが活用されている様子をまとめています。

リアルタイムに映像を配信するライブストリーミングシステムにP2Pの技術を
取り入れることで、サーバの負荷を90%以上削減できたという事例が紹介され
ています。
サーバが一括してすべてのクライアントにコンテンツを配信するのではなく、
クライアントにもコンテンツの配信機能を分散させることで、サーバの負荷を
大きく低下することができるようです。
これまでのクライアント-サーバ型のシステムでは、サーバの処理能力やネッ
トワークリソースの容量はピーク時の負荷を見積もって決めなければいけませ
ん。P2Pでは、クライアントが増えてもその分、処理が分散されます。厳密に
ピーク時に必要な処理能力やネットワークリソースを考えなる必要がなくなり
ます。

メリットがたくさんありますが、課題ももちろんあります。

Winnyなどで問題になった配信するコンテンツの不正コピーなどです。これは、
現状ではDRMなどアプリケーションレベルで実装しているようです。
そして、P2Pの通信経路がISPにとっては、必ずしも望ましい経路ではないとい
う点も挙げられています。P2Pアプリケーションにとって最適と判断された経
路が、ISPにとって望ましい経路でなければ、ISPのネットワークリソースが無
駄に消費されることになってしまいます。この記事ではじめて知ったのですが、
このような課題を解決するために「P4P」という仕組みが考えられているそう
です。ISPにとっての最適経路を「iTracker」というサーバで公開して、P2Pア
プリケーションはその情報を参照できるようにする仕組みです。ネットワーク
層レベルの最適経路とアプリケーション層レベルの最適経路を関連づける仕組
みと言えそうです。まだまだ研究段階のようですが、興味深い仕組みです。
ただ、残念なことに日本のISPの構成では、「P4P」はあまり効果的ではない可
能性が。アメリカに比べると、日本のISPの構成はきちんとした階層構造じゃ
ないので、「P4P」の仕組みがあまり効果的に機能しないようです。現在、日
本にあった仕組みを研究中とのことです。

ネットワークアプリケーションは、かなり長いことクライアント-サーバ型が
主流になっていました。でも、それが大きく転換しそうなのがP2Pとクラウド
コンピューティングの登場です。

これからのネットワークアプリケーションの形式のひとつとして、P2Pを知る
ためにいい内容の記事だと思います。

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