IPv6アドレスの構造 その2

IPv6アドレスの種類

IPv4アドレスでは、ユニキャストアドレス、ブロードキャストアドレス、マルチキャストアドレスという3つの種類がありました。ちょっと簡単におさらいしてみましょう。

ユニキャストアドレスは、1対1の通信で利用し、通信相手の特定のホスト(コンピュータ)を指し示します。ユニキャストアドレスは、始まりのビットとネットワークアドレスとホストアドレスの区切りによってクラスA、クラスB、クラスCの3つのクラスにさらに分類することができます。
コンピュータやルータなどのインタフェースに設定するIPアドレスがユニキャストアドレスですね。

そして、ブロードキャストアドレスは、同じネットワーク上のすべてのホストに何かデータを送信したいときにあて先IPアドレスとして指定するIPアドレスです。単純に「全員あて」なんて表現していることが多々ありますが、正確には同じネットワーク(ブロードキャストドメイン)上に存在しているホストあてです。
IPv4のブロードキャストアドレスは、「255.255.255.255」またはホストアドレスのビットすべて「1」です。

3つ目のマルチキャストアドレスは、特定のグループ(マルチキャストグループ)に参加しているホストあてにデータを送信したいときにあて先IPアドレスとして指定するIPアドレスです。
マルチキャストアドレスは、クラスDのIPアドレスで、10進数表記では224.0.0.0~239.255.255.255の範囲のIPアドレスです。

と、以上のようにIPv4アドレスには3つの種類のアドレスがあります。IPv6アドレスにも同じように3つの種類のアドレスがあります。しかし、IPv4とはちょっと異なり、ユニキャストアドレス、マルチキャストアドレス、エニーキャストアドレスの3種類です。

ユニキャストアドレスは、IPv4のときと変わりません。特定のインタフェースに設定されるIPv6アドレスで1対1の通信で利用します。

マルチキャストアドレスもIPv4のときと同じ用途です。特定のマルチキャストグループに対してデータを送信するときにあて先アドレスとして利用します。
なお、IPv6にはブロードキャストアドレスはないのですが、実は、IPv4のブロードキャストアドレスは、マルチキャストアドレスに置き換えられています。元々、IPv4のブロードキャストアドレスは、「同じネットワーク上のすべてのホスト」という特定のグループを示していることになります。つまり、ブロードキャストアドレスはマルチキャストアドレスのうちの一つだったのです。IPv6では、そのことを反映してブロードキャストアドレスがマルチキャストアドレスに含まれる形になっています。

エニーキャストアドレスがIPv6になって追加されたアドレスの種類です。「エニーキャスト(anycast)」とは、ネットワーク的に最も近い相手に対する通信のことです。
たとえば、まったく同じコンテンツのWebサーバが東京と大阪に設置されていると考えてください。この2つのWebサーバに同じIPアドレス(エニーキャストアドレス)を設定し、大阪のコンピュータからは大阪のWebサーバへ、東京のコンピュータからは東京のWebサーバへという具合に、送信元から見て、最も近いあて先への通信がエニーキャストです。ここでの「近さ」はルーティングプロトコルのメトリックによって判断されます。


図 エニーキャスト

アドレススコープ

ユニキャストアドレス、ブロードキャストアドレス、エニーキャストアドレスといったアドレスは、有効範囲を表す「スコープ」があります。IPv6アドレスのスコープの主なものには、次の2つがあります。

  • リンクローカル
    特定のリンク(=ブロードキャストドメイン=サブネット)でのみ有効なアドレス
  • グローバル
    有効範囲に制限のないアドレス

リンクローカルアドレスをあて先に持つIPv6パケットはルーティング対象外です。主に、ルーティングプロトコルなど、ローカルなサブネット上で制御情報をやり取りする目的でリンクローカルアドレスを利用します。

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