NETWORK MAGAZINE 2006.3『いまさら聞けない 最新ブロードバンド技術の仕組み』P.62~79 by Cassi
既存の電話回線をそのまま利用してメガビット級のインターネット接続を可能
にしたADSL。この5年間で一気にブロードバンド回線を一般家庭に浸透させた
このADSLですが、昨年は残念ながら純増数シェアでFTTHに抜かれてしまいまし
た。
これはADSLによって一通りブロードバンドが家庭に普及してしまったことと、
FTTHの利用料の低価格化が進み、通信キャリア自身も新たな付加価値サービス
を提供できるFTTHにシフトしていった結果だと思われます。
そして今年、ブロードバンド回線は”無線”という新しい流れが加わり、多様
化しようとしています。
今月のNETWORK MAGAZINEでは、そのブロードバンドについて有線では既存技術
の解説とさらなる発展の可能性について、無線については今注目されている技
術と実用化に向けた現状について紹介されています。現在の有線ブロードバン
ド技術と、今後の無線ブロードバンド技術を押さえておく意味でも丁度良い特
集だと思いますので今回レビューに取り上げてみました。
この特集は大きく分けて次のような5つのパートに分かれています。
(1)3.5G/4G
(2)WiMAX
(3)ADSL
(4)FTTH
(5)CATV
(1)のパートでは、ドコモやボーダフォンが導入を計画しているHSDPA(下り最
大14.4Mbps)や、携帯電話事業に新規参入を果たしたアイピーモバイルが採用
するTD-CDMA(下り最大5.2Mbps)、PHSの高速化技術、現在3GPPで標準化の議
論がされおり4Gへの移行ステップでもあるSuper3G(下り最大100Mbps程度)など、
無線技術について幅広く紹介されています。さらに4Gについては、まだ規格自
体が提案段階であるとしながらも、無線LANとの融合やネットワークのオール
IP化など実現化された際のサービスイメージに言及するなどなかなか興味深い
内容になっていました。
(3)のパートでは、この特集のタイトルである「いまさら聞けない~」にふさ
わしく、既設の銅線を使って高速通信を実現するためのADSLの基本技術や、高
速化のために採られてきた様々な技術について解説されています。
たとえば、利用できる周波数帯域を増やすために「ダブルスペクトラム」や
「クワッドスペクトラム」、「オーバーラップ」といった技術を採用し、通信
を効率化して1度に送信できるビット数を増やすために、「誤り訂正ビット列
の効率化」や「フルビットローディング」といった技術を採用してきたとのこ
とです。
それぞれの技術について解説されているので詳しくは記事をチェックしてみて
ください。これらの解説を読んでみると銅線の潜在能力を最大限に引き出すた
めにやれることは全てやってきたということが良くわかります。
ただし、ADSLはこれ以上の高速化はほとんど期待できないそうです。記事でも
「ADSLを取り巻く状況が厳しくなる一方であることには間違いない」と言って
いるように、今後ADSLは以前レビューで紹介したFTTRのようなFTTHとADSLのハ
イブリッド方式に移行していくものと思われます。
(4)のパートはFTTHですが、ここでも「いまさら聞けない~」にふさわしく、
光ファイバで信号を送受信する仕組みの話から、NTT局舎とユーザ宅までを光
ファイバで接続する方式(SS:Single Star方式とDS:Double Star方式)につ
いてなど、押さえておきたいポイントが解説されています。その他に役に立つ
ポイントだと思ったのが、同じ光ファイバを使ったサービスでもユーザ宅で回
線を終端する装置に違いがあるということです。
多くの場合、メディアコンバータかONU(Optical Line Terminal)と呼ばれる装
置になりますが、どういった場合にどちらの装置を使うのか、またそれらの装
置はどういった働きをしているのかが解説されていて勉強になると思いました。
このように、今回の特集では注目されているさまざまな無線ブロードバンド技
術から、現在主流の有線ブロードバンド技術までをまとめて解説しています。
内容は、どれも今までにいろいろな雑誌などで報じられてきた既知のものです
が、ブロードバンドの現在と今後の動向を押さえておきたい方にはオススメで
きる内容ですので、ぜひチェックしてみてください。
カシスブログ
http://cassi.blog34.fc2.com/
※Cassiさん、ありがとうございます。 ブロードバンドの現状とこれからの展
望を理解するのにいい記事みたいですね。まだ読んでいなかったので、目を
通してみます。 (Gene)