目次
概要
DHCPサーバとクライアントは原則として、同じネットワーク上にいなければいけません。DHCPサーバをどのように配置するかについてまとめます。
DHCPサーバとクライアントの配置
DHCPサーバとクライアントの配置には、以下の制約があります。
DHCPサーバとDHCPクライアントは原則として同一ネットワークに接続する
この制約の理由は、DHCPのやり取りは基本的にブロードキャストベースで行うからです。最初、DHCPクライアントは、自身のIPアドレスがわかりません。当然、DHCPサーバのIPアドレスなんてわかっているわけありません。
IPアドレスがわからないけど、DHCPサーバと通信するためにブロードキャストを利用します。ブロードキャストは、IPアドレスがわからないホストにデータを送るために利用することができます。DHCPクライアントは、DHCPサーバのIPアドレスはわからないけど、とりあえず同じネットワーク上の全ホスト宛てにDHCPメッセージをブロードキャストします。そうすると、同じネットワーク上にDHCPサーバが存在してれば、DHCPメッセージを受信できるようにしています。
企業の社内ネットワークは、1つのネットワークだけで構成されていることはほとんどないでしょう。部署ごとなどの複数のネットワークをルータ/レイヤ3スイッチで相互接続しています。いろんなネットワーク上につながっているDHCPクライアントにIPアドレスを配布するDHCPサーバの配置を検討しなければいけません。
DHCPサーバ配置の3つの選択肢
DHCPサーバの配置について、次の3つの選択肢が考えられます。
- ネットワークごとにDHCPサーバを配置する
- ルータ/レイヤ3スイッチをDHCPサーバとする
- 1台のDHCPサーバを配置する(DHCPリレーエージェント)
これらDHCPサーバの配置の選択肢のなかで、たいていは2.か3.です。1.のようなDHCPサーバの配置はまずないでしょう。
以降で、それぞれのDHCPサーバの配置についてもう少し詳しく見ていきましょう。
ネットワークごとにDHCPサーバを配置する
DHCPサーバとDHCPクライアントは原則として同一ネットワークに接続する
この制約を忠実に守っているDHCPサーバの配置です。DHCPクライアントが存在するそれぞれのネットワーク上にDHCPサーバを配置します。当然ながら、DHCPサーバをたくさん配置しなければいけません。DHCPサーバを構築することは難しくはありませんが、数が多くなるととても面倒です。
ルータ/レイヤ3スイッチをDHCPサーバとする
ルータ/レイヤ3スイッチは、ネットワークを相互接続しています。DHCPクライアントがつながっているネットワークは、ルータ/レイヤ3スイッチによってその他のネットワークと相互接続していることになります。DHCPクライアントにとってみると、ルータ/レイヤ3スイッチ(デフォルトゲートウェイ)は必ず同一ネットワークです。そこで、ルータ/レイヤ3スイッチをDHCPサーバとします。そうすれば、DHCPサーバの配置の制約に従っていることになります。ルータ/レイヤ3スイッチでDHCPサーバ機能が備わっていないことはまずありません。
ただし、1台のルータ/レイヤ3スイッチだけでDHCPクライアントのすべてのネットワークを相互接続されているわけではありません。複数のルータ/レイヤ3スイッチをDHCPサーバとして動作させなければいけないかもしれません。
個人ユーザの家庭内ネットワークや小規模なSOHOネットワークでは、たいてい、ルータをDHCPサーバにしているでしょう。また、スマートフォンでテザリングを有効にしてモバイルルータとしているとき、スマートフォン(モバイルルータ)がDHCPサーバとなっています。
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Ciscoのルータ/レイヤ3スイッチをDHCPサーバとして設定するためのコマンドについて、以下の記事で解説しています。
1台のDHCPサーバを配置する(DHCPリレーエージェント)
たくさんのDHCPサーバを構築して配置するのは面倒です。そこで1台のDHCPサーバで複数のネットワーク上のDHCPクライアントにIPアドレスを配布できるようにします。そのためには、DHCPサーバに配布したいネットワークごとのDHCPプールを作成しておきます。
ただし、冒頭でも述べていますが、原則としてDHCPサーバとDHCPクライアントは同じネットワーク上に接続しなければいけないという制約があります。この制約を回避するために、追加でDHCPリレーエージェントが必要です。
ほとんどの場合、DHCPクライアントのネットワークを接続するルータ/レイヤ3スイッチがDHCPリレーエージェントになります。DHCPリレーエージェントは、DHCPクライアントからのブロードキャストのDHCPメッセージをDHCPサーバへユニキャストします。
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まとめ
ポイント
- DHCPサーバとDHCPクライアントは原則として同一ネットワークに接続します
- DHCPサーバ配置の選択肢として3つあります。
- ネットワークごとにDHCPサーバを配置する
- ルータ/レイヤ3スイッチをDHCPサーバとする
- 1台のDHCPサーバを配置する(DHCPリレーエージェント)
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