目次
EIGRPのメトリック
EIGRPでは、メトリックとして複合メトリックを採用しています。複合メトリックとは、以下の5つの要素から計算された値です。
- 帯域幅(BW)
- 遅延(DLY)
- 信頼性(RELIABILITY)
- 負荷(LOAD)
- MTUサイズ
5つの要素の具体的な値は、インタフェースごとにあらかじめ決められています。show interfaceコマンドで確認できます。設定で変更することも可能です。
R1#show interfaces fastEthernet 0/0 FastEthernet0/0 is up, line protocol is up Hardware is AmdFE, address is cc01.3180.0000 (bia cc01.3180.0000) Internet address is 192.168.12.1/24 MTU 1500 bytes, BW 100000 Kbit/sec, DLY 100 usec, reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255 Encapsulation ARPA, loopback not set Keepalive set (10 sec) Full-duplex, 100Mb/s, 100BaseTX/FX ~省略~
メトリックの計算式
5つの要素に基づいて、次の計算式にしたがってメトリック値を算出します。5つの要素がもとになっているだけでメトリックとしては、1つの値であることに注意してください
K5=0のとき
EIGRPメトリック=[K1*BW+K2*BW/(256-LOAD)+K3*DLY] * 256
K5≠0のとき
EIGRPメトリック=[K1*BW+K2*BW/(256-LOAD)+K3*DLY]*[K5/(REALIABILITY+K4)] * 256
この計算式において、K1~K5までの係数があります。これらは、K値と呼ばれる5つの要素をどの程度考慮するかという係数でデフォルトは、以下の通りです。
K1=K3=1、K2=K4=K5=0
つまり、デフォルトではEIGRPのメトリックは、以下のように帯域幅と遅延を利用して計算されることになります。
メトリック=(BW + DLY) * 256
EIGRPのメトリックの計算における帯域幅は、経路上の最小値を利用します。宛先ネットワークまでの経路上に、帯域幅が小さいインタフェースがあると、その部分に足を引っ張られてしまってメトリックの値としては、大きくなってしまいます。そして、遅延は宛先ネットワークまでの累積値を利用します。帯域幅も遅延もEIGRPのルート情報を受信するインタフェースの値が適用されます。
なお、BWとDLYの値は、以下のようにスケーリングして計算します。
BW = 107/経路上の最小の帯域幅
DLY = 経路上の累積遅延/10
メトリック計算の例
たとえば、次の図において、R1で192.168.1.0/24のネットワークについてのメトリックを計算するときには、帯域幅は10Mbps(=104kbps)です。経路上の最小値を利用します。そして、遅延は経路上の遅延の値を累積して100+1000+1000=2100μsです。
図の例では、R1での192.168.1.0/24のEIGRPメトリックは以下のように計算できます。
EIGRPメトリック = [107 / 104 + 2100/10 ] * 256 = 309760
こうしたEIGRPメトリック計算に利用する各要素の詳細は、トポロジテーブルで確認できます。
R1#show ip eigrp topology 192.168.1.0 IP-EIGRP (AS 1): Topology entry for 192.168.1.0/24 State is Passive, Query origin flag is 1, 1 Successor(s), FD is 309760 Routing Descriptor Blocks: 192.168.12.2 (FastEthernet0/0), from 192.168.12.2, Send flag is 0x0 Composite metric is (309760/307200), Route is Internal Vector metric: Minimum bandwidth is 10000 Kbit Total delay is 2100 microseconds Reliability is 255/255 Load is 1/255 Minimum MTU is 1500 Hop count is 2
ネイバーになる条件
EIGRPでは、K値が異なるルータ間でネイバーを確立することができません。K値が異なるということは、メトリックの計算式が異なることになり、最適ルートの決定に整合性がとれなくなってしまうからです。EIGRPでネイバーを確立するための条件をあらためてまとまると、次のようになります。
- 同じAS番号であること
- 同じK値であること
上記に加えて、ネイバーは同一ネットワーク上であることが前提です。IPアドレスやサブネットマスクの設定にも注意が必要です。なお、K値を変更することはほとんどなく、デフォルト値を利用することが一般的です。
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