IPアドレスを設定することでネットワークに接続する

「ネットワークに接続する」ということについて、詳しく考えておきましょう。ネットワークに接続するときには、2つの段階で考えてください。

  1. 物理的な接続
  2. 論理的な接続

TCP/IPの階層でいうと、物理的な接続はネットワークインタフェース層で、論理的な接続はインターネット層です。

物理的な接続

物理的な接続とは、物理的な信号をやり取りできるようにすることです。イーサネットのインタフェースにLANケーブルを挿したり、無線LANアクセスポイントへ接続したり、携帯電話基地局の電波を捕捉するなどして、物理的な信号をやり取りできるようにしなければいけません。ただ、それだけではなく論理的な接続としてIPアドレスの設定も必要です。

論理的な接続

現在は、TCP/IPをネットワークの共通言語として使っていて、TCP/IPではIPアドレスを指定して通信を行います。そのため、IPアドレスがなければ通信できません。ホストにIPアドレス192.168.1.1/24を設定することで、そのホストは192.168.1.0/24のネットワークに接続したことになります。そうして、はじめてIPパケットの送受信ができるようになっています。

図 「ネットワークに接続する」ということ
図 「ネットワークに接続する」ということ

インタフェースにIPアドレスを設定する

IPで考えるデータは「0」と「1」の論理的なデータです。論理的なデータは、物理的な信号に変換してケーブルなどを通じて伝えていきます。IPで「論理的なデータ」を送信するためには、「物理的な信号」に変換してインタフェースから送り出します。そして、IPで「論理的なデータ」を受信するには、その「物理的な信号」がインタフェースに伝わってこなければいけません。このことから、IPアドレスはインタフェースに対して設定することになります。

「IPアドレスはTCP/IPのホストを識別する」というように解説されることが多いと思いますが、正確には、「IPアドレスはTCP/IPホストのインタフェースを識別」します。IPアドレスは、イーサネットやWi-Fiなどのインタフェースに設定するからです。

イーサネット/Wi-FiのインタフェースはMACアドレスで識別します。MACアドレスで電気信号/光信号/電波といった物理的な信号を送受信するインタフェースを識別できるようにします。イーサネット/Wi-FiのインタフェースにIPアドレスを設定することで、IPアドレスとMACアドレスを関連付けます。つまり、IPによって「論理的なデータ」を送り届けるには、どのインタフェースに「物理的な信号」が伝わっていけばよいかがわかるようにしています。以下の図は、IPアドレス設定の簡単な例です。

図 イーサネットインタフェースへのIPアドレス設定の例
図 イーサネットインタフェースへのIPアドレス設定の例

この図で、MACアドレス「PC1」というイーサネットインタフェースにIPアドレス「192.168.1.1」と設定しています。IPアドレス「192.168.1.1」へ「論理的なデータ」を送り届けるためには、MACアドレス「PC1」のイーサネットインタフェースにイーサネットの「物理的な信号」が伝わればいいということを示しています。

インタフェースにはループバックインタフェースなど論理的なインタフェースもあります。論理的なインタフェースに対しては、上記の説明は当てはまりません。ただ、論理的なインタフェースで送受信するIPパケットは、最終的に物理的なインタフェースに関連付けられます。

ARP(Address Resolution Protocol)

IPアドレスはイーサネットやWi-Fiのインタフェースに対して設定して、IPアドレスとMACアドレスを関連付けます。ということは、IPアドレスとMACアドレスの対応は常に一定ではありません。コロコロとIPアドレスとMACアドレスの対応は変わってしまう可能性があります。

そこで、IPアドレスとMACアドレスが「今」どんな対応になっているかをきちんとわかっておかなければいけません。IPアドレスとMACアドレスの対応を調べることを「アドレス解決」と呼びます。そして、アドレス解決を行うためのプロトコルがARP(Address Resolution Protocol)です。ARPによって、同じネットワーク内のIPv4アドレスに対応するMACアドレスを求めることができます。

IPv6アドレスのアドレス解決は、ARPではなくICMPv6を利用します。

一般のユーザにはIPアドレスを意識させない

IPアドレスの設定は、IT技術にあまり詳しくないユーザは、難しく感じることがあります。ユーザに設定してもらうと、設定を間違えてしまう可能性もあります。そのため、DHCPなど自動設定を行い、ユーザにIPアドレスの設定を意識させないようにしていることがほとんどです。

ネットワーク技術の仕組みをきちんと知るためには、IPアドレスの設定まで行ってはじめて「ネットワークに接続」したことになるということをぜひ知っておいてください。

また、TCP/IPの通信には必ずIPアドレスが必要です。IPヘッダには、必ず宛先/送信元IPアドレスを指定しなければいけません。送信元IPアドレスは簡単にわかります。でも、宛先IPアドレスは簡単にはわかりません。いちいちユーザに宛先IPアドレスを入力してもらうととても面倒です。そこで、一般のユーザがアプリケーションを利用するときにはIPアドレスを意識させないように、DNSによって自動的に適切な宛先IPアドレスを求めています。

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DHCPによって自動的にIPアドレスを設定する仕組みについて、以下の記事をご覧ください。

DNSについて、以下の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

ポイント

  • ネットワークに接続するには、2つの段階があります。
    • 物理的に接続する
    • 論理的に接続する
  • IPアドレスを設定することで、ネットワークに論理的に接続して、TCP/IPの通信ができるようになります。
  • 一般のユーザにはIPアドレスを意識させないようにしていますが、TCP/IPの通信には必ずIPアドレスを利用していることを知っておいてください。