目次
等コストロードバランシングとは
あるネットワークに対するルート情報は、原則として、最適ルートのみがルーティングテーブルに登録されます。最適とみなせるルート情報が複数ある場合、ルーティングの負荷分散を行うことができます。最適ルートが複数ある場合とは、メトリックが最小となるルート情報が複数のときです。このようなルーティングの負荷分散を等コストロードバランシングと呼びます。
メトリックのことをコストとも表現するので、等「コスト」ロードバランシングです。英語では、Equal Cost Multi Path(ECMP) Load Balancingです。「コストが同じ複数のパス(経路)上の負荷分散」という意味です。
また、EIGRPでは、メトリックが同じでない複数のルートで負荷分散が可能です。メトリックが同じでないルートでの負荷分散は、不等コストロードバランシングと呼びます。
等コストロードバランシングの例(RIP)
以下は、等コストロードバランシングの例です。
R1で10.3.3.0/24のネットワークについてのルート情報に注目します。この例では、ルーティングプロトコルにRIPを利用しています。R1-R2間、R2-R3間がそれぞれ2回線ずつ接続されています。
R3から10.3.3.0/24のルート情報をそれぞれの回線からR2へ送信します。そのメトリックは1です。そして、R2からさらにR1へと10.3.3.0/24のルート情報をメトリック2で送信します。
R1では、10.3.3.0/24のルート情報として、同じメトリックの2つのルートを受信しています。等コストロードバランシングによって、どちらも最小のメトリックのルート情報で最適ルートとみなして、2つともルーティングテーブルに登録します。R1から10.3.3.0/24へパケットをルーティングするときには、ネクストホップ192.168.12.2と192.168.21.2に分散します。
R1のルーティングテーブルは、次のような表示となります。
R1
R1#show ip route rip 10.0.0.0/24 is subnetted, 2 subnets R 10.3.3.0 [120/2] via 192.168.21.2, 00:00:17, Ethernet0/1 [120/2] via 192.168.12.2, 00:00:24, Ethernet0/0 R 192.168.23.0/24 [120/1] via 192.168.21.2, 00:00:17, Ethernet0/1 [120/1] via 192.168.12.2, 00:00:24, Ethernet0/0 R 192.168.32.0/24 [120/1] via 192.168.21.2, 00:00:17, Ethernet0/1 [120/1] via 192.168.12.2, 00:00:24, Ethernet0/0
等コストロードバランシングで登録できる最大のルート数は、デフォルトで4です。その最大値をさらに設定で変更することができます。設定可能な等コストロードバランスの最大値は、IOSバージョンなどによって異なります。
また、例としてRIPを考えていますが、OSPFやEIGRPでも同様です。さらに、ルーティングプロトコルのルート情報だけでなく、スタティックルートでも等コストロードバランシングは可能です。同じネットワークアドレスについてのスタティックルートを複数設定することで、スタティックルートでの等コストロードバランシングが可能です。
まとめ
ポイント
- 等コストロードバランシングとは、メトリック(コスト)が最小の最適とみなせるルート情報が複数あるときに、複数のルート情報をルーティングテーブルに登録して負荷分散を行うことです。
- EIGRPでは、等コストロードバランシングだけでなく、不等コストロードバランシングも可能です。
- RIPやOSPFのようなルーティングプロトコルのルート情報だけでなく、スタティックルートで設定したルート情報でも等コストロードバランシングは可能です。
IPルーティングのキホン
- ルータ ~ルーティングを行う中心的な機器~
- ルータでネットワークを分割
- レイヤ3スイッチ
- ルーティングの動作
- ルーティングテーブル
- ルーティングテーブルの作り方
- ホストルート ~/32のルート情報~
- スタティックルーティング?それともダイナミックルーティング? ~設定の考え方の違い~
- スタティックルーティングとダイナミックルーティング(RIP)の設定の比較
- スタティックルートのメリット・デメリット
- ルーティングプロトコルのメリット・デメリット
- ルート情報をアドバタイズする意味
- 宛先ネットワークまでの距離を計測 ~アドミニストレイティブディスタンスとメトリック~
- 等コストロードバランシング
- ルート集約 ~まとめてルーティングテーブルに登録しよう~
- デフォルトルート ~究極の集約ルート~
- 最長一致検索(ロンゲストマッチ) ~詳しいルート情報を優先する~
- インターネットのルート情報を見てみよう AT&T Looking Glass
- ルーティングプロトコルの分類 ~適用範囲~
- ルーティングプロトコルの分類 ~アルゴリズム~
- ルーティングプロトコルの分類 ~ネットワークアドレスの認識(クラスフルルーティングプロトコル/クラスレスルーティングプロトコル)~
- Cisco スタティックルートの設定
- ip default-network ~特定のルート情報に「*」をつける~
- スタティックルートをバックアップに ~フローティングスタティック~
- スタティックルートの設定を一歩ずつわかりやすく行う設定例[Cisco]
- Ciscoスタティックルーティングの設定例
- IPルーティング基礎演習Part1
- IPルーティング基礎演習Part2
- IPルーティング基礎演習Part3
- Windows PCのスタティックルートの設定 route addコマンド
- RIPの概要
- RIPの動作 ~RIPルート情報を定期的に送りつける~
- RIPスプリットホライズン
- RIPタイマ
- RIPルートポイズニング ~不要なルート情報を速やかに削除~
- Cisco RIPの設定と確認
- Cisco RIPの設定例
- RIPでのデフォルトルートの生成 ~スタティックルートの再配送~
- RIPでのデフォルトルートの生成 ~default-information originate~
- RIPでのデフォルトルートの生成 ~ip default-network~
- RIP 設定ミスの切り分けと修正 Part1
- RIP 設定ミスの切り分けと修正 Part2
- RIP 設定ミスの切り分けと修正 Part3
- RIP 設定ミスの切り分けと修正 Part4
- パッシブインタフェース(passive-interface) ~ルーティングプロトコルのパケット送信を止める~
- 転送経路を決定する方法 ~アドミニストレイティブディスタンス/メトリックと最長一致検索~
- デフォルトゲートウェイの詳細 ~ホストもルーティングしている~
- デフォルトゲートウェイの冗長化の概要
- Cisco HSRPの仕組み
- Cisco HSRP 仮想ルータ宛てのパケットがアクティブルータへ転送される仕組み
- Cisco HSRPトラッキング ~より柔軟にアクティブルータを切り替える~
- Cisco HSRP設定と確認
- Cisco HSRPの負荷分散
- HSRP 設定ミスの切り分けと修正 Part1
- VRRPの仕組み
- VRRPの設定と確認コマンド [Cisco]
- ルーティングテーブルのトラッキング(Cisco HSRP/VRRP)
- Cisco HSRP ルーティングテーブルのトラッキング設定例
- VRRP ルーティングテーブルのトラッキング設定例
- GLBPの仕組み
- Cisco GLBPの設定と確認
- Cisco GLBPの設定例
- HSRP/VRRP/GLBPのアドレス情報のまとめ