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ルーティングテーブルには宛先ネットワークまでの最適ルートのみを登録
あるネットワークのルートをスタティックルートで設定しつつ、ルーティングプロトコルで学習することもできます。ルーティングプロトコルも1つだけではなく複数動作させて、あるネットワークのルート情報を複数のルーティングプロトコルで学習することもできます。すなわち、あるネットワークのルート情報を複数の情報源から学習することがあります。複数のルート情報を学習したとしても、ルーティングテーブルには原則として最適ルートのみ登録します。
「最適」とみなせるルートが複数ある場合は、等コストロードバランシングです。あるネットワークに対する複数の最適なルート情報がルーティングテーブルに登録されることもあります。
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あるネットワークのルート情報を複数の情報源から学習した場合
以下の図のように、R1で192.168.10.0/24のルート情報をスタティックルートで設定するだけではなく、RIP、OSPFでも学習した場合を考えます。192.168.10.0/24のネットワークについて、スタティックルートのルート情報、RIPのルート情報、OSPFのルート情報のうち、どれが最適ルートであるかを決めなければいけません。
あるネットワークへの最適なルートを決定する基準としてメトリックが挙げられます。メトリックは宛先ネットワークまでの距離を示しています。ただし、スタティックルートで設定したルート情報にはメトリックは意味がありません。Ciscoルータではスタティックルートのメトリックは「0」です。また、ルーティングプロトコルによってメトリックの考え方がまったく異なり、取りうる値の範囲も違ってしまうので、単純にメトリックの数値を比較できません。メトリックの値を単純に比較することは、現実世界の距離で、1「メートル」と1「フィート」を単純に比較しようとするのと同じようなことです。ルーティングプロトコルごとのメトリックは以下の表の通りです。
ルーティングプロトコル | メトリック |
RIP | ホップ数 |
OSPF | パスコスト |
EIGRP | 複合メトリック(帯域幅、遅延、負荷、信頼性、MTU) |
図ではわかりやすさを優先していて、実際の動作とは異なるところがあります。OSPFルート情報は、必ずしも図のようなネットワークアドレス/サブネットマスク+メトリックになるわけではありません。また、R1でのOSPFルートのメトリックは、受信したルート情報のメトリックから増加します。
宛先ネットワークまでの距離=アドミニストレイティブディスタンス/メトリック
現実世界の1「メートル」と1「フィート」のように単位の違う距離を比較するときには、単位を揃えなければいけません。メトリックを比較するときに単位を合わせるためのパラメータがアドミニストレイティブディスタンスです。アドミニストレイティブディスタンスとメトリックを組み合わせて、宛先ネットワークまでの距離とすることで、スタティックルート、RIPルート、OSPFルートといった情報源の異なるルートの距離を比較できるようにします。
宛先ネットワークへの距離 = アドミニストレイティブディスタンス/メトリック
距離は短いほうがよいので、アドミニストレイティブディスタンスもメトリックも値が小さいほうが優先されます。アドミニストレイティブディスタンスを前につけるため、アドミニストレイティブディスタンスの値が小さいほど距離が短いとみなされることになります。アドミニストレイティブディスタンスのデフォルトは、次の表のように決められています。
情報源 | アドミニストレイティブディスタンス値 |
直接接続 | 0 |
スタティックルート | 1 |
BGP | 20 |
EIGRP | 90 |
OSPF | 110 |
RIP | 120 |
外部EIGRP | 170 |
IBGP | 200 |
前述の構成例で192.168.10.0/24のルート情報の距離を考えると、次のようになります。
192.168.10.0/24への距離
スタティックルート:[1/0]
RIPルート:[120/3]
OSPFルート:[110/10]
スタティックルートが最も距離が短くなるので、192.168.10.0/24の最適ルートとしてルーティングテーブルにはスタティックルートのルート情報が登録されます。
アドミニストレイティブディスタンスの値はデフォルトから変更することもできます。アドミニストレイティブディスタンスを変更すれば、あるネットワークのルート情報を複数の情報源で学習している場合、ルーティングテーブルにどの情報源のルート情報として登録するかを選択できます。
また、アドミニストレイティブディスタンスは、ルータローカルで利用するパラメータです。ルーティングプロトコルでアドバタイズするルート情報の中には含まれません。
まとめ
このページで解説したポイントは以下の通りです。
ポイント
- ルーティングテーブルには宛先ネットワークまでの最適ルートのみを登録します。最適ルートを判断するために、宛先ネットワークまでの距離を計測します。
- 各ルーティングプロトコルで送信されるルート情報には、宛先ネットワークまでの距離を計測しているメトリックの値があります。ただし、ルーティングプロトコルごとにメトリックの考え方が違うので、ルーティングプロトコルが異なると単純なメトリック値の比較はできません。
- アドミニストレイティブディスタンスによって、ルーティングプロトコルごとに異なるメトリックの値を比較可能にします。
- 宛先ネットワークまでの距離 = アドミニストレイティブディスタンス/メトリック
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