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(所属カテゴリー:ネットワーク機器---投稿日時:2004年10月31日)
レイヤ3スイッチ
レイヤ3スイッチは、レイヤ2スイッチとルータの機能をあわせ持ったネットワークデバイスです。レイヤ2スイッチでVLANを作成した場合、異なるVLAN間では直接通信を行うことができなくなります。そこで、ルータを用いて異なるVLAN間でルーティングする(これをVLAN間ルーティングといいます)ことによって、異なるVLAN間の通信が可能になります。
こうしたレイヤ2スイッチとルータによる異なるVLAN間の通信を1台のデバイスで実現したのがレイヤ3スイッチです。レイヤ3スイッチは特に最近の企業のLANでルータにとってかわるネットワークデバイスとして、多く導入されています。
ルータとレイヤ3スイッチの違い
ルータもレイヤ3スイッチもどちらも、IPパケットをルーティングすることができますが、両者の違いは何でしょう?
ネットワークを設計・構築する際には、ルータとレイヤ3スイッチをどのように選択すればよいのでしょう?
ここでは、ルータとレイヤ3スイッチの違いについて考えてみます。一般的にルータとレイヤ3スイッチの違いは以下のようになります。
ルータ |
レイヤ3スイッチ |
・ソフトウェア処理が主体 |
・ハードウェア処理が主体 |
・それほど高速な処理はできない |
・高速処理 |
・マルチプロトコル対応 |
・TCP/IPのみ |
・WANインタフェースを持つ |
・LANインタフェースのみ |
・ソフトウェアのバージョンアップによって機能追加が容易 |
・機能追加は難しい |
でも、ルータとレイヤ3スイッチの違いはあんまりなくなってきている・・・
ただし、ここに挙げた
ルータとレイヤ3スイッチの違いはどんどん薄れていっています。以前は、ルータはソフトウェア処理が主体であまり高速な処理ができなかったのですが、ルータにおいてもハードウェア処理を行う部分が増えてきていて、高速な処理が可能です。
また、ルータはあまりたくさんのLANインタフェースは持っていない製品が多かったのですが、現在はレイヤ3スイッチのようにたくさんのLANインタフェースを持つ製品も存在します。たとえば、Cisco 2600やCisco 3600/3700シリーズのモジュールにスイッチのようにたくさんのイーサネットインタフェースを持つものがあります。
Cisco 16-port EtherSwitch Network Module
レイヤ3スイッチでは、TCP/IP以外のネットワークアーキテクチャをサポートできない製品が多かったのですが、現在Novell IPXやApple AppletalkなどTCP/IP以外のネットワークアーキテクチャもサポートし、ハードウェアベースでのマルチプロトコルルーティングが可能にもなっている製品があります。
サポートしているルーティングプロトコルもルータに比べると少なかったのですが、現在ではRIP(Routing Information Protocol)、OSPF(Open Shortest Path First)といったIGPだけでなくBGP(Border Gateway Protocol)をサポートしている製品もあります。加えて、MPLS(Multiprotocol Label Switching)をサポートする製品もあります。
さらに、レイヤ3スイッチはスイッチなのでWANインタフェースを持っていなかったのが普通ですが、上位機種でATM(Asynchronous Transfer Mode)やPOS(Packet Over SONET/SDH)などのWANインタフェースを搭載できる製品もあります。
また、機能の追加に関して、レイヤ3スイッチはハードウェア主体なので機能の追加や向上などが難しかったのが、プログラマブルASICの採用により、柔軟に新しい機能を追加することも可能になってきています。
ルータか?それともレイヤ3スイッチか?
以上のように、ルータとレイヤ3スイッチの違いが薄れてきています。そのため、ルータは必要か否かではなく、
求められるパフォーマンスやかけられるコストなどのネットワークの要件に応じて、ルータかレイヤ3スイッチを適切に選択していくことが重要なポイントになります。
ルータとレイヤ3スイッチの使い分けの例を1つ挙げると、拠点内のLANにおけるVLAN間のルーティングはレイヤ3スイッチによって高速にルーティングし、リモートの拠点と通信するためにWANサービスに接続するにはルータを利用するというネットワーク構成が典型的です。