平成15年度テクニカルエンジニア(ネットワーク)午後Ⅰ 問1設問2解答と解説

目次

解答

(1)【ア】 34.4 (kビット/秒)
(2)1.本社や支社のルータ(9字)
  2.VoIPゲートウェイ(10字)
(3)【イ】 エコーキャンセラ

解説

(1)
IPネットワークの特徴として、ネットワークが混雑すれば遅延が大きくなり、
パケットロスが起こることもあります。またバースト性が高いデータが回線
帯域を圧迫してしまうこともあります。しかし通常のTCP/IPの通信であれば、
音声通信が受ける影響と比較するとさほど問題になりません。アプリケーシ
ョンのレスポンスは悪化するかもしれませんが、再送制御により最終的に
パケットが到達さえすればよいからです。

ところが音声ではリアルタイム性が要求されるため、そういうわけにはいき
ません。
Aさんの、「もしもし」という言葉が、パケットロスして、再送制御により
1秒後にBさんに「もしもし」と届いたとしても、会話として成り立ちま
せんよね。
こうしたことから、VoIPでは音声の品質を確保するためにさまざまな工夫が
必要になります。たとえばネットワークで音声パケット用に一定の回線帯域
を確保したり、データパケットよりも優先して処理するなどの工夫がなされます。
このように特定のアプリケーションの品質を確保することを、QoS(Quality of Service)といいます。こういったことを検討するためには、まず大前提として音声パケ
ットがどのくらいの回線帯域を消費するのかを把握しておく必要があります。
例えば音声パケットだけで200kビット/秒を消費するのに、回線帯域が
128kビット/秒しかなければ、音声品質が確保できないのは明らかですよね。

では問題を考えて見ましょう。設問1(1)の【b】でも解説したように、VoIP
では上位プロトコルにUDPとRTPが使われるため、図3のようなパケットフォーマ
ットになります。また、問題文に

音声のパケット化は、20ミリ秒ごとに行う

とあります。つまり20ミリ秒毎にパケットを1つ送信するということです。
これをふまえて計算すつと次のようになります。

音声データの必要帯域は問題文より8kビット/秒なので、図3のイーサネット
フレームに含まれる音声データのデータ長は、

8k(ビット)×0.02 = 160(ビット) = 20(バイト)

よって、データのサイズ(イーサヘッダからFCSまで)は86(バイト)です。
20ミリ秒で86バイトのデータを伝送するので

伝送帯域= 86(バイト) ÷ 0.02(秒) = 4300バイト/秒 = 34.4kビット/秒

となります。

(2)
遅延は音声通話の品質を測る上での重要な指標です。電話は双方向のコミュ
ニケーションなので、遅延が大きいと会話に著しく支障をきたします。衛星を
利用した国際電話などがよい例ですね。ニュースなどで、衛星中継の海外リ
ポーターとのやり取りに変な間があっておかしく感じた経験は誰でもあるで
しょう。普段はあまり意識しませんが、電波や光にもスピードがあるため、
距離が遠ければ遠いほど伝搬するのに時間がかかります。つまり遅延が生じ
ます。衛星中継は、電波がとてつもない距離を経由して通信されているため、
あれほどの遅延が発生してしまうのです。

音声データがどういう経路で通信するかに基づいて、遅延の発生箇所を考え
ると主に以下の通りになります。

H15A1-1-2pic1.JPG

<音声をパケット化による遅延>
S君の検討案では、音声のパケット化は、20ミリ秒ごとに行います。
ということは、ここで20ミリ秒以上の遅延が発生します。

<パケット処理遅延>
ルータやL2SWなどの機器がパケットを処理するのにかかる時間です。機器の
負荷や輻輳などの条件で、処理する時間にはばらつきがあります。


WANは最も距離の影響を受ける部分ですよね。基本的に距離が遠くなれば遠く
なるほど遅延は大きくなります。また、WANのサービス品目によっても遅延は
異なります。

<ジッタ吸収バッファ>
ジッタとはパケット転送時間のばらつきのことです。送信側からのIPパケット
が常に等間隔で届けばよいのですが、通常パケットの間隔にはある程度ばら
つきがあり、時にはパケットの順番が入れ替わることもあります。そういった
ばらつきを吸収するために、パケットをため込んでおく時間がジッタ吸収バッ
ファです。バッファがあるおかげで予定より遅れてきたパケットを待つことが
でき、多少遅れても影響なく元の音声信号に組み立てられます。

ここで問題にもどります。問題分で問われているのは「遅延の発生箇所」だけ
であり、上に解説したような遅延の内容までは問われてません。よって解答は

本店や支店のルータ(9字)
VoIPゲートウェイ(10字)

でよいでしょう。

(3)
電話などで、自分自身の声が少し遅れて山びこのように返ってくる現象のこ
とを「エコー」といいます。PBX等の2線、4線変換部分で電気信号が反射する
ためにエコーが発生するようです。エコーキャンセラは、その反射する電気
信号をあらかじめ予測し、打ち消してしまう回路です。エコーキャンセラは
VoIP特有の技術ではなく、電話では昔から使われている技術です。
またエコー自体は、遅延時間が短ければほとんど問題になりません。自分が
話す声とエコーが戻ってくる声が重なってしまうため、話している本人は気
づかないからです。

H15A1-1-2pic2.JPG


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