目次
最大4つのMACアドレスを指定
IEEE802.11フレームでは、Address1からAddress4の最大で4つのMACアドレスを指定します。有線イーサネットでは、ヘッダに宛先MACアドレスと送信元MACアドレスの2つだけ指定するのと比べると、少し複雑です。
802.11フレームで指定するAddress1からAddress4がどのようなデバイスのMACアドレスであるかは、MACヘッダのFrame Control内のTo DSおよびFrom DSの組み合わせで決まります。
802.11フレームで指定するMACアドレスについて解説します。
指定するMACアドレスの種類
まず、802.11フレームで指定するMACアドレスの種類について理解しましょう。802.11フレームでは、5種類のMACアドレスを指定します。
- 送信元アドレス(Source Address : SA)
- 宛先アドレス(Destination Address : DA)
- 送信機アドレス(Transmitter Address : TA)
- 受信機アドレス(Receiver Address : RA)
- BSSID(Basic Service Set Identifier)
送信元アドレス(Source Address : SA)
送信元アドレス(SA)は、フレームの本来の送信元デバイスのMACアドレスです。SAは、有線デバイスになることもあれば、無線デバイスになることもあります。
宛先アドレス(Destination Address : DA)
宛先アドレス(DA)は、フレームの最終的な宛先デバイスのMACアドレスです。DAも有線デバイスになることもあれば、無線デバイスのこともあります。
送信機アドレス(Transmitter Address : TA)
無線媒体にフレームを送信している無線デバイスのMACアドレスです。MACヘッダのAddress2は必ずTAです。
受信機アドレス(Receiver Address : RA)
無線媒体へ送信されたフレームを受信する無線デバイスのMACアドレスです。MACヘッダのAddress1は必ずRAです。
BSSID(Basic Service Set Identifier)
無線LANの基本サービスであるBSS(Basic Service Set)を識別します。つまり、無線APのMACアドレスです。
指定するMACアドレスの組み合わせ
Frame ControlのTo DSおよびFrom DSビットを組み合わせて、802.11フレームで指定するAddress1からAddress4で指定するMACアドレスは、以下の表のようになります。
To DS | From DS | Address1 | Address2 | Address3 | Address4 |
---|---|---|---|---|---|
0 | 0 | RA = DA | TA = SA | BSSID | N/A |
0 | 1 | RA = DA | TA = BSSID | SA | N/A |
1 | 0 | RA = BSSID | TA = SA | DA | N/A |
1 | 1 | RA | TA | DA | SA |
To DS/From DSの「DS」とはDistribution Systemのことです。DSは、通常は有線のイーサネットネットワークを意味しています。To DSのビットが「1」であれば、フレームの宛先が有線イーサネットネットワークのデバイスという意味です。そして、From DSビットが「1」であれば、有線イーサネットネットワークのデバイスがフレームの送信元という意味です。
To DS=0/From DS=0
To DS | From DS | Address1 | Address2 | Address3 | Address4 |
---|---|---|---|---|---|
0 | 0 | RA = DA | TA = SA | BSSID | N/A |
To DSとFrom DSがともに「0」になるのは、フレームの最終的な宛先や送信元が有線イーサネットのデバイスではなく、無線区間のみで完結する通信の場合です。ManagementフレームやControlフレームを利用した無線LANの通信の制御のときがその一例です。また、IBSS(Independent Basic Service Set)でのDataフレームの場合もあります。
具体的な例として、ManagementフレームのProbe Request/Probe ResponseでのMACアドレスの指定は、以下の図のようになります。
To DS=0/From DS=1
To DS | From DS | Address1 | Address2 | Address3 | Address4 |
---|---|---|---|---|---|
0 | 1 | RA = DA | TA = BSSID | SA | N/A |
To DS=0でFrom DS=1となるのは、有線イーサネットのデバイスから無線デバイス宛てのフレームです。以下の図は、簡単な例です。
無線クライアントのMACアドレス「Client1」は無線区間の受信機(RA)なのでAddress1です。「Client1」はフレームの最終的な宛先MACアドレス(DA)でもあります。無線区間の送信機(TA)は無線APなので、Address2にはAPのMACアドレス「AP-MAC」を指定します。本来のフレームの送信元(SA)は有線イーサネットのサーバです。Address3には、サーバのMACアドレス「Server」を指定します。
To DS=1/From DS=0
To DS | From DS | Address1 | Address2 | Address3 | Address4 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 0 | RA = BSSID | TA = SA | DA | N/A |
To DS=1、From DS=0となるのは、無線デバイスから有線イーサネットネットワークのデバイス宛てのフレームです。簡単な例を以下の図にまとめています。
無線の受信機は無線APです。Address1には無線APのMACアドレス「AP-MAC」を指定します。無線送信機は無線クライアントなので、Address2には「Client1」を指定します。そして、Address3に有線イーサネット上の最終的な宛先となる「Server」を指定します。
To DS=1/From DS=1
To DS | From DS | Address1 | Address2 | Address3 | Address4 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | RA | TA | DA | SA |
To DSとFrom DSが両方1のときのみ、Address4にMACアドレスを指定します。To DSとFrom DSが両方1になるのは、WDS(Wireless Distribution System)の通信の場合です。WDSはメッシュネットワークや無線ブリッジといった無線区間で通信を中継する形態です。以下の図は、無線LANクライアントからWi-Fiメッシュを経由して有線イーサネット上のサーバ宛ての通信の例です。
Address1は無線の中継区間の受信機のアドレスで「Mesh-Portal」を指定します。Address2は無線の中継区間の送信機のアドレスで「Mesh-1」を指定します。
Address3には、フレームの最終的なアドレスを指定するので「Server」です。そして、Address4にはフレームのもともとの送信元のMACアドレス「Client」を指定します。
無線LANの仕組み
- 無線LANとは ~手軽にLANを構築しよう!~
- IEEE802.11 無線LANの構成要素とトポロジ
- IEEE802.11 無線LAN(Wi-Fi)規格
- IEEE802.11(無線LAN/Wi-Fi)のカプセル化とフレームフォーマット
- IEEE802.11フレーム種類
- IEEE802.11フレーム MACアドレスの指定
- 無線LAN(Wi-Fi)の仕組み アソシエーション
- 無線LAN(Wi-Fi)の仕組み CSMA/CAの概要
- 無線LAN(Wi-Fi)の仕組み CSMA/CA キャリアセンス
- 無線LAN(Wi-Fi)の仕組み CSMA/CA 疑似ランダムバックオフアルゴリズム
- 無線LAN(Wi-Fi)の仕組み CSMA/CA IFS(Inter Frame Space)