専用線とは

専用線とは、企業の拠点間をあたかも1本の専用のケーブルで接続しているかのように扱うことができるWANサービスです。専用線によって、2つの拠点のルータ同士をポイントツーポイント(1対1)で接続することができます。専用線の特徴として、以下の点について解説します。

図  2つの拠点間をポイントツーポイントで接続
図 2つの拠点間をポイントツーポイントで接続
  • 通信速度が保証され可用性も高い
  • レイヤ1のWANサービス
  • アクセス回線としての用途もある

通信速度が保証され信頼性も高い

専用線は、1本の専用のケーブルで接続しているのと同等で、契約した通信速度が保証されます。また、1本のケーブルと言っても、通信キャリア内では冗長化されていて可用性(信頼性)が非常に高いWANサービスです。長時間にわたって専用線での通信ができないような状況はほとんど起こりません。

契約ユーザごとに物理的に専用のケーブルを敷設しているわけではありません。

専用線は速度が保証され、可用性も高いというメリットがある一方、デメリットとしてはコストが高くなってしまいます。専用線のコストは一般的に、契約速度と拠点間の距離によって決まります。遠距離になればなるほど、高速になればなるほどコストが跳ね上がっていきます。また、1対1の接続を行うので、たくさんの拠点を専用線で相互接続するには、専用線の回線が数多く必要になり、やはりコストが跳ね上がります。多数の拠点を効率よく接続するためには、専用線よりもIP-VPNや広域イーサネットを利用します。

レイヤ1のWANサービス

専用線は、1本の専用のケーブルとみなせるということは、物理信号がそのまま伝わっていくということです。ある拠点から送り出された光信号や電気信号は、そのまま接続先の拠点まで伝わっていきます。物理的な信号がそのまま伝わっていくので、レイヤ1のWANサービスです。

図 2 レイヤ1のWANサービス 物理信号を転送
図 レイヤ1のWANサービス 物理信号を転送

専用線上にIPパケットを送り出すためには、レイヤ2プロトコルでカプセル化して、物理信号に変換します。専用線で利用するレイヤ2プロトコルとして、以下のものが挙げられます。

  • HDLC
  • PPP
  • イーサネット

レイヤ2プロトコルにHDLCまたはPPPを利用するときには、シリアルインタフェースで専用線に接続します。HDLCを使うことはほとんどなく、たいていはPPPのカプセル化です。

レイヤ2プロトコルにイーサネットを利用する専用線はイーサネット専用線で、イーサネットインタフェースで接続します。イーサネットは本来マルチアクセスですが、イーサネット専用線はポイントツーポイント接続です。

レイヤ2プロトコルにATMを利用するATM専用線もあります。
イーサネット専用線はイーサネットフレームを転送するレイヤ2のWANサービスととらえることもできます。

アクセス回線としての用途もある

専用線の用途として、企業の2つの拠点間をポイントツーポイントで接続する以外にWANサービスやインターネット接続サービスのアクセス回線としての用途もあります。

IP-VPNや広域イーサネットといったWANサービスを利用するには、企業の拠点を通信キャリアのWANサービスのネットワークにつながないといけません。WANサービスにつなぐための回線をアクセス回線と呼んでいます。

インターネット接続サービスのアクセス回線とすることもできます。インターネットに接続するにはISPのインターネット接続サービスを契約します。そして、企業の拠点をISPのネットワークにつなぎます。そのためのアクセス回線として専用線を利用することができます。

図 アクセス回線としての用途
図 アクセス回線としての用途

専用線のポイント

専用線のポイント
  • 専用線によって2つの拠点のルータ間を直接ケーブルで接続しているかのように扱うことができる
  • 専用線は通信速度が保証され、可用性も高い。ただし、コストが高くなる
  • ある拠点から送り出された物理信号がそのままの形で対向の拠点まで伝わっていく
  • WANサービスやインターネット接続サービスのアクセス回線として専用線を利用することもある