バックツーバック接続とは

ルータのシリアルインタフェース同士を直接接続する接続形態をバックツーバック接続といいます。通常は、ルータのシリアルインタフェースはDSU経由で専用線などのWANに接続します。テスト目的で専用線によって2拠点を接続しているのと同等のネットワーク構成とするためにバックツーバック接続を行います。

図 バックツーバック接続
図 バックツーバック接続

clock rateの設定

バックツーバック接続を行うには、片方のルータでDSUの代わりにクロック信号を提供する必要があります。クロックを提供するにシリアルケーブルのDCEコネクタが接続されているルータのインタフェースコンフィグレーションモードで次のコマンドを入力します。

clock rateの設定

(config)#interface <interface-name>
(config-if)#clock rate <bps>

<interface-name> : clock rateを設定するシリアルインタフェース名
<bps> : clock rateの値。bps単位

ここで設定したクロックレートが物理的な伝送速度となります。設定できるクロックレートは、シリアルインタフェースやシリアルケーブルの種類によって異なります。バックツーバック接続を行ううえで、DCEコネクタが接続されているシリアルインタフェースを確認するには、show controllersコマンドを使います。

R1#show controllers se 0/1
Interface Serial0/1
Hardware is PowerQUICC MPC860
DCE V.35, clock rate 128000
idb at 0x82BC0458, driver data structure at 0x82BC822C
~省略~

また、設定したクロックレートとshow interfacesのBW(Bandwidth)は連動しないので注意してください。Cisco IOSではシリアルインタフェースのデフォルトのBWは1544kbpsです。たとえ、クロックレートを64kbpsに設定していてもBWを1544kbpsとして認識します。そのため、OSPFやEIGRPなどのルーティングプロトコルのメトリック計算を正しく行うためには、クロックレートにあわせたBWの設定を行ってください。インタフェースのBWの設定を行うには、インタフェースコンフィグレーションモードで次のコマンドを入力します。

BWの設定

(config)#interface <interface-name>
(config-if)#bandwidth <kbps>

<interface-name> : BWを設定するシリアルインタフェース名
<kbps> : BWの値。kbps単位

クロックレートはbps単位ですが、BWはkbps単位であることに注意してください。IOSバージョンによってはクロックレートに応じて自動的にBWが認識されます。

clock rateの設定例

R1とR2間を128kbpsの専用線で接続することを想定して、シリアルインタフェース同士を直接接続するバックツーバック接続を行います。

図 clock rateの設定 ネットワーク構成
図 clock rateの設定 ネットワーク構成

clock rateの設定をしていない状態

clock rateの設定をしていないとき、R1でshow controllers serial0/1を見ると、DCEコネクタが接続されていますが、clock rateの設定が入っていないことがわかります。また、show interface serial0/1ではBWはデフォルトの1544kbpsです。

R1 show controllers

Router#show controllers serial 0/1
Interface Serial0/1
Hardware is PowerQUICC MPC860
DCE V.35, no clock
idb at 0x82BC0458, driver data structure at 0x82BC822C
~省略~
R1#show interface serial 0/0
Serial0/1 is up, line protocol is up
  Hardware is PowerQUICC Serial
  MTU 1500 bytes, BW 1544 Kbit, DLY 20000 usec,
     reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255
  Encapsulation HDLC, loopback not set
~省略~

また、DTEコネクタのR2ではshow controllers serial0/0/0とshow interface serial0/0/0は次のようになります。

R2 show controllers/show interface

R2#show controllers serial 0/0/0
Interface Serial0/0/0
Hardware is GT96K
DTE V.35idb at 0x456A7DA8, driver data structure at 0x456AF4C4
~省略~
R2#show interfaces serial 0/0/0
Serial0/0/0 is up, line protocol is down
  Hardware is GT96K Serial
  MTU 1500 bytes, BW 1544 Kbit, DLY 20000 usec,
     reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255
  Encapsulation HDLC, loopback not set
~省略~

R2のSerial0/0/0はline protocolがdownの状態です。バックツーバック接続では、DCEコネクタを接続しているインタフェースにclock rateの設定をしていないと両方のインタフェースがup/upになりません。

clock rateの設定

DCEコネクタを接続しているR1で128kbpsのclock rateを設定します。

R1 clock rateの設定

interface Serial 0/1
 clock rate 128000

設定可能なclock rateの値はシリアルインタフェースの種類によって変わります。

clock rateを設定したあとにshow controllers serial0/1とshow interface serial0/0は次のようになります。

R1 show controllers/show interface

R1#show controllers se 0/1
Interface Serial0/1
Hardware is PowerQUICC MPC860
DCE V.35, clock rate 128000
idb at 0x82BC0458, driver data structure at 0x82BC822C
~省略~
R1#show interface serial 0/0
Serial0/1 is up, line protocol is up
  Hardware is PowerQUICC Serial
  MTU 1500 bytes, BW 1544 Kbit, DLY 20000 usec,
     reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255
  Encapsulation HDLC, loopback not set
~省略~

show controllersでは、128kbpsのclock rateの設定が反映されていますが、show interfaceのBWはデフォルトのままです。そして、DTEコネクタのR2では、R1のclock rateが設定されればインタフェースがup/upになりますが、BWはデフォルトのままです。

R2 show interface

R2#show int se 0/0/0
Serial0/0/0 is up, line protocol is up
  Hardware is GT96K Serial
  MTU 1500 bytes, BW 1544 Kbit, DLY 20000 usec,
     reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255
  Encapsulation HDLC, loopback not set
~省略~

BWの設定

OSPFなどのルーティングプロトコルのメトリック計算を正しく行うためには、clock rateに合わせてBWの設定も必要です。R1とR2の両方でBWを128kbpsに設定します。

R1 BWの設定

interface Serial 0/1
 bandwidth 128

R2 BWの設定

interface Serial 0/0/0
 bandwidth 128

すると、R1とR2で、clock rateに応じたBWのインタフェースとして利用できるようになります。

R1 show interface

R1#show interface serial 0/1
Serial0/1 is up, line protocol is up
  Hardware is PowerQUICC Serial
  MTU 1500 bytes, BW 128 Kbit, DLY 20000 usec,
     reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255
  Encapsulation HDLC, loopback not set
~省略~

R2 show interface

R2#show interface se 0/0/0
Serial0/0/0 is up, line protocol is up
  Hardware is GT96K Serial
  MTU 1500 bytes, BW 128 Kbit, DLY 20000 usec,
     reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255
  Encapsulation HDLC, loopback not set
~省略~
図 バックツーバック接続での設定
図 バックツーバック接続での設定

TCP/IPの通信を行うには、さらにIPアドレスの設定も必要です。また、シリアルインタフェースのデフォルトのカプセル化プロトコルはHDLCです。たいていはHDLCではなくPPPを使うので、別途PPPのカプセル化の設定も行います。