目次
概要
PPPのIPCPによって、対向のインタフェースにIPアドレスを割り当てます。ここでは、IPアドレスだけでなく、サブネットマスクも割り当てるための設定を考えます。
ネットワーク構成
設定概要
R1
interface Loopback0 ip address 1.1.1.1 255.255.255.255 ip ospf 1 area 0 ! interface Serial0/0 ip address 192.168.12.1 255.255.255.0 encapsulation ppp ip ospf 1 area 0 ! router ospf 1 router-id 1.1.1.1 log-adjacency-changes
R2
interface Loopback0 ip address 2.2.2.2 255.255.255.255 ip ospf 1 area 0 ! interface Serial0/0 no ip address encapsulation ppp ip ospf 1 area 0 ! router ospf 1 router-id 2.2.2.2 log-adjacency-changes
問題
R2のSerial0/0には、明示的にIPアドレスの設定を行いません。R2 Serial0/0には、192.168.12.2のIPアドレスを割り当てたいと考えています。また、PPPリンク上でOSPFネイバーを確立してルーティングテーブルを作成できるようにします。
R1、R2にはどのような設定を行えばよいでしょうか。
解答
R1
interface Serial0/0 peer default ip address 192.168.12.2 ppp ipcp mask 255.255.255.0
R2
ip dhcp pool LOCAL import all origin ipcp ! interface Serial0/0 ip address pool LOCAL ppp ipcp mask request
解説
【IPCPでサブネットマスクの通知方法】
PPPのIPCPでは、IPアドレス以外のサブネットマスクやDNSサーバの情報も通知することができます。サブネットマスクなどを通知するサーバ側では、次の設定を行います。
(config-if)#ppp ipcp mask <subnet-mask>
(config-if)#ppp ipcp dns <dns-server-ip-address>
そして、クライアント側では、サブネットマスクやDNSサーバの情報をリクエストするために次の設定を行います。
(config-if)#ppp ipcp mask request
(config-if)#ppp ipcp dns request
ただ、クライアント側でIPCPで通知されたサブネットマスクやDNSサーバの情報を利用するには、ちょっと回りくどい設定が必要です。IPCPでIPアドレスをリクエストするには、クライアント側で次の設定を行います。
(config-if)#ip address negotiated
しかし、このip address negotiatedの設定では、クライアント側でIPアドレス以外の情報を採用しないようです。ppp ipcp mask requestなどの設定を行なっても、結局は/32のサブネットマスクになってしまいます。
IPCPで通知されたIPアドレス以外の情報も利用できるようにするためには、クライアント側でいったんローカルのDHCPプールにIPCPで通知された情報をインポートします。そして、ローカルのDHCPプールからPPPインタフェースにIPアドレスを割り当てるようにします。そのための設定は、次のように行います。
(config)#ip dhcp poll <pool-name>
(config-dhcp)#import all
(config-dhcp)#origin ipcp
(config-if)#ip address pool <pool-name>
【R1/R2の設定】
では、実際にR1とR2での設定を考えます。IPCPのサーバ側であるR1では、R2に割り当てるIPアドレスとサブネットマスクを設定します。IPアドレスは、最もシンプルな特定のIPアドレスを割り当てるものとします。特定のIPアドレスの割り当ては、peer default ip addressコマンドです。それに加えて、通知するサブネットマスクをppp ipcp maskコマンドで設定します。R1での設定は、次のようになります。
R1
interface Serial0/0 peer default ip address 192.168.12.2 ppp ipcp mask 255.255.255.0
続いて、IPCPのクライアント側であるR2では、サブネットマスクをリクエストするためにppp ipcp mask requestコマンドが必要です。
R2
interface Serial0/0 ppp ipcp mask request
さらに、IPCPで取得した情報をローカルのDHCPプールにインポートして、Serial0/0のIPアドレスをローカルDHCPプールから割り当てるための設定を行います。
R2
ip dhcp pool LOCAL import all origin ipcp ! interface Serial0/0 ip address pool LOCAL
R2のSerial0/0のIPアドレスを確認すると、次のように192.168.12.2/24が割り当てられていることがわかります。
R2
R2#show ip interface se 0/0 Serial0/0 is up, line protocol is up Internet address is 192.168.12.2/24 Broadcast address is 255.255.255.255 Address determined by setup command Peer address is 192.168.12.1 MTU is 1500 bytes Helper address is not set ~省略~
そして、R1と同一サブネット上なのでOSPFネイバーを確立して、OSPFのルーティングが可能です。
R2
R2#show ip ospf neighbor Neighbor ID Pri State Dead Time Address Interface 1.1.1.1 0 FULL/ - 00:00:32 192.168.12.1 Serial0/0 R2#show ip route ospf 1.0.0.0/32 is subnetted, 1 subnets O 1.1.1.1 [110/65] via 192.168.12.1, 00:45:39, Serial0/0
PPPのIPCPでサブネットマスクも割り当てる設定について、以下のWebページも参考にしてください。
まとめ
- IPCPでIPアドレス以外の情報を通知することもできる
- IPCPでサブネットマスクを通知するためには、サーバ側で次のコマンドを
設定する。
(config-if)#ppp ipcp mask - IPCPのクライアント側では、次のコマンドでサブネットマスクをリクエストする
(config-if)#ppp ipcp mask request
- IPアドレス以外の情報を利用するためには、IPCPで取得した情報をローカルDHCPプールへインポートし、プールからIPアドレスの割り当てを行う
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