概要

スマートフォンは、4G/5G携帯電話回線で常時インターネットに高速で接続しています。テザリングによって、スマートフォンのインターネット接続回線を他の機器でも利用できるようになります。つまり、テザリングとはスマートフォンのインターネット回線にその他の機器を相乗りさせるための機能です。このページで、テザリングについて解説します。

図 テザリングの概要
図 テザリングの概要

テザリングにはWi-Fiテザリング/USBテザリング/Bluetoothテザリングがあります。最も一般的なWi-Fiテザリングについて扱います。

テザリングとは

テザリングとは、スマートフォンをモバイルルータとして利用する機能です。スマートフォンは、4G/5G携帯電話回線で常時インターネットに高速で接続しています。テザリングによって、スマートフォンはモバイルルータとなります。テザリングは英単語の「tethering」をそのままカタカナ表記しているだけです。「tether」のもともとの意味は、「何かをつなぎとめる」といった意味です。その他の機器をスマートフォンにつなぎとめて、スマートフォンのインターネット接続を共有できるようにするといった意味合いです。

テザリングを有効にしたとき、スマートフォンはモバイルルータとして主に以下の機能を提供します。

  • Wi-Fiアクセスポイント
  • DHCPサーバ
  • NAT(Network Address Translation)
図 モバイルルータになる
図 モバイルルータになる

Wi-Fiアクセスポイント

タブレットやノートPCなどの機器は、Wi-Fiでスマートフォンに接続します。そのため、スマートフォンはテザリングを有効にすることで、Wi-Fiアクセスポイントになります。テザリングの設定で、SSIDやWi-Fi接続時の認証などのセキュリティ設定を行います。Wi-Fiアクセスポイントにアソシエーションすることで、Wi-Fiネットワーク内のWi-Fiインタフェースを認識して、Wi-Fiの電波を送受信できるようになります。

図 Wi-Fiアクセスポイント機能
図 Wi-Fiアクセスポイント機能

DHCPサーバ

テザリングを有効にすると、スマートフォンはDHCPサーバとしても動作します。Wi-Fiで接続しているタブレットやノートPCにDHCPでIPアドレスなどの設定を配布します。DHCPサーバとして機能するためには、IPアドレスが必要です。Wi-Fiインタフェースにはプライベートアドレスを割り当てます。設定で変更できますが、ほとんどの場合、デフォルトのプライベートアドレスを利用しているでしょう。スマートフォンのWi-FiインタフェースのIPアドレスは、デフォルトゲートウェイやDNSサーバのIPアドレスとなります。

図 DHCPサーバ機能
図 DHCPサーバ機能

NAT(Network Address Translation)

スマートフォンには、4G/5G携帯電話回線のインタフェースとWi-Fiのインタフェースの2つの無線のインタフェースがあります。4G/5Gのインタフェースには、携帯電話キャリアからIPアドレスを割り当てられます。以前は、グローバルアドレスを割り当てていることもありましたが、今では、携帯電話キャリアのポリシーに基づいたプライベートアドレスであることがほとんどです。

図 テザリングのときのIPアドレス
図 テザリングのときのIPアドレス

Wi-Fiインタフェースのプライベートアドレスは、Wi-Fiネットワーク内で通信するためのIPアドレスです。DHCPでスマートフォンにつながっているPCやタブレットなどにWi-Fi側のプライベートアドレスを割り当てているのですが、そのままでは、インターネットへアクセスできません。

スマートフォン配下のPCなどからインターネットへアクセスするときには、送信元IPアドレスをスマートフォンの4G/5GインタフェースのIPアドレスにNAT変換します。4G/5GインタフェースのIPアドレスもほとんどプライベートアドレスで、やはりそのままではインターネットにアクセスできません。携帯電話キャリア内でさらにNATでグローバルアドレスに変換されることになります。

図 NAT機能
図 NAT機能

なお、インターネットからの戻りのデータについては、宛先IPアドレスが変換されることになります。

ここで述べている「NAT」は単なるIPアドレスの変換だけではなく、TCP/UDPポート番号の対応も保持するNAPT(Network Address Port Translation)も含めています。なお、CiscoではNAPTを「PAT(Port Address Translation)」と表現します。

Wi-Fiテザリングの設定(Android)

Androidでテザリングを有効にするには、[設定]→[接続]を開きます。

[テザリング]から[Wi-Fiテザリング]を有効にできます。

[Wi-Fi]テザリングの画面から、Wi-FiのSSID/パスワードの設定が可能です。

まとめ

まとめ

  • テザリングとは、スマートフォンのインターネット接続を他の機器でも共有できるようにする機能です。
  • テザリングを有効にすることでスマートフォンはモバイルルータとなります。
  • テザリングによるモバイルルータの主な機能は以下の3つです。
    • Wi-Fiアクセスポイント
    • DHCPサーバ
    • NAT(Network Address Translation)