概要

SW1/SW2/SW3の3台のスイッチでVLANを利用して、2つの独立したネットワークを構成します。そのために、VLANの作成とアクセスポート/トランクポート(タグVLAN)の設定を行います。VLANを設定するときには、スイッチ内部でVLANとポートがどのように関連付けられるかをきちんとイメージしてください。

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Cisco Packet Tracerの使い方について、以下のリンクに解説記事をまとめています。

動画解説

ネットワーク構成

図 Cisco VLANの詳細な設定例 ネットワーク構成
図 Cisco VLANの詳細な設定例 ネットワーク構成
PCIPアドレス
PC11192.168.10.11/24
PC12192.168.10.12/24
PC21192.168.20.21/24
PC22192.168.20.22/24
表 PCのIPアドレス

設定条件

  • SW1/SW2/SW3でVLAN10とVLAN20を作成します。
  • PCが接続されているポートを適切なVLANのアクセスポートとして設定します。
  • スイッチ間のリンクのポートをトランクポートとして設定します。
  • VLAN10のPC11-PC12間およびVLAN20のPC21-PC22間で通信ができることを確認します。

初期設定

SW1/SW2/SW3

  • ホスト名

PC11/PC12/PC21/PC22

  • ホスト名
  • IPアドレス/サブネットマスク

設定と確認

Step1:VLANの作成

SW1/SW2/SW3でVLAN10およびVLAN20を作成します。SW1とSW3だけではなくSW2にもVLAN10、VLAN20が必要です。

SW1/SW2/SW3 VLANの作成

vlan 10,20

機種によってはVLANの一括作成に対応していません。Cisco Packet Tracerでも、VLANの一括作成に対応していません。一括作成できない場合は、VLANを一つずつ作成してください。

VLANを作成しただけでは、スイッチの内部にポートを持っていない仮想的なスイッチを作っているだけです。SW1でVLAN10とVLAN20を作成すると、次の図のようになっています。

図 VLANの作成(SW1)
図 VLANの作成(SW1)

Step2:アクセスポートの設定

Step1で作成したVLANにポートを割り当てます。SW1とSW3でVLAN10およびVLAN20のアクセスポートを設定します。アクセスポートの設定とは、スイッチ内部のVLANごとの仮想的なスイッチにポートを持たせることです。

スイッチポートVLAN接続先
SW1Fa0/110PC11
 Fa0/220PC21
SW3Fa0/110PC12
 Fa0/220PC22
表 アクセスポート

今回のネットワーク構成では、アクセスポートの設定についてSW1もSW3もコマンドは共通です。

SW1/SW3 アクセスポートの設定

interface FastEthernet0/1
 switchport mode access
 switchport access vlan 10
!
interface FastEthernet0/2
 switchport mode access
 switchport access vlan 20

Step3:VLANとアクセスポートの確認

SW1とSW3でshow vlan briefコマンドによって、VLANとアクセスポートの割り当てが正しく設定されていることを確認します。SW1では、以下の出力です。

SW1 VLANとアクセスポートの確認

SW1#show vlan brief 

VLAN Name                             Status    Ports
---- -------------------------------- --------- -------------------------------
1    default                          active    Fa0/3, Fa0/4, Fa0/5, Fa0/6
                                                Fa0/7, Fa0/8, Fa0/9, Fa0/10
                                                Fa0/11, Fa0/12, Fa0/13, Fa0/14
                                                Fa0/15, Fa0/16, Fa0/17, Fa0/18
                                                Fa0/19, Fa0/20, Fa0/21, Fa0/22
                                                Fa0/23, Fa0/24, Gig0/1, Gig0/2
10   VLAN0010                         active    Fa0/1
20   VLAN0020                         active    Fa0/2
1002 fddi-default                     active    
1003 token-ring-default               active    
1004 fddinet-default                  active    
1005 trnet-default                    active    

アクセスポートの設定をすることで、VLANによるスイッチ内部の仮想的なスイッチがポートを持てるようになります。SW1での内部のVLANとポートの割り当ては以下のようになっています。

図 アクセスポートの設定(SW1)
図 アクセスポートの設定(SW1)

Step4:トランクポート(タグVLAN)の設定

各スイッチ間は、1つのリンクでVLAN10とVLAN20のイーサネットフレームを転送しなければいけません。1つのリンクで複数のVLANのイーサネットフレームを転送するために、トランク(タグVLAN)ポートの設定を行います。

SW1/SW3 トランクポート(タグVLAN)の設定

interface FastEthernet0/24
 switchport mode trunk

SW2 トランクポート(タグVLAN)の設定

interface FastEthernet0/23
 switchport mode trunk
!
interface FastEthernet0/24
 switchport mode trunk

Step5:トランクポートの確認

各スイッチ間がきちんとトランクポートとして動作していることを確認します。show interface trunkコマンドを利用するのがわかりやすいです。SW1では、次のような表示です。

SW1 show interface trunk

SW1#show interfaces trunk 
Port        Mode         Encapsulation  Status        Native vlan
Fa0/24      on           802.1q         trunking      1

Port        Vlans allowed on trunk
Fa0/24      1-1005

Port        Vlans allowed and active in management domain
Fa0/24      1,10,20

Port        Vlans in spanning tree forwarding state and not pruned
Fa0/24      1,10,20

トランクポートは複数のVLANに割り当てているポートなので、SW1 Fa0/24はVLAN10とVLAN20の両方のVLANに割り当てられています。

図 トランクポートの設定(SW1)
図 トランクポートの設定(SW1)

SW2でのshow interface trunkコマンドの表示は次のようになります。

SW2 show interface trunk

SW2#show interfaces trunk 
Port        Mode         Encapsulation  Status        Native vlan
Fa0/23      on           802.1q         trunking      1
Fa0/24      on           802.1q         trunking      1

Port        Vlans allowed on trunk
Fa0/23      1-1005
Fa0/24      1-1005

Port        Vlans allowed and active in management domain
Fa0/23      1,10,20
Fa0/24      1,10,20

Port        Vlans in spanning tree forwarding state and not pruned
Fa0/23      1,10,20
Fa0/24      1,10,20

SW2の内部のVLANとポートの割り当てを図にします。

図 トランクポートの設定(SW2)
図 トランクポートの設定(SW2)

SW3でのshow interface trunkコマンドの表示は次のようになります。

SW3 show interface trunk

SW#show interfaces trunk 
Port        Mode         Encapsulation  Status        Native vlan
Fa0/24      on           802.1q         trunking      1

Port        Vlans allowed on trunk
Fa0/24      1-1005

Port        Vlans allowed and active in management domain
Fa0/24      1,10,20

Port        Vlans in spanning tree forwarding state and not pruned
Fa0/24      1,10,20

そして、SW3の内部ではVLANとポートの対応は次の図のようになっています。

図 トランクポートの設定(SW3)
図 トランクポートの設定(SW3)

ここまでの設定で、SW1/SW2/SW3をまたがったVLAN10とVLAN20の設定はすべて完了です。

Step6:通信確認

SW1/SW2/SW3をまたがって、VLAN10内とVLAN20内の通信が正常にできることを確認します。VLAN10のPC11からPC12にPingを実行すると、正常に応答が返ってきます。

PC11からPC12へPing(VLAN10)

C:\>ping 192.168.10.12

Pinging 192.168.10.12 with 32 bytes of data:

Reply from 192.168.10.12: bytes=32 time<1ms TTL=128
Reply from 192.168.10.12: bytes=32 time<1ms TTL=128
Reply from 192.168.10.12: bytes=32 time<1ms TTL=128
Reply from 192.168.10.12: bytes=32 time<1ms TTL=128

Ping statistics for 192.168.10.12:
    Packets: Sent = 4, Received = 4, Lost = 0 (0% loss),
Approximate round trip times in milli-seconds:
    Minimum = 0ms, Maximum = 0ms, Average = 0ms

同様にVLAN20のPC21からPC22へPingを実行すると、正常に応答が返ってきます。

PC21からPC22へPing(VLAN20)

C:\>ping 192.168.20.22

Pinging 192.168.20.22 with 32 bytes of data:

Reply from 192.168.20.22: bytes=32 time<1ms TTL=128
Reply from 192.168.20.22: bytes=32 time<1ms TTL=128
Reply from 192.168.20.22: bytes=32 time<1ms TTL=128
Reply from 192.168.20.22: bytes=32 time<1ms TTL=128

Ping statistics for 192.168.20.22:
    Packets: Sent = 4, Received = 4, Lost = 0 (0% loss),
Approximate round trip times in milli-seconds:
    Minimum = 0ms, Maximum = 0ms, Average = 0ms

Step7:論理構成を考える

ここまで設定したネットワークの論理構成を考えます。論理構成は、物理的な配置や配線などを抽象化しています。ネットワークがいくつで、それぞれのネットワークがどのように相互接続されているかを表すのが論理構成です。

SW1からSW3の内部のVLANとポートの割り当てをあらためてまとめると、次の図のようになります。

図 論理構成を考える Part1
図 論理構成を考える Part1

各スイッチ内のVLANの設定によって作成したVLAN10とVLAN20の仮想的なスイッチがそれぞれどんな風につながっているかに注目して、図を少し書き換えます。

図 論理構成を考える Part2
図 論理構成を考える Part2

そして、ここから抽象化します。各スイッチの枠をとっぱらいましょう。また、物理的な配線やポートはもう気にしません。各スイッチに分散しているVLAN10とVLAN20を1つにまとめてしまいます。すると、2つの独立したVLAN10のネットワークとVLAN20のネットワークができあがります。そして、VLAN10のネットワークにはPC11とPC12がつながっていて、VLAN20のネットワークにはPC21とPC22がつながっています。

VLANは1つのネットワークで、TCP/IPではネットワークアドレスでネットワークを識別します。今回のネットワーク構成では、VLAN10は192.168.10.0/24に対応づけるようにしています。そのため、VLAN10につながるPC11とPC12には、192.168.10.0/24内のIPアドレスを設定しています。VLAN20は192.168.20.0/24に対応付けるようにしています。VLAN20につながるPC21とPC22には192.168.20.0/24内のIPアドレスを設定しています。

図 論理構成を考える Part3
図 論理構成を考える Part3

なお、VLAN10とVLAN20は独立しているので、VLAN間の通信はできません。VLAN10とVLAN20間で通信する必要があれば、レイヤ3スイッチなどでVLAN同士を相互接続するVLAN間ルーティングを行います。

VLAN(Virtual LAN)の仕組み