目次
VTPの概要
VTP(VLAN Trunking Protocol)とは、スイッチ間でVLANの設定情報を同期するためのCisco独自のプロトコルです。Ciscoでは、VLANの設定情報はVLANデータベースに保持しています。VTPは、スイッチ間でVLANデータベースを同期するプロトコルです。VTPによって、1台のスイッチでVLANを作成すると、そのVLANが他のスイッチにも自動的に作成されるようにできます。
VLANの設定の手順は大きく以下の2つの手順です。
- VLANの作成
- ポートの割り当て
VTPを利用すると、1.の手順をシンプルにできます。1台1台のスイッチでVLANを作成する必要がありません。なお、VTPはVLANの作成だけではなく、VLAN名の変更やVLANの削除などもスイッチ間で同期します。VTPによってVLANの設定情報を同期する範囲をVTPドメインと呼びます。なお、VTPによってスイッチ間でVLAN設定情報を同期するには、スイッチ間がトランクリンクで接続されていることが前提です。
VTPはVLANの設定を同期するだけであることに注意してください。各スイッチでポートをVLANに割り当てるアクセスポートまたはトランクポートの設定はやはり必要です。
VTPモード
VTPの動作は次の3つのモードがあります。
- サーバモード(デフォルト)
- クライアントモード
- トランスペアレント(透過)モード
VTPの各モードの動作を、表にまとめると、以下のようになります。
VLANの作成・変更・削除 | アドバタイズメントの生成 | アドバタイズメントの転送 | 同期 | |
サーバ | ○ | ○ | ○ | ○ |
クライアント | × | ○ | ○ | ○ |
トランスペアレント | ○ | × | ○ | × |
VTPサーバモード
VTPサーバモードのスイッチは、VTPドメインに共通したVLANの作成、変更、削除を行うことができます。何らかのVLAN設定情報を変更すると、VTPアドバタイズメントを生成して、他のスイッチへ送信します。VTPアドバタイズメントは定期的な間隔(デフォルト300秒)でも送信します。
他のスイッチからVTPアドバタイズメントを受信すると、VLAN設定情報を同期して、さらに別にスイッチへ転送します。
VTPクライアントモード
VTPクライアントモードのスイッチは、自身でVLANの作成などを行うことができません。サーバモードのスイッチにおけるVLAN設定情報と同期をとるためのモードがクライアントモードです。VTPアドバタイズメントを受信すると、VLAN設定情報を同期して、さらに別にスイッチへ転送します。
VTPトランスペアレントモード
VTPトランスペアレントモードのスイッチは、VTP本来の目的からははずれてしまうモードです。他のスイッチとVLAN設定情報を同期しません。そのスイッチローカルでVLANを作成、変更、削除が可能です。VTPトランスペアレントモードのスイッチはVLAN設定情報はVLANデータベースには保持せず、running-configやstartup-config上でVLAN設定コマンドが保持されるようになります。1006以降のVLAN番号を利用するときにはVTPトランスペアレントモードにする必要があります。
他のスイッチからVTPアドバタイズメントを受信すると、さらに別にスイッチへ転送します。そのため、間にトランスペアレントモードのスイッチがあっても他のスイッチのVLAN設定情報の同期には影響しません。
コンフィグレーションリビジョン番号
VTPアドバタイズメントのVLAN設定情報の新しさを表すパラメータがコンフィグレーションリビジョン番号です。VTPサーバでVLANの作成や変更、削除などVLANデータベースを変更するたびにコンフィグレーションリビジョン番号が1ずつ増えます。コンフィグレーションリビジョン番号が大きいほど、より新しいVLAN設定情報であるということを意味します。
なお、VTPトランスペアレントモードは、VLANデータベースを持たないので、コンフィグレーションリビジョン番号には意味がなく、値は0となります。
既存のネットワークに新しくスイッチを追加する際、コンフィグレーションリビジョン番号が大きいと、問題が起こる可能性があります。新しく追加したスイッチのVLANデータベースに既存のスイッチが同期すると、本来必要なVLANが削除されてしまうことがあります。新しくスイッチを追加する際には、いったんトランスペアレントモードにしてコンフィグレーションリビジョン番号をクリアしてください。
関連記事
VLAN(Virtual LAN)の仕組み
- ネットワークを分割する必要性
- ネットワークを分割することの詳細
- VLANの概要
- VLANの仕組み
- アクセスポート ~1つのVLANのみに割り当てるポート~
- トランクポート(タグVLAN) ~複数のVLANに割り当てるポート~
- トランクプロトコルのまとめ ~IEEE802.1QとISL~
- ネイティブVLAN
- ネイティブVLAN不一致の具体例
- ホストでのトランクポートの利用 ~PC/サーバのポートを分割~
- VLANの仕組みをより深く理解する
- VLANの仕組みをより深く理解するための演習
- Cisco DTP ~対向ポートに合わせてトランクポート/アクセスポートに~
- 複数スイッチをまたがるVLANの注意点
- Cisco VLANの設定と確認コマンドを詳しく解説!これでCiscoのVLANの設定はマスター
- Cisco VLANの詳細な設定例
- VLANを削除するときの注意点
- Voice VLAN ~IP PhoneをつなげるためのVLAN~
- VTP ~VLANの設定情報を同期~
- VTPプルーニング ~トランクリンクへの不要なフラッディングを止める~
- VTPの設定と確認
- VLAN間ルーティングの概要
- ルータによるVLAN間ルーティング
- レイヤ3スイッチによるVLAN間ルーティング
- Cisco ルータによるVLAN間ルーティングの設定と確認
- Cisco レイヤ3スイッチによるVLAN間ルーティングの設定(SVI/ルーテッドポート)
- Cisco レイヤ3スイッチ 基本的な設定例
- 演習:レイヤ3スイッチの基本[Cisco]
- 「VLANにIPアドレスを設定する」は間違い
- レイヤ3スイッチのポートの考え方のまとめ ~アクセスポート/トランクポート/SVI/ルーテッドポート~
- プライベートVLAN
- プライベートVLANの設定例
- LANの構成パターン ~2ティア/3ティア~