EIGRPの特徴

EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)は、Cisco独自の内部ゲートウェイルーティングプロトコルであるIGRPを拡張したものです。EIGRPによって、大規模なネットワークにおいてさらに効率よくルーティングすることが可能です。

現在では、IGRPを利用することはありません。

EIGRPの特徴として、次のようなことが挙げられます。

  • IGPs
  • ハイブリッド型ルーティングプロトコル(拡張ディスタンスベクタ)
  • Helloパケットによる定期的なキープアライブ
  • ネットワーク変更時のみのアップデート
  • クラスレスルーティングプロトコル
  • メトリックは帯域幅や遅延などから算出する複合メトリック
  • 不等コストロードバランス
  • 高速なコンバージェンス
  • ルーティングループが発生する可能性が極めて少ない
  • マルチキャストを利用した通信(EIGRPのマルチキャストグループ 224.0.0.10)
  • 任意のルート集約
  • 認証機能のサポート
  • 設定が容易
  • Cisco独自のルーティングプロトコル

IGPs

EIGRPは、RIP、OSPFと同様にIGPsの一種です。つまり、同一の管理組織が管理する自律システム内部のネットワークをルーティングするために利用するルーティングプロトコルです。EIGRPでは、自律システム(Autonomous System : AS)を識別するために、EIGRPの設定時にAS番号を指定します。同じAS番号の設定を行っているEIGRPルータ間でのみルート情報を交換できます。

ハイブリッド型ルーティングプロトコル(拡張ディスタンスベクタ)

EIGRPはハイブリッド型ルーティングプロトコルです。または、拡張ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコルと呼ばれることもあります。ハイブリッドとは、「混合」という意味です。EIGRPは、本質的にはRIPと同じく、ディスタンスベクタ型ルーティングプロトコルです。そして、リンクステート型ルーティングプロトコルの特徴を取り入れることによって、より大規模なネットワークを効率よくルーティングできるようになっています。

Helloパケットによる定期的なキープアライブ

EIGRPで取り入れているリンクステート型ルーティングプロトコルの特徴としてHelloパケットによるキープアライブがあります。RIPでは、定期的なルート情報のやり取りによって、他のルータが動作していることを確認しています。ですが、EIGRPはOSPFと同じように定期的にHelloパケットをやり取りすることによって他のルータの動作を確認します。

ネットワーク変更時のみのアップデート

EIGRPでは、何かネットワークに変更があったときのみその情報を送信するトリガー度アップデートを行います。ことになります。

クラスレスルーティングプロトコル

EIGRPはルート情報の中に、ネットワークのサブネットマスクの情報も含めて送るクラスレスルーティングプロトコルです。ですから、VLSMでアドレッシングされているネットワークでも利用できます。

メトリックは帯域幅や遅延などから算出する複合メトリック

EIGRPのメトリックは、「帯域幅」「遅延」「負荷」「信頼性」「MTUサイズ」を組み合わせた複合メトリックを採用しています。

不等コストロードバランス

そして、メトリックが異なる経路でもロードバランスを行うことができる不等コストロードバランスもサポートしています。


不等コストロードバランスについて、以下の記事をご覧ください。


高速なコンバージェンス

EIGRPを有効にしたネットワークにおいて、障害の発生や新しいネットワークの追加など、何らかのネットワークに対する変更が発生したときのコンバージェンスはDUAL(Diffusing Update ALgorithm)と呼ばれるアルゴリズムを用いることによって非常に高速になっています。障害発生時には、あらかじめフィージブルサクセサというバックアップルートをあらかじめ確保しておくことができます。フィージブルサクセサが存在すれば、すぐにコンバージェンスさせることができます。OSPFよりも高速なコンバージェンスが可能です。


EIGRPのルートの切り替えについて、以下の記事で解説しています。


ルーティングループが発生する可能性が極めて少ない

DUALによって、再配送を行わずにEIGRP単独で利用しているときには、100%ループが発生しないことが保証されています。

マルチキャストを利用した通信(EIGRPのマルチキャストグループ 224.0.0.10)

EIGRPのルート情報の送信は、マルチキャストもしくはユニキャストを用いて行われます。EIGRP用に予約されているマルチキャストアドレスは224.0.0.10です。マルチキャストアドレスによるルート情報の送信によって、ネットワーク上のEIGRPルータ以外のホストに対して不要な負荷をかけることがありません。

任意のルート集約

ルート集約についても、より効率よく行うことができるようになっています。OSPFでは、ルート集約を行うことができるポイントが決まっていました。OSPFのルート集約は、自律システム境界ルータ(ASBR)もしくはエリア境界ルータ(ABR)でしか行うことができません。それに対して、EIGRPでは任意のEIGRPルータでインタフェース単位に経路を集約して通知することができるようになっています。


EIGRPでのルート集約の設定は、以下の記事で解説しています。


認証機能のサポート

EIGRPがやり取りするルーティングアップデートの盗聴や改ざん、偽造を防止するために認証機能もサポートされています。

設定が容易

こうしたさまざまなEIGRPの機能を実現するために、ルータに対する設定を行う必要があります。EIGRPの設定はOSPFに比べるとシンプルであり、通常はわずかなコマンドだけで設定を行うことができるようになっています。

Cisco独自のルーティングプロトコル

以上のようにEIGRPを利用するメリットは非常に大きいものがあります。しかしながら、Cisco独自のプロトコルであるために、Cisco製品でしか利用することができないという大きな制約があります。