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EIGRPスタブとは
EIGRPのスタブ機能とは、ネイバーに対してQueryパケットの抑制を通知するためのものです。簡単に言うと、ネイバーへ「こっちには代替ルートはありません」ということを知らせるのがEIGRPのスタブです。
「スタブ」という言葉は、いろんな意味で使われるのですがたいていは小規模なネットワークと考えればよいでしょう。小規模なネットワークは冗長化されていることがあまりなく、ほかのネットワークへの代替ルートが存在することはまずないでしょう。
EIGRPは特定のネットワークに対する最適ルートであるサクセサがダウンすると、ルートを切り替えなければいけません。バックアップになるはずのフィージブルサクセサが存在しないと、ネイバーに対してQueryパケットを送信して、代替ルートを問い合わせます。あきらかに代替ルートがないようなスタブ、すなわち小規模なネットワークのEIGRPルータにもQueryパケットを送信しても意味がありません。そこで、スタブを有効にすることで無駄なQueryパケットの送信を抑制して、EIGRPのコンバージェンスを速くすることができます。
EIGRPスタブの動作
EIGRPスタブを有効化したルータは、EIGRP Helloパケットでネイバーに対してスタブルータであることを通知します。
ネイバールータはサクセサがダウンしたときに、スタブルータへEIGRP Queryパケットを送信しないようになります。通常のネイバーにはQueryパケットで代替ルートを問い合わせます。
また、スタブルータからアドバタイズするEIGRPルートも制限されます。スタブルータからネイバーへアドバタイズするEIGRPルートの制限として、以下のオプションが設定可能です。
receive-only | EIGRPルートをアドバタイズしない |
connected | networkコマンドで生成したEIGRPルートをアドバタイズする |
summary | 集約の設定で生成したEIGRPルートをアドバタイズする |
static | EIGRPに再配送されたスタティックルートをアドバタイズする |
redistributed | スタティックルート以外のEIGRPに再配送されたルートをアドバタイズする |
スタブルータからアドバタイズするルートの制限で指定するオプションの意味がわかりづらいので注意してください。EIGRPトポロジテーブルをベースに考えなくてはいけません。show ip eigrp topologyでトポロジテーブルを見ると、どのようにしてEIGRPルートとして生成したかもわかります。
R1#show ip eigrp topology IP-EIGRP Topology Table for AS(1)/ID(192.168.13.1) Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply, r - reply Status, s - sia Status P 100.100.100.100/32, 1 successors, FD is 28160 via Rstatic (28160/0) P 10.1.1.0/24, 1 successors, FD is 28160 via Redistributed (28160/0) P 192.168.12.0/24, 1 successors, FD is 28160 via Connected, FastEthernet0/0 P 192.168.13.0/24, 1 successors, FD is 128256 via Connected, Loopback0 P 192.168.0.0/16, 1 successors, FD is 28160 via Summary (28160/0), Null0
スタブの設定でアドバタイズするルートの制限で指定するオプションは、トポロジテーブル上の「via」以降にあるどのようにして生成したEIGRPルータなのかということを意味しています。トポロジテーブルにEIGRPルートを生成するためのnetworkコマンドや再配送のredistributeコマンド、集約ルートを生成するip summary address eigrpコマンドの設定もされていることが前提です。
「connected」のオプションは、トポロジテーブル上の「Via Connected」のEIGRPルートをアドバタイズします。「summary」のオプションは、トポロジテーブル上の「via Summary」のEIGRPルートをアドバタイズします。「static」のオプションは、トポロジテーブル上の「via Rstatic」のEIGRPルートをアドバタイズします。そして、「redistributed」のオプションは、トポロジテーブル上の「via Redistributed」のEIGRPルートをアドバタイズします。「receive-only」は、ネイバーへEIGRPルートをアドバタイズしません。
EIGRPスタブの設定と確認コマンド
EIGRPスタブの設定は、EIGRPのコンフィグレーションモードで行います。
(config)#router eigrp <AS>
(config-router)#eigrp stub [receive-only|connected|summary|static|redistributed]
<AS> : AS番号
オプションは複数指定することができます。ただ、receive-onlyを指定するときは、他のオプションは指定できません。オプションを省略すると、デフォルトはconnectedとsummaryです。
EIGRPスタブの確認は、show ip eigrp neighbor detailコマンドです。ネイバールータでスタブの設定がされているかどうかがわかります。
R2#show ip eigrp neighbors detail IP-EIGRP neighbors for process 1 H Address Interface Hold Uptime SRTT RTO Q Seq (sec) (ms) Cnt Num 0 192.168.12.1 Fa0/0 11 00:11:01 62 372 0 9 Version 12.4/1.2, Retrans: 1, Retries: 0, Prefixes: 1 Stub Peer Advertising ( CONNECTED SUMMARY ) Routes Suppressing queries
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