EIGRPのルート集約

EIGRPでももちろん複数のネットワークアドレスを集約した集約ルートを生成してアドバタイズできます。EIGRPであれば、任意のルータの任意のインタフェースで、集約ルートをアドバタイズするように設定できます。

図 EIGRPルート集約の概要
図 EIGRPルート集約の概要

集約ルートのNull0向けのルート

EIGRPでルート集約をすると、集約したネットワークアドレスに対するNull0向けのルートが自動的に追加されます。Null0向けのルートは、該当するパケットを破棄します。集約ルートの範囲内にあるが、実際には存在していないネットワーク宛てのパケットを破棄するために、Null0向けのルートが追加されます。もし、集約ルートのNull0向けのルートがないと、パケットがループする可能性があります。具体的に、以下のネットワーク構成を考えます。

図 Null0向けルート その1
図 Null0向けルート その1

例として考えるネットワーク構成では、R1の背後に、192.168.0.0/24~192.168.7.0/24の8つのネットワークがあるのですが、ちょっとサブネットマスクを短めにして192.168.0.0/16として集約ルートをアドバタイズしています。また、R1にはR2をネクストホップとするデフォルトルートがあります。

そして、R2に宛先IPアドレス192.168.10.10のIPパケットがやってきたとします。このIPアドレスは集約ルートの範囲に含まれていますが、実際には存在しません。R2は、宛先192.168.10.10宛てのIPパケットをR1へ転送します。

図 Null0向けルート その2
図 Null0向けルート その2

そして、R1は宛先IPアドレス192.168.10.10のIPパケットをデフォルトルートに基づいて、R2へ転送してしまうことになります。

図 Null0向けルート その3
図 Null0向けルート その3

この動作をTTLが0になるまで延々と繰り返します。このように、集約ルートの範囲内ですが、実際には存在しないネットワーク宛てのパケットは、ループしてしまう可能性があります。そこで、集約ルートのネットワークアドレスに対するNull0向けのエントリを追加します。

図 Null0向けルート その4
図 Null0向けルート その4

そうすれば、集約ルートの範囲内でも実際には存在しないネットワーク宛てのパケットを破棄して、ループを防止できます。

図 Null0向けルート その5
図 Null0向けルート その5

EIGRPルート集約の設定と確認コマンド

ルート集約の設定

EIGRPのルート集約の設定は、集約ルートをアドバタイズしたいインタフェースのコンフィグレーションモードで行います。

ルート集約の設定

(config)#interface <interface-name>
(config-if)#ip summary-address eigrp <AS> <network> <subnetmask> [<AD>]
<interface-name> : インタフェース名

<AS> : AS番号
<network> : 集約ルートのネットワークアドレス
<subnetmask> : 集約ルートのサブネットマスク
<AD> : 集約ルートに対するNull0向けエントリのアドミニストレイティブディスタンス。デフォルト5

ip summary-address eigrpコマンドで集約ルートを生成すると、トポロジテーブルに集約ルートが登録されます。ただし、少なくとも1つ以上の集約ルートの範囲内のルートが存在していなければいけません。また、集約ルートのメトリックは、範囲内のルートの最小値です。

<AD>は、Null0向けのルートのアドミニストレイティブディスタンスです。アドバタイズする集約ルートのものではありません。ループを防止するために確実にNull0向けのルートがルーティングテーブルに登録されるように、デフォルトは5という非常に小さい値になっています。

ルート集約の確認

集約ルートが生成されていることを確認するためには、以下のコマンドを利用します。

  • show ip eigrp topology
  • show ip route eigrp

show ip eigrp topology

ip summary-address eigrpコマンドで集約ルートの設定を行うと、「via Summary」として、EIGRPトポロジテーブルに集約ルートが登録されて、ネイバーへアドバタイズされるようになります。

R1#show ip eigrp topology
IP-EIGRP Topology Table for AS(1)/ID(192.168.13.1)
Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply,
       r - reply Status, s - sia Status

P 100.100.100.100/32, 1 successors, FD is 28160
        via Rstatic (28160/0)
P 10.1.1.0/24, 1 successors, FD is 28160
        via Redistributed (28160/0)
P 192.168.12.0/24, 1 successors, FD is 28160
        via Connected, FastEthernet0/0
P 192.168.13.0/24, 1 successors, FD is 128256
        via Connected, Loopback0
P 172.16.0.0/16, 1 successors, FD is 128256
        via Summary (128256/0), Null0
P 172.16.1.0/24, 1 successors, FD is 130560
        via Connected, Loopback2
P 172.16.2.0/25, 1 successors, FD is 128256
        via Connected, Loopback3

show ip route eigrp

show ip route eigrpコマンドで、ルーティングテーブルにループ防止のためのNull0向けの集約ルートのエントリがあることを確認します。

R1#show ip route eigrp
     172.16.0.0/16 is variably subnetted, 3 subnets, 3 masks
D       172.16.0.0/16 is a summary, 00:02:50, Null0